競争優位の構築

 競争優位(competitive advantage)は、自社にとって市場競争を有利に展開できる、競合他社より潜在的な収益可能性が高い状態のことである。

 企業経営の重要な目的は、持続的な競争優位を獲得し、利益を上げ、組織の成長・発展を実現することである。市場競争が激しく繰り広げられる今日では、何よりも持続的な競争優位を作り出すことが経営戦略の中心的な課題になっている。

 アンゾフは、「戦略の構成要素」を述べる際に、競争優位を得る方法として、合併による支配的な地位の獲得や強力な特許保護の産業分野への進出を挙げている。前者はポジショニングのことであり、後者は資源活用のことである。アンゾフは、競争優位の獲得には企業外部要因と内部要因の両方の方法があることを示唆している。

 

1 外部要因による競争優位の獲得

 競争優位に影響を与える外部要因は、事業を取り巻く業界や市場における企業のポジショニングのことである。

 収益拡大を図り、競争優位を獲得するためには、ポーターの3つの基本戦略が重要となる。

 コスト・リーダーシップ戦略を実現するためには、業界内において圧倒的な低コストの地位を占める必要がある。そのためには、①規模の経済性の追求、②厳格なコスト管理、③原材料の有利な入手方法 などを通じて、より高い市場シェアを目指すことが不可欠である。

 差別化戦略の目的を達成するためには、例えば、①製品設計やブランド・イメージの差別化、②技術の差別化、③製品特徴の差別化、④顧客サービスの差別化、⑤販売網の差別化、などの方法が挙げられる。

 フォーカス戦略は、特定の顧客グループや地域市場をターゲットにし、低コスト戦略、あるいは差別化戦略を実施することである。

 

2 内部要因による競争優位の構築

 競争優位を得るために、競合他社より強い競争力を持つことが重要となる。つまり、競争力は企業の競争優位の源泉の1つである。競争力の構成要素は、大きく分けると、企業内に蓄積されている経営資源組織能力に分類することができる。

 経営資源の役割に関しては、例えば先進的な技術を活かした革新的な製品の開発、強いマーケティング能力による市場シェアの獲得、優れた企業文化による組織メンバーの団結などが考えられる。

 一方、 組織能力(organizational capabilities)は、研究開発、製造、販売、流通、支援サービスなどの企業の諸 活動の効率性や協調性などを規定する内部要因の1つである。企業は、競争力となり得る経営資源の活用、および効果的な組織能力の運用を通じて、競争力を形成し、競争優位の獲得につなげていくのである。

 

3 内部要因と外部要因の関係

 内部要因と外部要因は、企業の経営過程においてそれぞれ独立した存在ではなく、互いに密接な関係にある。

 ポーターは、3つの基本戦略を実行するためには、それぞれ違った経営資源や組織のあり方が必要であることを述べている。ポーターも、外部要因による競争優位の実現において経営資源や組織が果たす役割が重要であることを示している。企業は、戦略を策定・選択する際、まず、経営資源や組織の能力などを見極める必要がある。

 

 以上のように、競争優位の確立は企業の外部要因と内部要因の双方に関係しているが、外因は内因によって成立することがあるので、経営戦略の立案から実行・修正までのプロセスの中で、経営資源や組織というような内的要素を常に重視する必要があると考えられる。

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