直接原価計算による管理会計

一倉先生は、全部原価計算を「百害あって一利なし」と述べています。
全部原価計算とは、決算時に税務署に提出する会計報告書に載っている原価計算です。
税務署に提出するには、全部原価計算でないといけないのですが、これは経営には使えませ

ん。全部原価計算では、固定費を各原価に割り振るからです。
そこで、一倉定先生は、管理会計には収益に着目して「直接原価計算」を使用するのを勧めて

います。
直接原価計算とは、売上高から外部費用(仕入及び外注費)を引いて、企業の収益を出し、

最終的に ひとまとめにして固定費を引いて損益を出す方法です。
直接原価計算でも、各製品の総原価は出ません。しかし、これは全部原価計算でも同じです。

製品ごとの総原価を出すことはできません。
ただし、直接原価計算だと、製品一つ一つの収益はつかめます。
それは、売上高から外部費用を引くことによって粗利益すなわち収益が分かるのです。
売上高-外部費用=収益

 粗利益または加工高、付加価値とも言います。
なお、外部費用は変動費として、その他の費用は全て固定費として考えるとよいです。
 売上高-外部費用=収益
社長は、原価ではなく収益に着目してください。固定費の割り振りに意識を取られると正し

い判断ができなくなります

 

 数字の分析を細かくしていくうちに、いかにして「固定費を削るか」を考える経営者もいます。経費を抑えたほうが利益は上がるので、固定費の削減をしたくなるのですが、限界があることを知っておく必要があります。建物や設備や人員が変わらない限り固定費を大きく削ることはできません。よほど無駄が生じている場合は別ですが、基本的には、必要があって建物を購入し、設備投資をし、人員を揃えているはずです。あまり削り過ぎると、収益を生む力そのものが減ってしまいます。極端な話、営業に自動車を使うと固定費がかさむからといって、自転車に切り替えれば、固定費を削減できても営業効率は落ちてしまいます。そういう馬鹿な判断をしないように気をつけなければなりません。

 「部門ごとの利益が出ているかどうか」「人員ごとの利益がでているかどうか」を考える際も、同様の問題が出ますので注意が必要です。

 

かつて自身が属した調達部門への苦言も多々ある。

コスト・ダウンの場合には、先きに述べたとおり常に”これだけ下げる”という計画をたて、実現に努力し、達成したらさらに”これだけ”というステップを踏むことが大切で、”できるだけ下げる”というのでは、いくら下がっても下がらなくても、「これでできるだけ下げたのだ」という結果になってしまう。 “できるだけ”主義でなく”これだけ”主義でいくのが本当であって、”これだけ”のくり返しが”できるだけ”になるのである。(「あなたの会社は原価計算で損をする」

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