経営計画書は会社に奇跡をもたらす魔法の書

 経営計画書は、一倉経営学のキモとも言える論点です。

 中小企業では経営計画をしっかり作っているところは少ないというのが現状です。作っていたとしても、有効に活用されていない場合もあります。目標となる数字を誰も頭に入れておらず、形骸化しているケースがあるわけです。

 しかし、一倉先生は、「経営計画書は「魔法の書」である」と言い切ります。計画書に盛り込んだ内容に向かって、わが社の姿がみるみる変化していくからです。もちろん、それは経営計画書を作りさえばよい という話ではありません。

経営計画書が「魔法の書」となるための考え方がいくつかあります。まず、「経営者が自ら策定する」ということです。

一倉定先生は、経営計画書をつくることこそ社長の仕事であり、部下に計画書をつくらせて役員会に諮るというやり方は厳禁だと強く戒めます。

経営計画書には、業界におけるわが社の地位はどうあるべきか、将来上げるべき利益はいくらか、商品構成はどうするか、お得意先をどうするか、新事業・新商品をどう開発するか、内部体勢をどう整備するか といったことについて、社長の描く未来像を書き込むものです。それは、みんなと相談して決めるものではありません。トップ自身の信念を表明するものです。したがって、たっぷりと時間をかけて将来構想を練り、数字に落とし込んでいく必要があります。

次に、「売上ではなく、利益を重視する」ということです。売上が高ければ利益も高いわけではありません。売上の低い商品のほうが利益が上がっているケースがよくあります。売上が伸びていても、赤字になる場合があるわけです。赤字が続けば、当然倒産リスクが出ます。利益というのは事業存続費です。したがって、経営者としてまず考えなければならないのは、事業が存続するために、最低でもどれだけの利益がなければならないのかを考えることです。

一倉先生は、売上が横ばいであったとしても、1年は赤字にならずに持ち堪えることができる程度の利益は確保すべきだと述べています。

そして、その売上を確保するためには、商品構成をどうすべきか、社員をどの部署にどのように配置させるべきかを考えていくわけです。

 

経営理念から目標をはじき出す

 経営計画を策定する上で注意があります。「過去の延長上で未来を考えない」ということです。「去年まで毎年5%成長しているから、今年も5%成長で考える」というような考え方です。その背景には、「到達できるような目標を掲げる」という心理があります。これだと、「できると見込めることしかしない」ということになります。堅実と言えば堅実なのかもしれませんが、同業他社が命がけで業界ナンバーワンになると言って攻めてきたら ひとたまりもありません。意識の差が明確だからです。

 経営計画はあくまでも計画であって、予測ではありません。計画は経営者の意志を反映したものですが、予測になると、どこか他人事になっていきます。業績は自らを切り拓いて実現していくものです。誰かが自然に好業績に運んでくれるものではありません。

 「地域ナンバーワンの店になれるかどうか」ではなく、「地域ナンバーワンの店に どうすればなれるか」を考えるのが経営計画です。したがって、途中で目標に到達しそうもないことが判明した場合、安易に目標値を下げてはいけません。実際に目標通りに行くことが少ないのが現状です。たとえ目標の半分しか到達しそうもないとしても、目標値はそのままにします。そして、目標と実績の差を正確に出して、なぜそうなったのかの原因を分析することが大事です。意志と現実の差こそわが社の課題を浮き彫りにし、次の飛躍のためのヒントをつかむ種となるからです。

 この意味で、経営計画をつくるには、経営者自身の哲学や信念が必要になります。でないと、「実現したい数字」が出せないからです。なぜ業界ナンバーワンになりたいのか、なぜ利益を2倍にしたいのか、どれだけのお客様を獲得したいのか、どれだけの喜びをお客様に与えたいのか、それを考えるには そのもととなる理念が必要になります。

 幸福の科学大川隆法総裁は、『経営入門』で以下のように説かれました。

「組織には経営理念が必要です。経営理念というのは、「組織全体が、どの方向に向かっていくのか」という理念であり、「錦の御旗」のようなものです。例えば、武田信玄の「風林火山」の旗や、織田信長の「天下布武」のスローガンのようなものです。そのような一つの旗印であり、目標です。組織には何かそういう旗印が要るのです。

 経営者は、経営理念を立てて、それを社員に学ばせ、「わが社は、どの方向へ行き、どのようなかたちで社会貢献をするのか」ということを繰り返し教えなくてはなりません。この訓練が大事です。

 教育によって社員に経営理念を神道させなければ、経営者一人の頭のなかにインスピレーションとして思いついたことを彼らに発信するたけになってしまいます。社員に学ばせて、自分と同じような働きができるようにするのが経営理念なのです。」(『経営入門』P-236~238)

「経営理念を繰り返し浸透させておくと、さまざまな業務のなかで迷ったとき、方向性がわからないときに、この理念に基づいて判断がなされていきます。

 経営理念を小目標として、個別に小さくブレイクダウン(細分化)していけば、月次目標や毎日の目標、割り当てられた担当の仕事などになっていきます。経営理念があれば、経営者が個別に指導することができなくても、各人が「大きな経営理念から見て、どう判断すべきか」という結論を出すことができるのです。

「経営理念に基づいて、社員が「個別の仕事はどうあるべきか」ということを判断するようになることが大事です。この経営理念があれば、会社の規模が百人になり、千人になり、一万人になったとしても、社員は、その理念を反芻しながら自分たちで考え、「このようにすべきである」というのがわかるのです。

 経営理念がなく、各セクションの個別の目標や決められた仕事の内容があるだけならば、そこに決められていないことについては判断のしようがありません。

 したがって、経営者は経営理念をつくらなければいけないのです。その意味で、経営者は哲学者でなくてはなければいけません。難しい哲学である必要はありませんが、経営者は、考え方や思想をつくり出せる人でなければならないのです。

 そういうものがなければ人はついてきません。また、経営理念があるからこそ、大きな組織もつくれるのです。

 もし、経営理念がなく、「わが社は こういう仕事をしている」程度の認識しかないままであるならば、経営者は、努力して考えを重ね、その会社の経営理念を打ち出すべきです。「わずか十人程度の社員しかいないのに恥ずかしい」と思う場合もあるかもしれませんが、経営理念をつくることができれば、十人の会社を五十人、百人へと発展させることが可能です。しかし、社長が経営理念をつくらなければ、会社は社長の目が届く範囲の仕事しかできません。」(『経営入門』P-238~242)

 経営計画をつくるにあたっては、「何のために事業をするのか」という経営理念のところから固めていく必要があります。

 経営理念や経営計画をまとめるには、日常業務から離れて沈思黙考しながらビジョンを描き、構想を固める必要があります。

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