地域特性の研究

 新規事業を展開する場合や開拓営業をする場合は、「地域特性」を知っておくことも大事です。

 「どこに店を出すか」「どの商圏に営業所を出すか」といったことを検討するときに、お国柄や地域事情を知らないと痛い目に遭うことがあります。

 たとえば、大阪で持った最初の飲食店が繁盛したからといって、そのままの味づけで名古屋に出店すると失敗する場合があります。関西圏は薄味が好まれますが、名古屋では濃い味が好まれるからです。また、「理」を大事にする土地柄、「情」を大事にする土地柄、「利」を大事にする土地柄とあります。排他的な土地柄と開放的な土地柄とで考え方も変わります。排他的な土地柄では入りにくいのですが、いったん入ったら浮気はしません。開放的な土地では入りやすいのですが、移り気です。

 このように、地域によってさまざまな特性があるので、わが社のこの商品の場合はどうなのか、地域性を考慮して市場戦略を練る必要があります。

 

 一倉先生は、「市場戦略には江戸時代の藩の地図で研究する必要がある」と指摘しています。

 一部の地域を除いて、藩は地理的条件や気象的条件のもとに自然な経済圏を形成しているからです。実際、地方を訪ねると、旧藩時代の文化が今なお息づいていることに気づきます。明治の廃藩置県では、まず、藩がそのまま県になり、いくつかの県が合併・分離を繰り返しながら現在の県になっています。あまり合理的な区分となっているとは言い難く、現実には多くの人は旧国名や藩の単位で帰属意識をもっているため、それが自然な経済圏をつくっているわけです。

たとえば、愛知県で言えば、旧国名で言うと、尾張と三河がくっついてできていますが、両者の県民性は真逆で、仲もよくありません。方言も文化も異なります。尾張は「利に敏い」が三河は「愚直」と言われます。織田信長(尾張)と徳川家康(三河)の性格に象徴されます。尾張は名古屋が中心ですが、三河は、岡崎、吉田(豊橋)、西尾、刈谷、拳母(豊田)と、小さな藩がいくつもあったために、それぞれ小さな経済圏を形成していて、中心がありません。尾張のように名古屋さえ押さえれば周辺部に波及するという核がないのです。

隣の静岡県は、伊豆、駿河、遠江と三国に分かれます。駿河は保守的ですが、遠江は進取の気性に富んでいます。トヨタグループ、ホンダ、ヤマハ、スズキといった錚々たる世界企業がこの地から生まれています。方言は三河とほぼ同じで、愚直な面もあります。

青森県は津軽藩の青森市と南部藩の八戸市とで別の経済圏を形成しています。そして、両者は犬猿の仲です。

富山県では、富山市と高岡市は別の経済圏です。

広島県は、広島市が中心ですが、福島市は、旧国名では安芸ではなく備後になるため、別の経済圏になります。

全国には、この手のややこしい話が山のようにあります。地元の人にとって誰でも知っているような話でも、部外者には分かりません。国のレベル、藩のレベル、場合によっては町のレベルの歴史をしらべておくと、土地柄の理解が進みます。

経営と真理 へ

「仏法真理」へ戻る