バブル崩壊で

 バブル経済の到来で賃金水準 は上昇し、保険料収入も増加したので、保険料(率)引き上げの圧力は低下した。また、積立金の運用収益も増加したが、還元融資や福祉施設に流用されることが多かった。

 やがて、バブル経済がはじけ、長い平成不況により従業員のリストラや工場の海外移転が進み、被用者年金制度の被保険者数が減少し、賃金水準も増加せず、その結果保険料収入は増えず、金利や有価証券などの下落は運用収益の減少や資産の評価損をもたらした。また、被用者年金制度から脱落した人々は国民年金制度に加入せず、あるいは保険料を未滞納する人々が増加した。このような中で、給付水準の抑制と支給開始年齢の引き上げが提起されたが、即時に実施することは困難である。激変緩和ということで、実施時期を遅らせ、しかも段階的に実施されることが多いので、制度は複雑になり、理解が困難である。この時期の受給者は高度経済成長期に雇用され、勤続期間も長く、住宅資産、貯蓄や退職金、企業年金を保有し、裕福な高齢者が多いにもかかわらず、公的年金給付も一定水準を維持 され、その費用は賦課方式により後世代の負担の増大をもたらし、中年以下の被保険者の公的年金制度への不信感を増幅している。そのようななかで、従来と同じように、単に保険料の引き上げと年金給付の引き下げを提起することは、結局、将来の年金の抑制につながり、そのことが世代別の保険料と給付倍率の引き下げ、年金改革への新たな不信感を生み出している。その意味では、保険料の上限設定と給付水準の削減、効率化は制度改革の切り札ではなかった。

年金は大丈夫? へ