コストリーダーシップ

 コストリーダーシップ戦略とは、事業の経済的コスト(原材料費、生産費、流通費、販売費、管理費など)を抑えることで価格優位性を構築し、市場シェアの獲得を図る戦略です。

 同業界内で複数の企業がコスト・リーダーシップ戦略を追求すると、業界全体が過度の価格競争に陥る危険性を孕んでいる一方、各企業はシェアの獲得を最優先事項として位置付けるため、標準化による効率化や大量生産による製造単価の低減が課題となってきます。

 価格優位性の主な源泉となる要因には以下2点が挙げられます。

①規模の経済

 規模の経済とは、生産規模の拡大に伴い、一製品にかかる平均費用が低下し、利益率が向上する現象です。

 スケールメリットを活かした企業活動を指しています。特に、設備投資や研究開発に莫大な固定費用がかかる産業では、生産規模を拡大するほど、一製品あたりの生産コストが低下し、利益率改善に大きな成果を上げることができます。

②経験曲線効果

 経験曲線効果とは、製品の累積生産量が増加していくことで、一製品あたりのコストが一定の割合で低下していく「経験則による効果」です。

 一般的に、累計生産数が2倍になると、一製品あたりの生産コストが10%〜30%程度減少すると言われています。特に属人的な作業が多く含まれる業務では、経験曲線効果が大きくなる傾向があります。これは、企業や組織が、特定の課題について経験を蓄積することで、より生産性が向上することが要因となるわけです。

 

 業界全体の幅広い顧客をターゲットとして、競合他社よりも安価に商品を販売、サービスの提供を実現することで、競争優位を築きます。安価な商品、サービスの提供を実現するためには、低コストでのモノづくり、サービスづくりが重要です。

 コストリーダーシップ戦略を実行する企業は、低コストの部分に競争優位性を求めます。低コストを実現させるためには、規模の経済を働かせることや経験曲線効果の利用が挙げられます。

 具体的には、他社に先駆けて先行投資し、初期段階では赤字になろうと安価な価格で市場へ商品を投入します。そして、先行者の特権を活かしてマーケットシェアを高めます。これによって、規模の経済が働くと共に、累積生産量も急速に増えていくため、経験曲線効果が働いてきます。そして、結果として、低コストとなっていき、競争優位性を確保することができます。

 システム化することのメリットは、一連のバリューチェーン上のデータを数値化することで、状況を見える化できる点にあります。状況が見えることで管理を徹底することができ、効率化にもつなぐことができます。効率化を徹底した結果、低コスト化を実現しています。このような環境下にあると、従業員の意識も高まり、日々の業務の「カイゼン」が進み、より品質が高く、より安く、より効率的なものへと進化していきます。

 

コストを減らすための方法

 コストカットを実現するためには、下記のような施策があげられます。

・生産する規模や生産量を大きくすることで固定費を効率化する

・業務や作業効率をあげて従業員の生産性を向上させる

 上記のような施策をすることで、「規模の経済」という理論が働くため、単位当たりのコストを減らせます。

また、「生産量を増やせば増やすほど、製品一つ当たりのコスト削減につながる」という学習曲線の理論も用いられます。

 

技術によるコストカット

 生産の規模を大きくすることで「規模の経済」が働き、コスト削減につなげられますが、「技術」には規模の経済が働きません。技術によってコストの差が生じるのです。例えば、製鉄会社は新たな技術が実用化されることで、製鉄するコストを削減できるかもしれません。

 さらに、このようなハード的な技術ではなくても、ソフト面の技術でもコストカットに大きく寄与します。例えば、トヨタの「カイゼン」は、秒単位で作業時間を減らすなどの活動が積み重なることで、大きなコスト削減につながっています。

 

 コストリーダーシップ戦略の代表的な企業として、飲食業界の「サイゼリヤ」が挙げられます。コストリーダーシップ戦略は、業界全体の広い顧客をターゲットとし、他社のどこよりも低いコストを実現することに焦点が置かれています。サイゼリヤは、創業以来、徹底した低価格路線を歩み、事業を成長させてきました。サイゼリヤは若年層、ファミリー層、さらには老年層をターゲットとし、イタリア料理を低価格で提供することを実施しています。サイゼリヤでは、徹底した効率化とシステム化を行っています。食料の素材を仕入れるのにも、福島県に100万坪の自社農場を保有し、収穫直後の野菜を迅速に輸送するコールドチェーンシステムを構築し、新鮮な野菜を店舗に配送できる仕組みを構築しています。食料の素材の生産→輸送→料理→消費に至るまでの様々な過程を効率化、システム化しています。システム化することのメリットは、一連のバリューチェーン上のデータを数値化することで状況を「見える化」できる点にあります。状況が見えることで管理を徹底することができ、効率化にもつなぐことができます。効率化を徹底した結果、低コスト化を実現しています。このような環境下にあると、従業員の意識も高まり、日々の業務のカイゼンが進み、より品質が高く、より安く、より効率的なものへと進化していきます。このような事業の仕組みがサイゼリヤの競争力の源泉となりました。

 

コストリーダーシップ戦略のリスク

 この戦略のリスクは、経営資源が豊富なライバル企業が同じ戦略を展開することで、利益を無視した価格競争に陥る危険性があることです。

 また、低コストを実現したとしても、そのポジションを確保し続けるためには、生産設備などを常に最新にする必要があり、そのための投資などが負担となるでしょう。さらに、技術革新により市場の環境が変化し、投資が無意味になることもあるかもしれません。

 コストカットに集中するあまり、ニーズの変化に気づけなかったり、マーケティングに注力できなくなることもあります。

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