「事業計画書」の作成

会社プロフィール

 事業計画書は、経営者自身のためや従業員のために作成する面もありますが、社外の人向けに作成する面もあります。その場合、事業計画書の中に、事業の内容だけでなく「事業を行う会社自体がどんな会社なのか?」「経営者はどのような人なのか?」を伝える必要が出てきます。そのために「会社プロフィール」のページを設けることがあります。

 ここには、会社の概要だけでなく、事業を行う上で相応しい会社どうかという点についても書いていきます。

 また、事業の内容だけでなく、「代表者(経営者)のプロフィール」も掲載したほうがよいでしょう。特に起業したばかりの場合や従業員数が少ない場合は、会社イコール代表者(経営者)でもあるので、会社プロフィールより代表者(経営者)のプロフィールを充実させるべきです。

会社プロフィールの内容

1 基本事項

 会社の基本的な事項を書きます。

 会社の正式名称、本店所在地、支店住所、代表者名、役員、ホームページアドレスなどです。

新規事業名

 どのような事業なのかをイメージできるような事業名を付けます。

 文字数は15文字から30文字程度を目安に、キャッチーかつシンプルで魅力的な事業を象徴・演出するようなタイトルを工夫しましょう。

2 変遷、略歴

 会社の変遷を書く部分です。

 こと細かく書く必要はありませんが、現在および今後の事業に関係している部分を略歴としてまとめます。

 経歴は、創業する事業内容・新規事業の内容と必ずしも整合する必要はありません。経歴と動機は、事業計画書が読み手の関心に沿うか、新事業に何か役立つのか、発案者や経営者はどれだけ熱意を持ってこの事業を完遂しようとしているのか を見極める最初のステップです。
 一見、事業とは関係なさそうでも、事業を遂行するステップのどこかで役に立つかもしれません。それに、自分の能力を整理・棚卸しすることで、新たな発想が生まれるかもしれません。できるだけ自分には何ができるかを事細かに書き出してみることをおすすめします。また、動機として、どれだけ長くアイデアを温め検討してきたか、どれだけ熱い思いを新事業に抱いているか、あるいは社会貢献のために新事業がいかに必要であるかを、他人が読んでも「熱い思い」「遂行への強い意志」「社会への必要性」が分かるよう表現しましょう。

3 許認可、資格、実績

 事業を行うに相応しい会社かどうかを伝えるために、必要な許認可、資格、実績などを伝えます。

4 代表者(経営者)プロフィール

 経営者のプロフィールをまとめます。

 その事業を行うことが相応しい経営者かどうかを伝えるために記載します。事業と直接関係ない部分については記載の必要はありません。

5 PRポイント

 上記以外でPRのポイントがあれば記載します。

 プロフィールは、「この事業を行うのに相応しいかどうかを伝えるため」という目的を忘れないようにして作成していきます。

 

事業計画書の目的

 計画書が第三者に提示するものであればその目的を明確にします。

 投資家からの「資金支援」、共同開発や販売提携などの「ビジネスパートナー募集」といったことを表記します。

 

新規事業展開の背景

 すでに事業を行なっている企業であれば、既存事業の概況から新規事業を展開しようとする経緯を簡単に記述します。

 起業家による新たな事業の立ち上げであれば、事業化するに至った動機を明らかにします。

 インパクトのある動機であれば、第三者へのアピールの度合いが増します。

 さらに、5年後、10年後にこの事業をどうしていきたいのかを表明します。

 

創業の動機

 一般的に、「事業に対しての思い」や「将来どのような事業にしていきたいか」などを記載することが一般的です。

 起業しようとしている分野の事業の経験を非常に重視されます。経験があるならば、しっかりとその内容を記載します。未経験の分野で創業融資を受けることは非常に厳しくなります。

 以前の会社で重要な役職についていたり、対外的な実績があるのならば記載します。

 信念や思いは重要ですが、ここでは利益が出そうなことをアピールしましょう。

 創業の想いを「自分なりの言葉」で書くのがよい。ただ、創業の想いを熱く伝えたいからといって、あまりにも飛躍したもの(人類の進化や発展に役立ちたい、日本の消費者に安らぎを与えたい等)は避けたほうがよいでしょう。事業との関連性が具体的でないとの印象を持つからです。最終的には創業する事業と関連づけることが大事です。

 

事業コンセプト

 事業計画書を作成する上で、まずは「事業コンセプト」および「ビジョン」を作ります。

 事業コンセプトとは、「事業の存在意義」であり、「この事業は何のために行い、どのようなものなのか」を一文で表したものです。ビジョンは事業の目的地です。

 よって、事業コンセプトはそのビジョン(事業の目的地)を「どのように達成するのか?」と言う枠組みのことを言います。

 事業計画書では、まず「ビジョン」と「事業コンセプト」で全体像を伝え、その詳細を後に説明をしていきます。

 事業コンセプトが決まっていなければ事業計画書もないですし、そもそも事業自体が成り立ちません。

 もし、事業コンセプトが明確になっていないまま事業をしているのであれば、どの方向に進むのかも分からず、迷走してしまうことになります。

 このように、事業コンセプトを明確にすることは大切です。

 事業コンセプトは「事業の存在意義」であり、「この事業は何のために行い、どのようなものなのか」を書いていきます。

 この詳細を書いていくこと自体が「事業計画書を書くこと」です。事業計画書=事業コンセプトと言い換えてもよいほどです。

 この事業コンセプトを聞いただけで、「この事業は何をしていくのか」が分かることになります。

 そのためには、まずは「この事業はどんな事業なのか?」を明確にします。

 1.どの市場、どの業界なのか?

 2.どんな製品、商品、サービスを提供するのか?

 3.事業の強みは何か?

 4.他社との差別化のポイントは何か?

 5.それによってどんな存在意義が生まれるのか?

事業コンセプトの3要素

 事業コンセプトは、「ターゲット顧客層」「顧客の想定ニーズ」「独自の能力」の3要素からなります。

 新規事業を展開するには、事業対象とする顧客層とそのニーズを明確に想定したうえで、そこに独自能力によって形作られる製品やサービスの投入が検討されていなくてはなりません。

 事業コンセプト3要素が規定しきれていない事業は、顧客に対して自社の特徴が十分にアピールできず、集中すべき経常資源の選択方法にも狂いが生じてしまいます。

事業コンセプト3要素のポイント
 ・顧客層:性別、年齢層、地域、所得、職業、趣味・噂好などによる区分

 ・独自能力:特定分野の技術・ノウハウ、販売方法、免許・資格など

 ・ニーズ:低価格指向、利便性・即時性追求、機能性・品質追求など

 事業コンセプトを明確にすることによって、従業員、顧客、取引先などにどのような事業なのかを明示することができるようになります。事業計画書の最初にキャッチコピーで書かれていれば、興味を持って詳細の内容を読むようになるのです。

 

ビジョン

 「ビジョン」とは、「事業の最終目的地(ゴール)」であり、「事業のあるべき姿」です。 

 事業コンセプトが「事業は何のために行い、どのようなものなのか」を一文で表したものであれば、ビジョンは「その事業コンセプトのゴール」です。

 よって、ビジョンがなければどの方向に進んでよいか分からず、事業運営が迷走してしまいます。

 ビジョンを明確にすることは、ゴールを決めるということだけでなく、方向性まで決めることにもなるのです。

1 あるべき姿を想像する

 「ビジョンは最終目的地である」と言うように、その事業のゴールを想像してみます。

 そして、そのゴールと事業コンセプトには整合性がなければいけません。

 事業コンセプトは事業の枠組みですので、それを実行した先にゴール(ビジョン)があります。事業コンセプトとビジョンに全くつながりがないということは、どちらかがズレているということです。

 事業コンセプトだけで成り立たないですし、ビジョンだけでも成り立たないということが分かります。両者をしっかり踏まえてイメージする必要があります。

2 具体的に言葉にしてみる

 あるべき姿を想像しただけですと、まだ頭の中のイメージであり人に伝えることができません。ビジョンも事業コンセプトと同様に、経営者のビジョンを従業員や社外の人に伝える必要があります。そのため、思い描いているビジョンを言葉にしてまとめてみる必要があります。

 ビジョンに共感することによって、従業員のモチベーションが上がったり、取引先が取引を開始してくれたりします。

3 数値にできるのであれば数値にしてみる

 ビジョンは最終ゴールですので、できるだけ具体的に示した方がよいでしょう。 

 言葉だけでなく数値化するとより具体的になります。数値にできるのであれば、数値にしていきます。

 注意が必要なのは、ビジョンを数値で表した場合、「事業計画書の後半の数値計画との整合性が必要だ」という点です。これを忘れると、ビジョンと後半の数値計画のどちらを信じてよいのか分からない状態なり、それを読んだ人からの信頼を失うことにもなりかねません。

 ビジョンで数値目標が決定できれば、それを計画に落とし込んで進捗管理もでき、組織としての目標が明確になります。

 ゴールを具体的に示す設定方法には、言葉で表現する定性的な目標と数字で表現する定量的な目標があります。

(1)定性的な目標の設定

 事業でめざす将来の姿を言葉で表現します。「産地にこだわった手打ち蕎麦店を全国展開させる」とか「学生一人ひとりの目標設定にコミットできる学習塾」といった表現でまとめてみましょう。もう少し平易なかたちで、「地域で行列のできる人気店になる」「同業種では地域で一番店になる」といった設定でもよいでしょう。

 起業仲間や従業員と一緒に事業を始めるのであれば、目標を聞いたときに自分も参加したいと思うようなワクワク感があると、一緒に事業する人たちと共感できる目標になります。

(2)定量的な目標の設定

 数字で示す場合は、「売上高○○万円」や「経常利益○○万円」というかたちで具体的な売上高、経常利益などの数値を使って記載します。その他にも、市場全体や商圏における占有率、顧客獲得数、展開店舗数などの項目も考えられます。例えば、「5年後にお店を任せられる店長を育成し、地域に10店舗展開する」といった書き方が考えられます。

 目標は、可能な限り定性的・定量的な目標の2つを設定できるとよいでしょう。

 事業計画を書き始めるときは、「ビジョン・目標」の数値がはっきりと決まっている場合もあれば、ぼんやりとイメージしている場合もあると思います。ぼんやりとイメージしている状況でも、一度仮でゴールを決めてみましょう。  
 ゴール地点である「ビジョン・目標」を設定することで、スタート地点である「現状」とのギャップが明確になります。例えば、ビジョン・目標を「売上高3億円」とした場合と これを「売上高3百万円」とした場合では、それぞれ取り組む内容が変わってきます。
 まずは、どれだけの売上を目標にするかを決めるだけでも、具体的な事業内容が明確になってきます。

 ゴールの決め方にルールはありません。人によって、「無理を承知で、高ければ高いほど良い」という考えもありますし、「達成可能なラインで設定すべき」という考えもあります。

 迷った場合には、無理に高い目標を掲げる必要はありませんが、がんばって達成できるような目標がよいでしょう。計画どおり達成できた場合には、経営者自身の達成感やモチベーションの向上にもつながります。
 また、理想とする大きな目標と より現実的な目標に分けて考えることも一つの方法です。金融機関向けに提出する事業計画書であれば、現実的な目標を掲げて実現性を重視した目標設定を優先することも考えられます。

ビジョン・目標の設定タイミング

 事業計画を書き始めるときは、「ビジョン・目標」の数値がはっきりと決まっている場合もあれば、ぼんやりとイメージしている場合もあると思います。ぼんやりとイメージしている状況でも、一度仮でゴールを決めてみましょう。  
 ゴール地点である「ビジョン・目標」を設定することで、スタート地点である「現状」とのギャップが明確になります。例えば、ビジョン・目標を「売上高3億円」とした場合と これを「売上高3百万円」とした場合では、それぞれ取り組む内容が変わってきます。
 まずは、どれだけの売上を目標にするかを決めるだけでも、具体的な事業内容が明確になってきます。

 ゴールの決め方にルールはありません。人によって、「無理を承知で、高ければ高いほど良い」という考えもありますし、「達成可能なラインで設定すべき」という考えもあります。

 迷った場合には、無理に高い目標を掲げる必要はありませんが、がんばって達成できるような目標がよいでしょう。計画どおり達成できた場合には、経営者自身の達成感やモチベーションの向上にもつながります。
 また、理想とする大きな目標と より現実的な目標に分けて考えることも一つの方法です。金融機関向けに提出する事業計画書であれば、現実的な目標を掲げて実現性を重視した目標設定を優先することも考えられます。

 事業ドメインとは、事業の生存領域のことで、他社との競争環境にある市場の中で、その事業がどのような商品・サービス・方法で それらとの競争に対応しうる地位を築けるか、ということを明確化することを言います。

 

事業ドメイン

 事業計画書の中では、「どの事業ドメインで事業を行っていくか」を明確にします。

 事業ドメインとは、「だれに」「どこで」「どうやって」事業を行っていくかを決めるものです。

 事業ドメインが決まっていると、事業がスムーズに進むことになります。事業ドメインがあいまいですと、競合他社との差がつかず、売上に結びつかなくなってしまいます。

 「どんなお客様を対象にしていくか?」を絞っていくことになります。

 ただし、ここで注意が必要です。「事業ドメインを一度決めると簡単には変更できない」ということです。「あまりに絞り過ぎて、対象顧客が少なすぎた」とか「ビジョンやコンセプトと事業ドメインとの整合性を考えなかったので、事業ドメインの選択を間違えた」ということのないようにしていきます。

 

ターゲット顧客

 ターゲットは、事業コンセプトでいう「誰に」にあたる部分です。提供する商品・サービスを使ってくれるお客さんのことです。ターゲットの記載で、そのお客さんのプロフィールを明らかにしていきます。例えば、お客さんの性別や年代、住んできる場所、職業、趣味、価値観やライフスタイルの考え方、提供する商品・サービス群の利用頻度などについて検討します。 ターゲットを、より明確にするやり方として、想定するお客さんを究極の一人に絞り、ペルソナとして、プロフィールの詳細を作り上げていく方法もあります。

 事業計画にターゲットを記載する場合には、お客さんの数が算定できる書き方ができるとよいでしょう。例えば、「出店地から半径5km圏内に居住する幼児、小学校低学年の生徒」「年収800万円以上の家庭の母親と子供」といった具合に、お客さんになってもらえそうな人の分母の数がイメージできることが大切です。  もちろん、数値計画をつくる上でも、実際にどのくらいの数のお客さんを確保できれば、目標が到達できるかといったことが明らかになります。そのため、数値計画との整合性にも留意しながら記載するとよいでしょう。

 

商品・サービスの提供方法・仕組み

 事業計画書の中で「商品・サービスの説明」をしていきます。

 大企業の商品・サービスであれば、多くの人がテレビCMなどで知っているので簡単かもしれません。しかし、ほとんどの中小企業では、なかなか商品・サービスを知ってもらえていない場合が多いので、説明するのに以下のようなことを理解してもらう必要があります。

 1 どんなコンセプトに基づいて生み出された商品・サービスなのか?

 2 どんな自社の強みが生かされた商品・サービスなのか?

 3 他社の商品・サービスと何が違うのか?(どこが差別化されているのか?)

 これを説明することによって、事業計画書の売上や利益の予想の信用性が上がることになります。

 昨今では、提供する商品・サービスは、競合相手と同質化しやすいことから、提供方法や仕組みについては事業者がそれぞれ創意工夫を凝らしているところかと思います。そのため、説明はなるべく簡潔に記載することが大切です。商品・サービスの提供方法や手順など、モノやお金の流れ、仕組みなどは、図表化や写真を使うとよいでしょう。

 例えば、「和菓子」が商品だとして、その商品の「良さ」を文章だけで表すより、写真を掲載したほうが一目瞭然です。また、「和菓子」が商品だとしても、差別化のポイントが価格や配送であれば、図式化して説明した方がわかりやすいのです。

差別化ポイントがサービスの場合は、しっかりとした文章で説明するほうがよい場合もあります。サービスの説明を図や写真で行うと曖昧になりやすいためです。

 また、商品・サービスの提供によるお客さんの気持ちの変化やメリット、「フローチャート」を加えると さらにわかりやすくなります。例えば、飲食サービス、食料品販売、クッキング教室サービスなどを展開する店舗で、「最初に飲食施設のレストランで料理を知ってもらい、興味が沸いて食材を購入して自宅で再現してもらい、さらに興味が深まり、より美味しく調理する方法を学ぶためにクッキング教室に通ってもらう」仕組みがあるとすると、フローチャートで示すと一目瞭然でしょう。

 

現状分析

外部環境を明確にする

 事業計画書の中で「外部環境の把握・分析」は重要です。

 企業が周りの環境に影響を受けず、単体で成り立っているのであれば、外部環境のことを無視してもよいでしょう。しかし、外部との関係なしにビジネスは成り立ちません。したがって、外部の環境を把握して分析し、「自社の事業が求められている背景」を事業計画書の中でも書いていくことになります。

 外部環境においては主に以下の4つを見ていきます。

1 経済の状況

 事業に直接関わってくる外部環境が「経済」です。

 地域の経済状況、日本の経済状況、世界の経済状況と、それぞれ関わってくる度合は違いますが、最も直接的に影響を受けやすい外部環境と言えるでしょう。

 株価や為替の動向などの短期的なものや、GDPや消費者物価指数などの動向も含まれます。

 このような経済の状況を把握・分析をします。

2 社会の情勢

 社会情勢も影響を受ける外部環境です。

 人々の思考や嗜好がどのように変化しているかなどを把握することになります。

 少子高齢化などによる社会構造の変化などもここで調査・分析していきます。

 調査機関などが調査したデータを活用したり、国などが発行している白書を活用したりすることで社会情勢を把握することができます。

3 政治の情勢

 政治(国)の方針が事業に影響を及ぼすことも多くあります。

 業種によっては規制を強めたり、規制緩和が起きたりすることによって事業の将来に大きな影響を与えます。直接影響を受けない場合でも、原油などのエネルギー資源が政治的な理由で高騰・下落すれば、間接的に影響を受けるような場合もあります。そのため、政治(国)の情勢も把握しておく必要があります。

4 技術革新

 技術革新の状況からも影響を受けます。

 これまで最新の技術を活用して事業をしていたとしても、それが技術革新によって時代遅れになる可能性もあるからです。

 特に、情報技術(IT)は技術革新のスピードが速いので、情報把握もリアルタイムに行う必要があります。

 以上の4つの外部環境を把握・分析し、事業計画書に盛り込んでいきます。その際、信憑性のあるデータや最新のデータを使う必要があります。「事業が求められている背景」の説明の信頼度が上がるからです。

市場規模を把握する

 事業計画書において、「市場規模」を作成することは必要です。自社が対象としている市場の規模が分かれば、自社がどのくらいの市場占有率になるかで売上予想をすることができるからです。

 例えば、市場規模が1,000億円で、市場占有率が0.1%であれば、売上は1億円となります。その時に、市場規模が将来に渡って拡大していく予想であれば、市場占有率が同じでも売上は伸びていくと予想されます。市場占有率が0.1%で変化がなくても、市場規模が1,000億円から2倍の2,000億円になれば売上は2億円となります。市場占有率に変化がなくても、市場規模が縮小すれば売上が減少してしまうともいえます。

 「自社の対象としている市場はどこか?」「その市場規模がどのくらいか?」、そして「その市場規模が拡大傾向なのか?縮小傾向なのか?」を把握することで、自社の売上の状況も予測がつくのです。

 事業計画書において、売上の将来予測の信頼度を高めるためにも、市場規模を把握することは必要です。しかし、市場規模の把握は意外に難しい。自社が対象としている市場において、正しい市場の統計があるとは限らないからです。費用をかければ独自調査をすることはできるかもしれませんが、市場規模だけに多くの費用をかけるわけにはいきません。そこで、国や地方自治体の調査したものや、シンクタンク(調査機関)が調査したものを使うことになります。国などの公共団体が調査したものは信用度が高いのですが、ちょうど合うものが見つかりにくかったり、将来性の分析があまりされていなかったりすることがあります。シンクタンクのほうは、詳細に市場を分けて調査していたり、市場の将来性も分析していたりしますが、費用が高くなる傾向にあります。よって、市場規模を調べるためには、上記の方法やインターネットなどを含めて様々な資料に当たることが大切です。

 最終的には、正しい統計がない限り、それらの資料から市場規模を類推していくことになります。 

業界・競合分析

 業界・競合分析では、起業したい事業の業界のトレンドや市場規模、同じような事業を行う競合企業の状況を確認します。
 将来の業界の変化も意識しながら、そのプラス面やマイナス面を考えていきます。事業計画を記載する上では、それらの事象のどこに着目し活かしていくのかといったことが大切です。

業界情報の収集と活用

 業界のトレンド情報は、インターネットや専門誌、業界のイベントへの参加や知人、友人から収集が可能です。あるいは、起業する業界が会社勤めをしていたときと同じであれば、かつての同僚や取引先の関係者などからの情報も考えられます。
 事業計画書の作成に活用する場合は、収集したすべての情報を網羅的に記載するのではなく、収集した業界のトレンド情報のうち、事業展開に繋がる部分をクローズアップして示すことが大切です。例えば、「業界の中でも計画している事業分野の商品に注目が集まっている」とか、「業界の調査では、他人に紹介したい商品の第一位になっている」といった情報を事業計画に記載していきます。

市場規模データの収集と活用

 市場規模については、公開されている国の統計調査データ(総務省統計局)や事業の立ち上げを考えている業界団体のデータを活用することにより、ある程度の収集が可能です。該当する業界の統計データがない場合は、分類を少し広めに見たときに使えるデータはないか、例えば「ラーメン店」でデータが見つからなければ、「麺類業界」のデータを探索してみるといった方法で確認してみるとよいでしょう。
 これらを事業計画書の作成に活用する場合も、業界のトレンド情報と同じように、事業展開に繋がる部分をクローズアップしましょう。例えば、「市場規模が直近3年間で拡大傾向にある」「一世帯あたりの消費額が増加傾向にある」といった情報などを捉えて記載していくとよいでしょう。
 また、店舗を出店する計画の場合は、事業計画書の「業界のトレンドや市場規模」の欄の中に「出店エリアの状況」として、出店予定地や商圏内の居住人口、客層などを記載しておくのもよいでしょう。

競合他社の動向

 事業を進めて行く中で、競合他社が「どのような会社」で「どのような動向なのか」を押さえておく必要があります。市場において自社1社だけが存在しているのであればよいのですが、競合他社が存在します。全く新しい分野の進出で競合他社がいない場合もありますが、その場合は「お客様自体もいなくて存続できない」か、「いずれ競合他社がでてくるか」のどちらであるためです。

「競合他社」の把握

 その競合他社をどのように把握していくのでしょうか。まずは、自社の対象としている市場を明確化する必要があります。市場が明確なっていないと、そもそもの自社の競合他社すら間違ってしまいます。

 自動車を作っているから自動車会社が競合他社になるとは限りません。ターゲットが40代であれば、自動車を買うのか、家を買うのか迷っている層が市場となります。この場合、自社は自動車会社でも、競合他社は不動産会社かもしれないのです。

 次に、その市場の中で、自社及び競合他社がどのような立ち位置なのかを把握します。自動車業界の例でいえば、トップ企業はトヨタで、それを追うチャレンジャーが日産とホンダ、ニッチを狙うのがスズキとします。自社の立ち位置はチャレンジャーになるのか、ニッチになるのかを判断していきます。

「競合他社の動向」の把握

 動向とは競合他社の状況です。そして、把握できる限りの事を調査します。

 ビジョンや事業コンセプト、ビジネスモデル、事業計画などが分かれば、その「競合他社の動向」の精度が上がります。

 競合他社が上場企業や企業PRを積極的にしている企業であれば、これらの情報の多くを手に入れることができます。

 しかし、中小企業の場合は公表していないことも多い。その場合、取引業者に調査をしたり、信用調査機関に調査を依頼したりと、できる限りの方法で競合他社の動向を捉え、自社の事業計画書の中の競合他社の動向の精度を高めます。

顧客分析

 外部事業環境分析の中で最も重要なものがこの顧客分析です。

 顧客は事業を支える収益の源であり、事業存続の要であるからです。

 したがって、顧客満足や顧客創造に関する分析を常に行っていく必要があります。

 また、顧客分析の目的には、顧客は収益源であると同時に情報源でもあることから、

 ①顧客の変化を捉え、新たな顧客満足を創造する

 ②顧客の視点から自社の商品・サービスを客観的に見て、企業側が考える商品価値とのギャップを認識する、

などがあります。

 顧客分析の具体的な方法には、同じ性質をもつグループ(セグメント)に切り分ける「顧客セグメンテーション」、という作業とセグメント別の顧客調査によって行われる。

その際に行われる顧客セグメントの基準としては、
①自社が参入しやすい(自社の強みをべースに選択した)市場を抽出する

②購買心理の変化など、顧客変化の要因を基準にする

 ③競合相手のセグメント方法をべースにする

といった方法があります。
 なお、顧客分析の結果によって得られたデータは、既存の顧客層をさらに特化させて絞り込んだり、優先して新規の顧客拡大を図ったり、絞り込みを行いながら新規顧客の拡大を図ったりする際の裏付け資料として活用されます。それらの結果は、事業戦略、事業計画を立案することすべてのべースになります。

販売チャネル分析

 販売チャネル分析の大きな目的は、既存の企業においては、卸や小売店などを経由して行われる自社の商品・サービスが、セグメントした対象顧客までしっかりと届けられているか、あるいは、新たな事業を始める際には、セグメントした対象顧客までその自社の商品・サービスを届けるには、どういうチャネルが最も有効かを、この分析(調査)によって見極めることです。

 販売チャネル分析は、さらに個々の具体的な目的(例えば、営業戦略や営業計画策定を目的とする「マーケティングチャネル管理(戦略策定、実施、管理統制)」や、「競合製品に関するマーケティング情報の収集」など)によって、その作業にかける労力や時間などが違ってきます。

 その中で、「事業戦略や事業計画の策定」を目的とする販売チャネル分析のポイントは、既存の販売チャネルの棚卸しや、可能性があると思われる新規販売チャネルのリストアップから始めるのが基本です。
 そして、それらの調査と分析では、戦略的に有効と思われる基準をもって新たにセグメンテーションして行うことです。

 また、分析にあたっては、自社の利益創出のためのビジネスモデルの再考はもとより、販売チャネルとなっている企業の利益創出のメカニズムについても しっかりと把握し、自社の商品・サービスがそうした企業にどの程度の利益を与えているのか、あるいは利益が向上しているのかなども検討します。
 このことで、今後有効な支援策を考えることができるようになるからです。

 自社と販売チャネルがお互いにパートナーシップに基づいて、WIN-WIN の関係が維持できるようにすることも この分析のポイントと言えます。

内部環境分析

 内部事業環境分析に必要不可欠な主な要素として、

 ①商品・サービス

 ②財務

 ③業務プロセス

 ④人員

などがあります。

 内部事業環境分析では、これらの主な4つの分析から導かれた強み・弱み、可能性などを明確に把握し、事業の現在と将来について検討します。

 自社の「強み」が把握できれば、自社のコアコンピタンス(他社に真似できない核となる能力)を認識する際に役立ち、さらに、事業戦略の立案や事業計画の作成にも役立つ情報となります。
 一方、自社の「弱み」の根源が把握できれば、当面の課題としてその解決策を見出して克服する努力をしていくことで、その過程でほかの派生的な弱みも自動的に克服されていくことになるでしょう。

 なお、強み・弱みの分析には、それに機会(どのように機会を利用するか)と脅威(どのように脅威を取り除く、または脅威から身を守るか)も合わせて分析する「SWOT分析」を用いることが一般的です。
 さらに、「可能性」とは、現時点での改善点や今後の事業の可能性を指しており、内部事業環境分析によって そうした要因を見出すことによって、事業展開をより発展させていくなど、可能性をのばすための最重要ポイントを把握することができるのです。

 以上の内部事業環境分析から得られる事柄をまとめると、

 1.自社の強み、コアコンピタンスの把握

 2.弱みを克服する機会

 3.可能性をのばすための最重要ポイントの把握

 そして、これらがK・F・S(事業成功の要因)につながっていきます。 

 自社商品・サービスの現状分析の目的は、ターゲットとしている顧客層がどのように感じているのか、あるいは満足しているのか不満があるのかを調べることで、より顧客層のニーズにマッチした商品・サービスが提供できるようにすることにあります。

 あるいは、新商品・サービスを今後展開していくのであれば、仮説で設定した商品・サービスの どこをどのように具体的に改善すれば、ターゲット顧客層のニーズに応えられるのかを明確にすることです。

 そのためには、調査結果として、単に「中年男性に受け入れられやすい」などの漠然としたレベルではなく、以下のような評価項目別に分析する必要があります。

自社商品・サービスの現状分析での主要項目

 ①品質商品・サービスの機能の充足度

 ②機能商品・サービスが持つ働き、役目

 ③価格:コスト要求機能に対しての価格、コストの妥当性

 ④納期:デリバリー商品やサービスが提供されるまでの時間と供給の安定度

 ⑤オリジナリティ市場における商品・サービスの独自性

 ⑥ブランドイメージ商品・サービスの評価やイメージ

 なお、商品・サービスの分析はどうしても主観的になりがちなため、ポイントはできるだけ評価を定量化することにあります。

 定量的な評価のしにくい嗜好などに関する評価も、どの程度なのかを具体的にイメージできる表現で記載ができれば、プロジェクトメンバー間の意思疎通に支障を来たすこともなく、貴重な検討資料となります。

財務分析

 財務分析の目的は、自社の商品・サービスが金銭的価値に変換され簡潔な数値として表わされた「財務諸表」や「損益計算書」を分析することで、自社は顧客にどのような評価を受けてきたのか、どのような仕事の進め方をしていたのか、その仕事の進め方は妥当であったのか、といった点を客観的に判断することです。

 事業内部環境分析の一環として財務分析を行う場合は、一般的に次のような視点で行います。

財務分析の主な項目

 ①収益性企業が利益を生み出す構造になっているか

 ②安全性健全な財務構造なのか

 ③効率性無駄なく業務が遂行できているか

 ④成長性社内活力の表れとして自社の発展度合いはどうか

 ⑤生産性有限な資源をいかに有効に活用し、金銭的価値に転換できているか

 ⑥キャッシュフロー自由に活用できる手元資金がどのくらいあるか

 内部環境分析を効率的に行うポイントは、まずは財務分析により自社の状況をおおまかにつかんだうえで、問題点を絞り込んでからほかの分析に入ると良いでしょう。

社内業務プロセスの現状分析

 業務プロセスとは、顧客に自社の商品やサービスを提供する過程の一連の活動であり、当然ながらその善し悪しは、顧客満足の程度や財務業績に大きく影響するものです。

 そのような点から、業務プロセス分析においては、ターゲット顧客層の満足度の向上やリピート率向上に結びつく品質、コスト、適正な納期・時間が自社の業務プロセスで実現できているか、あるいは、事業を実施した際に実現できるかを把握します。
 具体的な手順としては、まずは当該事業に関わる自社の業務をプロセスに分解します。

 各プロセスに対しては、品質、納期・時間の それぞれの観点から定量的な評価指標を設定して、測定します。

 たとえば、品質なら不良率やミス発生率、納期・時間ならリードタイムなどです。

 業界標準などの基準値が設定しやすい指標を選ぶことにより、自社のレベルが把握しやすくなるでしょう。

人員分析

 人員分析とは、従業員の経験・スキル・知識などの「能力」や採用・業績評価・報償などの人員管理に関する「仕組み」を分析することにあります。

 従業員の能力や管理するための仕組みは、顧客を満足させる商品やサービスの提供、効率的な業務プロセスの遂行、その結果としての売り上げや利益率の向上など、会社経営のすべての土台となるものです。

 業界動向・市場規模や競合分析は、インターネットを用いて各種統計を探す、業界紙を読む、専門家に聞く、調査会社に依頼するといった方法が考えられます。

 競合分析や自社・事業の優位性は、いずれも 独りよがりな主張・主観では信用・納得してもらうことは難しいでしょう。新事業が成功裏に継続できるかどうかを左右する重要な項目でもあるため、さまざまな方面から情報を入手・検討した上、競合の商品・サービスとの差、自社事業の優位点を、それら確実に正確である情報・データとともに差・優位性に焦点をあてて書いていきましょう。

 また、マイナス要素もしっかり検討しましょう。マイナス要素がある場合は、正直に書いた上で、克服する具体的な方法を検討・表現すれば、むしろ納得性が増すかもしれません。

 

事業の優位性

 事業の優位性とは、自社・事業の強みを踏まえた上で、競合他社と比較したときの優れた点を明らかにすることです。
 先ず、自社・事業の強みを整理、分析していきます。自社の取り巻く経営環境のうち、将来の変化を踏まえながら、直接的なコントロールが利く事象についてピックアップします。その後、事象のプラス面に着目し、競合他社と比較していきます。

自社・事業の強み

 自社・事業の強みとは、具体的には「ヒト、モノ、カネ、ノウハウ」のなかで優れている点です。例えば、「経営者が幅広いネットワークを持っている」「特殊なノウハウで商品・サービスを提供している」「潤沢な自己資金を準備している」「事業に係わる特許権を得ている」といったことです。すべてのことを列挙するのではなく、事業を展開する上で優先度の高いものを記載しています。

 顧客から選ばれる事業となるには、「自社の強み」が明確になっている必要があります。競合他社より強い点がないと、顧客がその製品・サービスを選ばないためです。

 このとき、「強み」には2つのパターンがあります。「製品・サービス自体に強みがある」パターンと、「事業自体(もしくは会社自体)に強みがある」パターンです。

 自動車メーカーは独自の開発力を使って独自の車を作り出します。車自体に他社にない強みがある必要があります。

インターネット通販大手のアマゾンは、扱っている商品自体は本などの他社でも売っているものなので、他社との差がありません。しかし、注文の仕組みや物流網の整備など、会社全体が他社と違う強みを持っていることになります。

強みの把握

 次に、「強み」をどのように把握するかという点です。

 「強み」だけを強調しても、第三者から見ればそれが「本当に強みなのか」と疑問に思うかもしれません。また、「強み」があるということは「弱み」もあります。

 ここで、あえて「強み」以外の部分も総合的に分析することによって、結果として「本当の強み」を発見したり明確にすることができます。

 これらを総合的に把握分析する方法が「SWOT分析」と呼ばれます。「強み」「弱み」「機会」「脅威」の英語の頭文字を取ったものです。

 「強み」「弱み」が会社内部のことで、「機会」「脅威」が外部のことになります。 

 「機会」とは、自社にとってどんな事がチャンスになるかという点です。景気がよい時には売上が上がりやすいので、それをチャンスととらえることができます。

 「脅威」とは、自社にとってどんな事がピンチになるのかという点です。法律の改正によってその事業がマイナスの影響を受けるのであれば、それをピンチととらえることができます。

 このように、「自社が強い」と思っていることだけを書いても説得力が低いのですが、「強み」「弱み」「機会」「脅威」まで把握分析していく中で、「強み」を記入することによって説得力が増すことになります。

 なかなか「自社の強み」が分からないこともあります。そのようなときに、SWOT分析を行い、「機会」「脅威」の外部分析をしているうちに、「自社の強み」に気付いたり、「弱み」を分析している中で「自社の強み」が明確になったりすることもあります。

 もちろん、「競合他社」が明確になっていないと、そもそも自社の強みと弱みが分かりません。「市場」が明確になっていないと「機会」「脅威」も分かりませんので、「競合他社」や「市場」を明確にしておく必要はあります。

 

 競合他社や自社・事業の強みを整理、分析したら、市場の中で起業して実施する事業のどこに優位性があるのかといったことを明らかにしていきます。事業計画書に記載するときは、ことばで記載するだけでなく、自社を含めた商品・サービスについての比較一覧表や十字線の図表などを用いるとわかりやすくなります。

 例えば、店舗を開店するときに、商圏内における優位性を十字線の図表で表現する場合は、十字線の縦軸と横軸の項目を設定し、商圏を大きく4の象限に分類します。その上で、競合店、自店を十字線の中に位置づけていきます。どのような軸を設定するのか、「ターゲットとするお客さんの属性」「品揃えの幅」「価格帯」「サービス提供速度」など、様々な軸の設定が可能でしょう。

 ここで留意することは、設定した軸で市場を分類した場合、4つの象限に空白(該当する店舗が存在しない)がでないような軸を設定することがポイントです。商圏内に多数の競合企業が存在する場合、明確に優位性を表現するのであれば、自店の最も特徴的な点を軸の項目として用いれば、自ずと自店が軸の先端側に位置づけられることになり、競合店との比較がはっきりと表現されます。
 また、競合状況の確認のために作成した表に自社欄を追加することで、優位性を表現するのもよいでしょう。

顧客のメリット

 事業を進めて行く中で、自社と競合他社しかいなければ、自社の状況と競合他社の状況を把握しておくだけでよいかもしれません。 

 しかし、そこに顧客がいなければ事業自体が成り立ちません。「顧客の立場」での視点も事業計画書に盛り込む必要があります。どのような「顧客のメリット」があるかを書いていくことになります。

マーケティングの4C 

 顧客の目線でマーケティングを考える方法として、「マーケティングの4C」があります。

 4つの異なる視点で見ていくと、「顧客のメリット」が明確になるというものです。

 ・Customer Value(顧客にとっての価値)

 ・Cost to the Customer(顧客にとってのコスト)

 ・Convenience(顧客にとっての利便性)

 ・Communication(顧客とのコミュニケーション)

Customer Value(顧客にとっての価値) 

 生産者だけの視点で考えると、顧客の立場を忘れた製品・商品となってしまい、売上が上がらなくなってしまいます。そこで、「顧客にとっての価値」を考えることから始めます。

 「顧客にとっての価値」とは、その製品・サービスが「顧客のどのようなニーズを満たしているか」という観点で見ることができます。

 その製品・サービスを使うことによって、「顧客のどのような不安・不満を解消するのか?」また、「顧客がどのような楽しみや満足を得られるのか?」を徹底的に考えていくことになります。製品・サービスの性能がいくら良くても、顧客にとっての価値に合致していなければいけないということです。

Cost to the Customer(顧客にとってのコスト) 

 「顧客にとってのコスト」とは、顧客がその製品・サービスを手に入れるために、どのくらいのコスト・負担を支払うのかという視点です。

 生産者視点で見ると、「これだけの原価がかかっているのでこの価格」と考えるかもしれませんが、その価格を顧客が許容できなければ売上につながらないのです。

Convenience(顧客にとっての利便性) 

 次は、「顧客にとっての利便性」があるかという視点です。その製品・サービスを入手する時の利便性が良いかどうかという点です。

 「わざわざ遠くまで買い物に行くのではなく、家の近くに24時間開いているお店があれば助かる」という利便性を追求した結果、コンビニエンスストアが誕生しました。

 このように、提供側の視点でなく、購入側の視点(利便性)を考えることが必要になります。

Communication(顧客とのコミュニケーション) 

 「生産すれば売れる」という時代は、顧客とのコミュニケーションがなくてもよい時代でした。しかし、徐々に「双方向のコミュニケーション」を図らないと売れない時代になりました。そして、インターネットの発達によりその傾向が加速しています。今では、顧客とのコミュニケーションなしではモノは売れない時代です。したがって、どのように「顧客とのコミュニケーション」を図っていくかという視点が必要になります。

 以上のように、4つの視点から「自社の製品・商品には顧客にとってのメリットがある」ということを記載していくことになります。 

 

ビジネスモデル

 全体戦略や状況分析が出てきたら、それを具体的なビジネスモデルや戦略、戦術にしていきます。

 前段階の分析と結びついて、自社の製品・商品やサービスが競合他社と差別化ができており、販売の伸びが期待出来ることを示すことになります。よって、前段階の分析が不十分であると事業の魅力が半減します。または、前段階の分析が生かされたビジネスモデルや製品・商品でないと「魅力がない」となってしまいます。さらに、ビジネスモデル、戦略、戦術に基づいて具体的な行動計画まで落とし込みます。これにより、「想い」の部分から始まって、「環境分析」を行い、「ビジネスモデル」を考えた後、実際に行動ができる「計画」となっていきます。

企画開発計画

販売戦略

 事業計画書の中では「販売戦略」を盛り込んでいきます。商品・サービスが良くても販売戦略を間違えば、「商品・サービスが売れない」または「余計な経費をかけてしまう」ことになるからです。

 販売戦略を間違ってしまうケースには、以下のようなことが考えられるからです。

1 ニーズがあるのに提供できない

 顧客がその商品やサービスを欲しいと思っている(ニーズがある)状態であるのに、商品・サービスを提供できない状態です。

 商品・サービスの開発の遅れという意味ではなく、販売戦略にミス(販売経路を確保していない、販売体制が整っていないなど)がある場合です。これではせっかく良い商品・サービスがあっても販売できません。従って、どのように販売をしていくのか(販売経路、販売体制)を早急に整える必要があります。

2 顧客に「良さ」が伝わっていない

 質の良い商品・サービスがあり、さらに顧客ニーズがあるにも関わらず売れないということもあります。他社商品に比べて性能は自社商品の方が良いのに、それを販売戦略(マーケティング)で伝えきれていないがために、他社商品に顧客が流れていってしまっているパターンです。

 単に商品・サービスを並べているだけではその「良さ」は伝わりません。

 どのように顧客ニーズに合致した商品・サービスであるかを訴えるのか、その方法を検討する必要があるのです。

3 ニーズがないのに販売しようとしている

 顧客のニーズがないのに販売しようとしても売れません。しかし、顧客のニーズをつかまずに販売戦略を立てればこのようなことになりかねません。

 例えば、冬物のコートを夏に売ろうとしても売れません。また、小学生向けの商品を大人に売ろうとしても売れません。顧客のニーズをつかまないまま販売戦略を立てているということは、まさにこれらと同様の事をしているのです。よって、顧客のニーズを先に知っておく必要があります。

 以上のことからわかるように、以下の3点が正しい販売戦略となります。

 ・「販売経路、販売体制を整備する」

 ・「商品・サービスの良さを伝える」

 ・「顧客のニーズを把握する」

 これらがいかに整っているか、または、どのように整えていくのかを事業計画書に書くことによって、その事業の販売・売上の状況が想定できるようになるのです。

 

マーケテイング計画

(1)製品・サービスの概要

 製品やサービスの特徴を次のような観点から明確にします。

 ・製品の形状、材質、サイズ、色、ライン、パッケージ

 ・製品やサービスの機能、役割、ブランド

 ・製品であればおもな製法や仕入れ方法、サービスであれば提供方法

 ・その他特筆すべき性質、特徴

 ・事業コンセプトの独自能力との関連

チェック

 どのような製品・サービスかをイメージできるように表現を工夫します。
 必要に応じて、図で示したり、製品の写真を添付します。

(2)製品・サービスのベネフィット(便益)

 製品・サービスの販売ターゲットについて、誰が(ターゲット顧客)、いつ、どこで、どのように利用するのかという視点からまとめます。

 そして、顧客がこの製品・サービスを利用することで、どのようなメリットが享受できるのかも明らかにしていきます。

 活用シーンを提示するなど、顧客の視点からアピールきれているか確認。
        
(3)価格設定

 顧客への標準販売価格を記入します。

 また、価格設定の方針についても次のような考え方に基づき明らかにします。

価格政策例

・低価格政策

 低価格を打ち出し一挙にシェアを獲得する。
 また、薄利多売によって利益を獲得する

・高価格政策

 高価格により製品サービスの付加価値を重視し、早期の資金回収を図る

価格決定方法例 

・コスト価格決定

 かかる費用に必要な利益を乗せて価格を設定する

・市場価格決定

 顧客が購入するであろう価格を設定する

・競争価格決定

 競合する製品・サービスに対し価格競争力を考慮して設定する

チェック

 「売れて、儲かる」価格の考えが練られているか確認しましょう。

(4)販売形態(販路、店舗)

 まず、想定する商圏を明らかにします。

 そのうえで、製造業や卸売業であれば、製品を流通させる販路を図示します。

 複数の販路を想定している場合、シェア構成などを記入します。

 また、小売業であれば、店舗の立地や広さなどの特徴を記入します。

チャネル政策の考え方例

・開放的チャネル

 取引を望む相手すべてと取引・選択的チャネル

  一定の条件をあらかじめ設定しその条件に合った相手と取引

・専売的チャネル

 代理店方式、会員制、フランチャイズ方式など特定の相手のみと取引

店舗の考え方の例

(1)商圏設定による店舗の考え方

①近隣型店舗

 最寄り性が高く、多くの地元住民が多頻度に利用する店舗

②地域型店舗

 最寄り性・買い回り性が強く、週1回程度来店が見込める店舗

③広域型店舗

 専門性・噂好性が高く、広域商圏において店の認知度が高められる店舗

(2)店舗規模による店舗の考え方

①小規模店舗

 専門的な品揃え・サービスで初期投資を抑えた店舗

②大型店舗

 広い品揃えで大きな集客を見込む店舗

チェック

 製品特性に合わせた販売方法が構築きれているか確認しましょう。
 販売先、仕入れ先のパートナーを求めるのであれば、しっかりした政策が明記されていることが必要。

(5)プロモーション方法

 プロモーションとは潜在顧客の掘り起こしのための具体的な告知方法のこと。

 製品・サービスをどのように認知してもらい、アプローチしていくかを具体的に記入します。

  プロモーション方法には次のような方法があります。

・広告活動

チラシや雑誌、新聞、CMなどの広告掲載。広告料として費用がかかる

・パブリシティー

 雑誌、新聞の記事としての掲載

  話題性、新規性のあるものであれば取り上げられる可能性は大きい

・人的販売

 営業マンや店舗販売員による告知、営業活動

・イベント

 展示会、見本市、新製品発表会などによる告知活動

・その他

 会員制、インターネット利用、DM、口コミ など

チェック

 大規模なプロモーションには大きな費用と手間がかかります。少ない費用で大きな効果を狙ったプロモーションがとられているか確認しましょう。

(6)知的財産権等の所有状況

 特許、実用新案、意匠、商標などの知的財産権の所有状況(申請中も含む)を記載します。

 また、事業に必要な免許、資格等も取得状況を明示します。

 

販売計画

 販売計画は、いくらのものを何個売るかを予定したもので、売上をどうつくっていくかという計画です。販売計画を作成するうえでは、売上がどのような積算で成り立つかを考える必要があります。

 業界や競合企業の状況、地域の事情、業歴(認知度)を踏まえて、1年目、2年目、3年目の売上を設定していきます。

(1)取扱商品・サービスのアイテム数が少ないとき、又は顧客数が限定されているとき

  平均商品単価×年間販売数

 平均商品単価は、品揃え商品の平均単価です。年間販売数は、お客さんの数や一度に購入するボリュームも含めて予測します。また、取扱商品の詳細が決まっていないときは、主力商品とその他の商品群にわけて積算してみるのもよいでしょう。

(2)取扱商品・サービスの幅が広く、顧客数が多いとき
  1日あたりの客数×客単価×年間営業日数

 客単価とは、一人のお客さんが一度の利用で購入してくれる金額

 このときの客数、客単価は予測になりますが、希望的観測ではなく、客数であれば、店舗がある通りの通行量や商品の特性(日常的に購入する商品か、そうでないのか)を考慮したりする必要があります。

(3) 店舗販売が中心のとき
  1坪(3.3m2)あたりの年間売上高×売場面積

 このときの1坪(3.3m2)あたりの年間売上高は、日本政策金融公庫のHP小企業の経営指標調査などで確認ができます。

(4) 飲食店や理美容店などのとき
  客単価×席数×回転率×営業日数

 回転率は、設置してある座席数がどのくらい回転したかといったことを図る指標です。例えば、10席ある店舗で100人のお客さんが来店したら10回転したことになります。
 一般的に、客単価が高ければ、回転率は低く、客単価が低ければ、回転率は高く設定するといった考え方になります。

  事業計画書の中では数値計画が重要です。特に、売上に関する計画(=売上計画)は重要性が高い。最終的には利益を出すことが目的ですが、利益の一番の元になっているのは売上だからです。いくら経費削減や原価低減をしても、売上がなければ利益が出ることはありません。

 売上計画の基本的な考え方を見ていきます。

 売上を分解すると、「売上=商品単価×購入数量×購入頻度」となります。

 例えば、1万円の商品1,000個を月に2回購入する取引先があるとします。

 月の売上を計算すると「1万円×1,000個×2回=2,000万円」となります。

 事業計画書の中で売上を伸ばしていくことを考えれば、これらのうちのいずれか、または全部を伸ばしていくことになります。

 パソコンメーカーであれば「機能を充実させた新製品を開発し、単価を上げる」、パン屋であれば「朝食用のパンを購入する人におやつ用パンを促すことによって、購入数量を増やす」、ラーメン屋であれば「今まで月1回しか来ない顧客に対して特典カードを発行することで、月2回に来店頻度を増やす」などです。

 このように考えると、自社がどのような業態かを考える必要があります。

 自社の業態から分析すると、以下のように分けて考えることもできます。

 ・営業を仕掛けてこちらからPRする

 ・店舗で顧客が来るのを待っている

 ・それらの複合系である

 どの企業に対してどのような対策を行うかということまで考えます。 

 新規営業であれば、どのような企業を対象にするのか、その市場規模はどのくらいかなど具体的に調べていきます。既存の取引先があるのであれば、「売り上げシェア上位2割の取引先に対してどんな対策を打つのか」「下位の企業に対してはどのように対応するのか」などを具体的にしていきます。そうすることによって、売上計画の精度が高まります。

 店舗型の場合、来店を増やしたり、購入数を増やしたりすることを考えるのと同時に、効率化を考えます。

 例えば、10席しかない飲食店では同時に入れる顧客数は限られます。そのため、顧客の回転率を考えなければなりません。

 旅館などでは、週末の稼働率が100%であれば、週末の売上はこれ以上伸びないということになりますが、平日の稼働率を上げることによって、売上全体の底上げを図っていきます。 

 よって、基本は「売上=商品単価×購入数量×購入頻度」ですが、各業種、各企業によってさらに細かく分析し、売上の計画を立てていくことなるのです。

 

売上原価計画

 販売計画を作成したら、次は売上原価の計画も立てましょう。

 売上原価とは、売上に対して直接掛かっている費用のことです。

 売上から売上原価をマイナスすると売上総利益が計算できます。

 売上総利益は「粗利」とも呼ばれ、利益の中でも基礎となるものです。

 売上総利益=売上−売上原価

 売上総利益から一般の費用(販売費および一般管理費)や営業外に掛かった費用などが引かれ、利益を算出していくので、売上総利益が黒字でないと経営が成り立ちません。

 その売上総利益を計算するためには売上原価が必要です。

売上原価に含まれる要素

 売上原価にはどのようなものが該当するのでしょうか。これは業種によって変わります。

・商品を仕入れてそのまま販売する業種の場合

 この業種が一番売上原価を計算しやすい。

 例えば、10万円のパソコンを仕入れて15万円で売るような業種です。

 「売上15万円-売上原価10万円=売上総利益5万円」となります。

 なお、仕入れても売上なければ在庫となり、売上原価になりません。

・材料を仕入れて加工し販売する業種の場合 

 この業種は少し複雑です。同じ費用でも製造に掛かる費用は原価であり、その他の費用と区別します。

 例えば、同じ人件費でもその製造工程に掛かる人件費は原価であり、本社の経理をしている人などは原価に入りません。これらを製造原価と言います。

 オーダーメイド製品のように、一品一品個別に製造する場合は、「その製品を作るためにどの材料を使ったか、どのくらい人件費が掛かったか」を計算できます。これを個別原価計算といい、直接かかった分を原価に組み入れます。

 しかし、大きな工場のように大量に多品種の物を製造している場合、どれがどの製品に費やされたかが分かりません。そのため、計算上で一個当たりの製造原価を算出します。これが総合原価計算です。

・その他の業種の場合

 サービス業などのその他の業種では、売上原価はそれぞれの業種によって異なります。 

 例えば、飲食店では材料費を原価にします。人件費や家賃なども基本的には原価に含めます。

 しかし、直接売上に関係しない作業をすることもあるので、それぞれの企業の判断によって例外的に原価を含めない場合があります。

 基本的な考え方としては、「売上に直接関係する費用については売上原価とすべき」ということです。

販売計画作成のステップ

 販売計画を策定するには、まず販売予測を行わねばなりません。

 そして、その予測に基づいて、一定期間における販売の量と金額を決定します。

 期間は一般的に、5年、3年、1年の期間で設定されることが多く、その中で3年、5年という中期・長期計画は、主に将来の経営戦略としての方向付けの一環として作成しますが、1年といった短期計画は、それを必達することが前提で策定されます。

 つまり、業務執行命令としての性格が強い計画となります。

 計画作成にあたっては、次のステップで進めます。

  販売需要予測 ⇒ 販売予測 ⇒ 販売目標 ⇒ 販売計画作成

販売活動との連動

 販売計画は、販売活動と連動させるため、製品別、販路・得意先別、営業所別、地域別などに細分化して、その運営と管理を行うことが大切です。

 精度の高い販売計画策定のコツの1つとして、個別計画の策定から入る(全体計画を策定する前)のも良いでしょう。

販売計画の作成方法

 具体的な作成方法としては、一般的には、商品や製品などの売上数量と単価を個々に見積もり、それを積み上げて、売上高を計算する方法がなされていますが、
 その他には売上高の算定方法には以下のような方法もあります。

①顧客一人当たりの平均売上高を算定して、一定期間の売上高を予測する。

②稼働時間の単位時間当たりの売上高を算定して、一定期間の売上高を予測する。

③営業スタッフ一人当たりの平均売上高を算定して、一定期間の売上高を予測する。

④店舗面積の単位面積当たりの平均売上高を算定して、一定期間の売上高を予測する。

 いずれにせよ、販売計画の精度を高めることができるように、業種・業態の事情に合わせて適切な基準単位を決定することが肝要です。

販売単価の検討と売上高・粗利益の構成

 売上高予測のための適切な基準単位が決まったら、商品の仕入原価やその事業にかかるさまざまなコストを考慮して販売単価を決定します。

 販売の見込み数量の設定については、単なる思い込みの数量ではなく、その商品・サービスにどのくらいのニーズがあるのか、成長性はどうかなどを慎重に検討して数量を見積もります。
 その際に重要なポイントは、売上高や原価、粗利益高の構成が全体的に整合性のとれた無理のない計画であるかどうかを検討することです。

 そして、再考の必要があれば、数量、単価、原価を修正したうえでシミュレーションを繰り返します。

 販売計画とは、何円の商品・サービスを一定期間にいくつ売るかの見積りです。販促計画は、商品・サービスをどのようにして広く知ってもらい売るか、仕入計画は、売上を上げるために何を何円でどれだけ仕入れるかの見積りです。

 販売計画や販促計画は、ここまでに見てきた事業内容や現状分析から明らかになるものであるとともに、数値に落とし込んで検討していくことで、事業内容や現状分析を見直すきっかけにもなります。多くの場合、双方を調整していく過程で繰り返して見直し、事業の実現見込みを高めていくことで事業計画を練っていくでしょう。

 ここで売上について理解しておくべきことを説明します。売上の計算にはいくつかの方法があります。
(1) 売上=平均単価×販売数
(2) 売上=1日当たり客数×客単価×営業日数
(3) 面積あたり売上高×売り場面積
(4) 客単価×席数×回転率×営業日数

 これらの計算式を用いて、業界や売り方、地域の事情などのデータと照合しながら、数値の見直しをすることができるかもしれません。販促計画も、これら計算式を当てはめてみて、より売上目標に近づけるように調整できるかもしれません。

 また、売上や仕入の入金・支払サイトについても入念にチェックしておきましょう。入金が1カ月遅れたばかりに資金ショート、というようなことが起こっては大変です。

販促・集客方法

どのような販促や集客方法を活用し、どのように顧客に販売するかを具体的に検討します。

 

仕入計画

 販売計画は、いくらのものを何個売るかを予定したもので、売上をどうつくっていくかという計画です。販売計画を作成するうえでは、売上がどのような積算で成り立つかを考える必要があります。

 原材料や販売する仕入品全体の仕入金額や仕入先が何社あって、どのくらいの数や金額を仕入れるのかといったことを予定します。
 計画作成時に詳細が決まっていなければ、仕入先の名称や仕入先数を書いておきましょう。また、既に仕入先毎の仕入原価率が決まっているときは、それぞれの仕入金額まで予定しておきましょう。支払い条件なども決まっていれば記載しておきます。

仕入計画作成のステップ

 仕入計画の策定にあたっては、まず最初に売り上げ状況に注目する必要があります。

 商品の仕入れは、言うまでもなく、売れる商品を把握することが基本だからです。

 しかし、商品間の競争は激しく、常に売れ筋商品は変化しています。

 したがって、現時点での主力商品がいつまでもその地位を保っているとは限りません。

 そうしたことから、次の売れ筋商品は何かを常に把握すると共に、在庫の回転を考えながら適切な仕入数量を検討することや、外部要因(万引きなど)や内部要因(社内不正、伝票ロスなど)が原因となる商品ロス率をなるべく少なくするための方策なども考えておく必要があります。

仕入計画策定のステップ

 現時点での売上状況の把握・次の売れ筋商品の把握
  
 適切な仕入数量の検討
  
 ロス率最少化のための方策  

販売活動との連動

 現在、リアルタイムに近い受発注が消費者から求められています。それだけに、仕入計画の精度の良し悪しは経営全体に響く大きな問題となります。

 仕入をスムーズに、しかも在庫リスクを回避しながら行う体制の構築には、当然ながら、自社だけでなく、流通に関係する企業同士の連携が欠かせません。

 また、社内的には、リアルタイムを実現するために、ITを利用したシステムの構築も必要です。

仕入計画作成のポイント

 仕入計画は、需要-販売-仕入と有機的に連結させて具現化していきます。

 仕入計画策定の際には、「売上高予算→在庫高予算→仕入高予算」という流れで、売上高を基準にして、仕入と在庫の内容が決まるため、販売計画(予算)の修正が生じた場合には、仕入計画(予算)と在庫計画(予算)も修正する必要があることに留意しましょう。

 

利益計画

 売上がいくらあっても、利益がなければ経営は成り立ちません。利益計画は大変重要です。 

 しかし、「3年後、5年後には利益はこのくらいになっている」というような利益の予想だけを立てても意味がありません。

 利益は段階によっていくつかの種類に分かれます。

 売上から原価を引いたものが「売上総利益」、または「粗利益」と言います。

  売上-売上原価=売上総利益

 売上総利益から「販売費および一般管理費」を引いたものを営業利益といいます。

  売上総利益-販売費および一般管理費=営業利益

 販売費および一般管理費は、販売費と一般管理費に分かれます。

 販売費は広告宣伝費など販売に掛かる費用で、一般管理費はバックオフィス機能など、事業活動を行う上で一般管理に掛かる費用全般をいいます。

 営業利益は「事業活動で生み出した利益」という意味を持っていますので、ここが赤字ですと事業活動で利益を生み出していないともいえます。

 さらに、営業利益から営業外収益をプラスして、営業外費用をマイナスしたものが「経常利益」です。

  営業利益+営業外収益-営業外費用=経常利益

 営業外収益・営業外費用は、事業活動以外で経常的に発生する収益・費用です。

 例えば、長期に銀行借入をしている企業であれば、支払利息が営業外費用の代表的なものです。

 経常利益から特別利益と特別損失をプラスマイナスしたものが「税引き前当期純利益」となります。

  経常利益+特別利益-特別損失=税引き前当期純利益

 特別利益・特別損失は「経常的ではない特別な理由で起きたもの」です。

 例えば、固定資産を売却した時の売却益・売却損などがそれにあたります。

 税引き前当期純利益から税金を引いたものが当期純利益となります。 

  税引き前当期純利益-税金=当期純利益

 事業計画書の利益計画は、詳細に作るのであれば「当期純利益」までを作成するのがよいでしょう。 

 そこまで詳細に作成しない場合でも、事業活動で利益が出ているかどうかを判断できる「営業利益」までは最低限作成するべきです。

 利益計画は「売上計画」「原価計画」「人員計画」「設備計画」ができていないと作成できないことがわかります。

 販売費および一般管理費も、「売上に関わらず発生する固定費」と「売上に応じて発生する変動費」に分かれます。売上計画をしっかりと作成していないと「経費の計画=利益計画」が作成できません。

 なお、起業時に詳細の試算が難しい場合には、同じ業界の平均的な売上原価率(売上原価÷売上)の指標を参考にするのも一つの方法です。日本政策金融公庫のHP小企業の経営指標調査などで確認ができます。

利益計画の6ステップ

投資・調達計画

 店舗の内装や什器、飲食業であれば、店舗の内装に加え、ホールの客席のテーブルや椅子、調理作業台やグリルなどの厨房の機器、サービス業であれば、事務所のデスクやパソコンなどにかかる資金です。また、形のあるものだけではなく、ホームページの開設や回線の設置にかかる費用が含まれます。
 次に考えるのは、どのくらいのレベルのものを準備したらよいかです。事業のコンセプトや提供する商品・サービスに欠かせないものについては、それに見合う有益なものを検討すべきです。しかし、起業時には様々な費用がかかります。中古やリースも含めて検討し、なるべく支出を抑えていきましょう。
 「小さく産んで大きく育てる」という発想を持ち、必要最低限で投資を計画していくとよいでしょう。

運転資金の考え方

 運転資金は、事業を行うために日常的に必要なお金のことです。例えば、人件費、外注費、広告費などの諸経費が該当します。また、商品や材料の仕入れ代、賃料や納付する税金も運転資金になります。
 起業時においての必要な運転資金は、これらの費用の3~6ヵ月分、月商の2倍前後といった見方があります。いざ事業を開始してみるとなかなか売上が伸びない、あるいは、予定以上の費用がかさむといった事態もありえますので、運転資金は余裕をもって準備するようにしましょう。

自己資金の考え方

 自己資金については、起業前に十分に準備しておくことが大切です。
 起業時にある程度の初期投資が必要な飲食業などの業種は、500~1,000万円程度、その他の業種でも数百万円は準備しておくとよいでしょう。

借入による調達

 金融機関からの借入を検討する場合は、起業に必要な資金総額の3~5割程度の自己資金を確保するようにしましょう。自己資金がしっかりと準備されているということは、事業計画が練られているのと同じように、本気度が高いう印象につながります。起業するために、資金をコツコツと貯めてきた人は、借入を依頼する金融機関からも良い評価を得られるはずです。
 親族からの借入を検討する場合は、対外的には自己資金と同等に見られることもありますが、厳密に考えれば、将来返済が必要になる借入です。親族とはいえ、むやみに借りるのではなく、自己資金を確保したうえで必要額を借入することが大切です。

 

資金計画

 資金計画は企業の安定・維持・成長のために必要な資金を調達・運用し、利益を生み出すための計画です。

 資金計画は、大きく分けて「資金調達計画」「資金運用計画」「資金繰り計画」の3つから構成されます。

 資金調達計画とは、設備投資資金(建物、生産設備、店舗など固定資産の取得などに使用する資金)などを調達するための計画を言います。
 資金運用計画とは、調達した資金の「使い途」を示したものです。

 また、資金繰り計画とは、現実の事業を存続させていくために、常に現金がショートすることなく循環させるための計画です。

 前者2つの計画は比較的長期の資金を扱いますが、資金繰り計画は、日々の債権回収、債務支払いなどの短期資金を扱うのが特徴です。
 資金計画の策定においては、必要な資金計画のレベルとして、それが社内の一部門(プロジェクトも含む)で策定される事業計画では、一企業レベルで行うような厳密な資金計画は必要とされません。基本的には、経理や財務部門が資金の調達、運用などについて一元的に管理を行うからです。

 ただし、ベンチャー企業や、大手企業であっても事業部制や社内カンパニー制をとっているところであれば、独自の厳密な資金計画を立案する必要があるでしょう。

資金調達計画の作成
 金調達の源泉としては、自己資本(資本金や内部留保金)か、他人資本(金融機関などからの借入金や社債)になります。

 自己資本を当てるのであれば、自己資金の手持ち状況をチェックしたうえで、その資金を利用しても問題が生じないかどうかを検討する必要があります。
 他人資本で調達しようとする場合には、金融機関によって借入金額の限度枠や返済期間、その利息などが異なることにも留意し、場合によってはその事業(プロジェクト)が、利息などの面で事業者に優遇措置が施される制度融資の適用対象となるかどうかも調査・検討しながら、資金調達計画の策定を行います。

 特に設備資金については、投資しても売上利益を通じて回収されるには長期間を要するため、長期の資金で調達することが望ましいと言えます。

 また、その他の留意すべき点として、予め考慮しておかなければならない点として、決算資金や季節資金という臨時の資金需要が発生することがあることです。

 決算資金とは、企業の決算に伴って発生する法人税などの支払いや役員賞与、配当金などの支払いによって必要となる資金のことです。
 季節資金とは、毎年特定の季節に定期的に発生するもので、売上が特定の時期に集中するために発生する在庫手当や従業員への夏期・冬期賞与などに必要となる資金を言います。

 事業を進めるうえで、このような資金需要があることを踏まえて、そのような資金をどうやって調達するかを考えていくことも必要となります。

資金運用計画の作成
 資金運用計画とは、調達した資金の「使い途」を示すものですが、資金の調達と資金の使途とを対比すること、すなわち、資金の調達(当期利益、減価償却費、借入金、前期繰越金など)と、資金の用途(投資、借入期の返済、租税公課など)を考慮に入れて計画することが必要です。そのためには、通常、年度ごとの資金運用表を作成します。資金運用表とは、年度計画を実現するため、資金の流れを計画するものです。この計画を基に資金調達が行われます。

資金繰り計画の作成

 事業(プロジェクト)を推進するうえで、資金繰り計画の作成は欠かせません。

資金繰り計画とは、事業(プロジェクト)の遂行に必要な現金をショートさせることなく循環させていくための資金計画のことをいいます。資金の「入」と「出」を的確に見積もり、支払不足に陥らないように対処することです。
 そして、この資金繰り計画に基づいて、銀行からの借り入れや増資、債券の発行などの対策が実施されることになります。

 具体的な策定方法としては、月次計画や週間計画、日々計画を基に、資金繰り表を作成します。
 資金繰り表を作成する目的は、資金の収支から資金残高を計算し、資金不足を起さないように管理していくためのものです。

 一般的な内容としては、3ヵ月程度の資金の回収、資金需要と残高を計算できるように作成します。

 売り上げによる売掛金がいつどのように回収されて、買掛金や給与、経費の支払いにいつどのように消えていくかを明らかにします。

 資金繰り計画の作成にあたっては、借入金の増減や月々の返済額の推移に留意する必要があります。

 また、その他の留意すべき点としては、商品を販売する事業形態の場合、支払いでウェイトが高いのは、やはり仕入代金である買掛金の支払いです。
 仕入代金の支払いは、売上代金の回収に基づいて自社でルールを決められるために計画自体は立てやすいと言えますが、場合によっては支払条件が取引契約で定められていたり、売れ筋商品などの場合には、在庫を切らさないように在庫手当による仕入も必要となることがあります。

 したがって、資金繰り計画における「支払い」は、仕入、売上、在庫の各計画と連動させて、その他の必要経費なども含めて計画を作成する必要があります。

 

損益計画

 損益計画では、売上高と各種費用を見積もります。これにより、以下の各種利益が計算されます。売上高は、販売計画で見積もったものです。

 売上総利益 =売上高―売上原価
 営業利益 =売上高―売上原価―販管費
 経常利益 =売上高―売上原価―販管費―営業外損益
 純利益 =売上高―売上原価―販管費―営業外損益―税
 ※営業外損益=財務活動・金融活動など、本業外の損益(支払利息など)

 販管費とは、販売費および一般管理費の略です。人件費や減価償却費といった物件費が含まれます。

販管費比率(販管費÷売上高)の低さは、経営効率の良さを意味することがあり、業種によっても異なります。一般的に大企業ほど低いことが知られています。販管費比率の低下は一つの経営指針にもなるということです。

 販管費に含まれる減価償却費についても しっかり見ておきましょう。

 減価償却費とは、設備・機械・車両などといった 時間経過とともに価値が減っていく資産を、購入時に全額必要経費とはせずに、使用可能な期間(法定耐用年数)にわたって分割し必要経費として計上していく科目です。実際に費用としてお金が出ていくわけではない額です。そのため、例にあるように返済可能額の欄には「税引後利益(純利益)+減価償却費」の額が書かれています。
 また、業種により難しいこともあると考えられますが、売上が増えたときに、売上の増加率ほどには販管費が増えないような事業の仕組みをつくることができると、投資家の評価が高いでしょう。売上が増えたときに利益の増え方が大きく、投資家が重視する「成長性」が大きく見込めるからです。

 

生産計画

 生産計画は販売計画を受けて作成します。

生産計画作成のステップ 
 (1)部品、原材料、生産能力、倉庫の在庫能力などの基本要素の検討
 (2)加工の順序や方法などを定める手順や工数、日程などの検討
 (3)(1)、(2)で得られた結論をもとに、販売計画とのすり合わせを行い最終決定する

 (1)の部品、原材料の検討についてですが、製品に必要な部品や原材料が、指定品質を保って納期通りに指定量の納入が可能かどうかを把握することが必要です。

 生産能力についてですが、自社の製造ラインはもとより、外注・協力会社の生産能力まで含めて検討します。もし、自社の製造ラインでは余力が不十分で、かつ外注・協力会社にも対応能力がない場合などには、新たな設備投資の検討が必要になります。

 倉庫の在庫能力ですが、SCM(サプライチェーンマネジメント)のようなシステムを社内で構築しているような場合でも、不良品の即時交換や品切れ防止のためにある程度の在庫が必要と考えられます。したがって、生産計画策定の際にも倉庫の在庫能力を把握しておく必要があります。
 生産計画では、生産品目ごとに、生産数量、納期を定めたり、実際の生産を行うための計画を立てる必要があります。

 生産計画では、業務計画としての「手順計画」と「工数計画」、期間に関する計画としての「日程計画」の3つの計画が必要となります。

(1) 手順計画
 3つの計画の中で最も基礎となるのが手順計画です。手順計画は、作業方法について具体的に定めた計画で、内容としては、作業の品質が揃って、安定した生産が可能となるように、誰でも分かるように作業方法が標準化して示されなければなりません。

(2) 工数計画
 工数計画は、納期と生産量から見積もられる仕事量から必要な人員と機械台数を計算し、現有の能力を調整するための計画です。なお、仕事量があまりにも多く、現有の生産能力を上回っていれば、人員を増やしたり、残業時間を増やしたり、設備を改善するなどの対策が必要です。

 下回っている場合には、生産余力の転用を検討することも必要です。

(3) 日程計画
 日程計画とは、計画達成に必要となる作業日程を決定する事です。

 その作業期間の長さに応じて、短期、中期、長期の3段階があります。

・小日程計画:

 週または旬単位で行う生産統制で、生産現場で実際に起こるさまざまな事故や設備の故障などによる作業の遅れを考慮して行う計画の微調整なども含まれる。

・中日程計画又は月次計画:

 月単位で行う生産統制

・大日程計画:

 半年~1年単位で行う生産統制

 

在庫計画

 完全な受注生産や予約セールスなどの場合を除き、仕入れた商品は在庫となる。

 適正な在庫は販売チャンスを的確につかむことにつながり、販売活動にある程度の在庫は不可欠な要素となりますが、その反面、保管コストや資金的な負担、また、陳腐化や物理的な損傷などによる商品価値の低下をもたらす恐れもあり、慎重な計画が必要です。
 在庫計画策定においては、一般的に「売上高の何ヵ月分」などといった表現をしますが、ITインフラを活用して効率化させれば、在庫を少なくすることができ、その分在庫リスクを低減することが可能となるでしょう。

 販売時点情報システム(POS)等の導入は、売れ筋商品情報を素早くつかむことができ、そのため、売れるものを確実・迅速に仕入れ、かつ、生産活動にも連動させることができ、生産ロスを少なくすることができるでしょう。

 在庫計画策定のステップとしては、まずは自社にとっての適正在庫の基準を考えることが必要です。

 適正在庫とは、いつでも出荷できる必要最低限の在庫のことです。

 日次の適正在庫は次の式で求めることができます。

日次の適正在庫数量

=1日の平均販売数量+リードタイム(商品の発注から納品までに費やされる時間)日数

×1日の平均販売数量

 通常、仕入は、販売(現金化)に先行して行われるため、過剰、余剰在庫の存在は、会社の資金が固定化された状態になります。

 したがって、最低限必要な適正在庫(恒常在庫)は、借入金ではなく、安全資金である自己資金で確保することが望ましいとされています。

 

設備投資計画

 設備投資計画は、販売計画達成には既存設備だけでは能力が不足する場合や老朽化した設備の代替が必要な場合に、生産能力の維持増強のため「何に」「いつ」「どれだけ」投資するのかを明らかにするための計画です。

 「何に」に該当する設備投資は、土地や建物、機械装置、車両運搬具などの有形固定資産を主な対象としています。
 実際の計画を作成する際には、一般的に、投資を目的別に分類し、各目的別に具体的な投資内容を記述し、設備投資案ごとに投資採算性の分析を行います。

 長期にわたって使用する設備の購入金額を、購入時の費用とせず、その使用期間にわたる各年度に規則的に費用配分する方法を「減価償却」と言います。

 以下が実際の簡易な計算例です。主な設備の使用期間を見積もったうえで、購入金額をその使用期間(年数)で単純に割り、見積もります。

計算例
 導入設備:A製造装置
 設備購入金額:10,000千円
 見積使用期間:10年
 年間減価償却予定額:10,000千円 ÷ 10年 = 1,000千円/年

 なお、設備投資は長期に資金が固定化されるため、投資段階での資金調達のタイミングや投資効果測定、投資資金の回収予測などの検討は欠かせません。

 設備投資は、それを行うと資金が固定されるうえに保険料や借入金の金利支払いなどが発生し、資金繰りに支障を来たす危険性もあります。

 また、設備自体も固定化されるため、製品の変更やそれに伴う製造工程の変更も行いづらくなります。
 したがって、そうしたリスクを回避するために、「外部資源の活用」や「設備自体の転用可能性の確保」を考慮に入れて検討することが大切です。

 外部資源の活用とは、自社競争力の維持に不可欠な工程ではない場合に、自前で設備を持たず、提携先や協力会社、アウトソーシング、OEMなどを活用することを言います。
 また、設備自体の転用可能性の確保とは、他の製品への転用やライン変更への対応が柔軟にできるかどうかを言います。

 そのような点を考慮し、できるだけ柔軟性のある設備となるようにすることが大切です。

 場合によっては、機械設備への投資の代わりに、より柔軟性が期待される工員の働きを増員することによって強化することも検討に値します。

 

人員計画

 販売・生産・設備投資計画などを作成した段階で、事業(プロジェクト)に必要な人員数の計算を行います。

 人員の選定にあたっては、キャリアパス(仕事能力向上のための職場の異動経歴)、スキル(事業の各業務内容に見合った経験や能力)、その仕事に対する適性などを考慮して決定し、人員計画をまとめることになります。
 ここで注意が必要な点として、それらの人員の選定を全て新規採用メンバーで行おうとすると、既存組織との軋轢が発生しかねません。

 そこで、新規事業(プロジェクト)として社内に特別プロジェクトが編成された場合には、既存組織などへの業務連携や業務引き継ぎを円滑に進めるため、既存組織の事情に精通した人員も確保しておくと良いでしょう。

人員計画作成のポイント
 人員計画のポイントとしては、まずは当該事業(又はプロジェクト)の遂行には、どんな業務が必要なのかといった考えで、仕事の見積もりを行い、そこに必要な人員を割り付けるという順序で計画を作成します。

 まず、各業務の内容に関する定義と必要と思われる業務に関するリストを作成し、誰がどの業務を担当するかを決定します。

 この時点でのポイントは、業務の定義の厳密さよりも網羅性に重きを置くことです。
 業務に対する人員の割り付けにあたっては、必要なスキルを検討するとともに、必要とされる人材像のイメージをある程度明確にし、人数の見積もりを行います。

 予定人数については、事業の進展の如何によって必要となる人数やスキルなどが変わってきますので、大体3~6ヵ月単位で計画自体の見直しを行うと良いでしょう。

 当該事業(またはプロジェクト)の遂行に複数の既存組織が関わる場合には、そうした業務を組織部門単位に割り付けることが必要です。
 このときに大切なことは、プロジェクトチームから既存組織部門への仕事(必要と考えられる業務)の引き継ぎをどのタイミングで行うかといったことです。

 その際は、1つの考え方として、企画段階からの参画度合いなどを検討材料にして割り付けを決定すると比較的円滑にいくでしょう。

 ただ、そうした場合でも、くれぐれも各組織部門への説得や根回しは怠りなく行ってくことが肝要です。

人件費予算と人員数
 新規事業の遂行などにおいては、特に事業全体の予算計画は大切なことですが、人件費に関する予算のあり方も その成果を左右する大切な要素となります。

 しかし、現実的な面で事業全体ですら十分な予算で遂行することができないため、人件費予算も得てして不十分なものになりがちです。

 そうした場合での判断基準としては、必要なプロジェクト業務や職種に、重点的に適材を投入することが必要となるため、派遣社員などの外部人材の活用も視野に入れ、人件費の変動費化を進める弾力的な意思決定で臨むことが肝要です。
 人員計画を立てるうえでは、変動要員を、業務の繁閑に応じて確保するかがポイントとなります。

 人員計画には新規採用の人数を見積もる目的の他に、現有人材のローテーション(部門内・部門間含む)と人事戦略面の検討も加えることが肝要です。

 人員計画で参考となるデータとして、労働生産性と労働分配率を算出する以下の計算式が参考となります。

・労働生産性=(生産高(売上高)/従業員数)×(付加価値/生産高(売上高))

・労働分配率= (人件費/従業員数)÷(付加価値/従業員数)
      =1人当たりの人件費÷付加価値生産性

 労働生産性とは、労働力(単位時間当たりの労働投入もしくは、社員1人当りの付加価値)1単位に対してどれだけ価値を生めたかを指す指標です。

 労働分配率とは、付加価値に対する人件費の割合をいいます。
 「労働生産性が高くなる→労働分配率が低くなる」「労働生産性が低くなる→労働分配率が高くなる」という、労働生産性と労働分配率の相互関係が成り立ちます。
 人件費を増加させるためには、付加価値を増やすか分配率を高くするか、のいずれかになりますが、分配率を高くすれば収益が悪化するため、人件費予算策の基本戦略としては、分配率を上げないで付加価値を増やす対策を考えることが肝です。

 また、人を増やさず生産高を上げる手段としては、生産設備の増強投資などによって生産能力を高めることも検討に値しますが、それには結果として売り上げの拡大が見込めるようでなくてはなりません。

業務、人材のアウトソーシング(外部委託)
 アウトソーシング(外部委託)とは、限られた経営資源を重点分野に集中するため、 外部企業へ委託することをいいます。

 アウトソーシングは、業務の企画や計画からマネジメントまでを包括しており、組織体制の不備を補えるため、特にベンチャー企業からのニーズは高いといえます。

 また、現在では従来難しいとされていた営業や経理業務などにも委託業務が広がり、企業として必要不可欠な業務を内部に設置するよりも、コストを抑えて活用できるといったメリットもあります。
 アウトソーシングの活用にあたっては、外部委託とはいえ自社の経営機能を補完して円滑な業務推進を図る目的で行うわけですから、会社全体で計画を理解すると共に、委託先との業務内容における解釈や責任範囲などに十分配慮することが必要です。

 また、派遣社員では必要に応じて人材の確保の一環として考えることが肝要です。場合によっては、コアになる人材にも正社員以外に派遣社員などの外部人材の登用を考えるべきでしょう。

社内体制

 事業計画書の中に社内体制を書くことがあります。もちろん、一人でビジネスを行っている場合は社内体制を書く必要はありませんが、複数人でビジネスをしている場合であれば、社内体制は必要となります。

 事業計画書は、社内向け(実行者向け)でもあり、社外向け(投資家、銀行、補助金をだす省庁など向け)でもあります。

 社内の人にとっては、「自分たちは何をすれば良いか」などの役割分担が明確になり、スムーズに事業計画書を実行できるようになります。社外の人々にとっては、どんなに良いビジネスモデルでも「それを実行できる社内体制かどうか」「もし不都合なことが起きたときに対応できる組織かどうか」などを知りたいからです。

 すなわち、複数の人が介在してそれを実行できるかどうかを判断するためのものです。

 「社内体制」を作成していくには手順があります。

 この事業においてどのような役割分担が発生するか検討します。

 その役割分担をどの部署または誰が行うかを検討していきます。規模が大きければ部署単位となりますし、数人規模であれば個人として誰が行うかを検討します。部署の場合は何人体制なのか、個人の場合であれば個人名まで記入すると、読み手は「この社内体制で実行できるかどうか」の判断がしやすくなります。

 検討した結果、修正が必要であれば修正します。実行できるとなれば、その役割・分担で決定します。

 決定した役割分担を社内体制として文章または図にまとめます。

 以上の手順で社内体制を作成していきます。

 実際に実行するための事業計画書であるので、しっかり検討したうえで決定することが大切です。後から「この体制では実行できなかった」では社内が混乱しますし、社外の人からの信用も失ってしまいます。もちろん、これは計画ですので、実行したときに修正・変更することはあり得えます。そのため、事業計画書に記載したあとに修正・変更できないということではありませんが、初めから混乱を引き起こすような社内体制にはしないほうがよいと言えます。 

 

スケジュール

 事業計画書の中にスケジュールを記載していきます。

 新規事業の場合であれば、スケジュールをしっかり立てないと遅れが出て、予定通り事業がスタートできないこともあります。

 また、スケジュールは自分自身が何をしていくかという確認になります。

 さらに、社内(部下やメンバー)のスケジュール管理にも使えますし、社外の人に依頼・協力を求める際にも使えます。

 スケジュールは表形式を用いて一覧にし、時系列で見ることができるようにすると便利です。

 「いつ、どんなことをしなければならないのか」「いつ、どのようなことが必要なのか」などを表に記入していくことで、スケジュール表ができあがっていきます。

 複数の人が関わっている場合は、「誰が(どの部署が)その作業を行うのか」なども明確にしておくべきです。そうすると、プロジェクト管理の要領で「いずれの作業も遅れがないか」の進捗管理ができます。万が一遅れが出た場合でも、すぐにその担当者(担当部署)に対応を指示・依頼できます。

 このように、スケジュールを一覧にしておくことで、自分のスケジュール管理、事業全体のスケジュール管理ができるのです。

 

補足資料

 「事業計画書」に補足資料を添付することがあります。

 補足資料は大きく分けて2種類あります。

 1つは「事業計画書の中で追加説明があったほうがよいもの」です。例えば、高度な技術の説明などで使われます。エッセンスは事業計画書の中で説明が必要ですが、詳細は補足資料として添付した方が全体の流れとして説明しやすい場合などです。

 もう1つは「会社、事業の概要の裏付けデータ」です。

・商業登記簿謄本

 会社の正式名称や本店所在地、目的、資本金などが記載されています。

・会社定款

 会社を設立したばかりであれば、設立時の目的や事業内容が書かれています。長く会社を経営している場合、定款内容に変更があると商業登記簿謄本に記載されていることもありますので、これら2つは補足資料として添付した方がよいでしょう。

・決算書(法人税申告書控含む直近3期分)

 事業計画書の中では今後の売上や利益の成長性を記載していきますが、その元となる現状の決算状況を伝えるためのものです。

 株主名簿が必要な場合でも、別途必要だと言われない限りは、決算書の中で株主構成が記載されているので代用可能です。

・資金繰り表

 資金調達する場合などは、資金の状況(過去1年分から今後1年分ほど)を伝えることが必要になります。

・月次の試算表

 事業計画書作成時期(提出時)が決算直後であれば不要ですが、決算から数ヵ月たっている場合は直近の月次の試算表がある方がよい。

・役員名簿(略歴含む)

 役員構成も事業の遂行に影響があるので、どのような人がいるのか、どのような経歴なのかを伝えることがあります。

・その他

 営業用資料や会社案内、新聞・雑誌などの掲載記事など

 会社の内容を伝えるために会社案内や営業用資料があれば添付します。

 また、過去に新聞や雑誌などで取り上げられたことがあるのであれば、それを添付するとPRにもなります。

 上記のような、事業計画書の内容を裏付ける資料を添付します。上記以外でも必要なものがあれば添付しておくとよいでしょう。

 

サマリーの作成

 事業計画書がほぼ完成した時点で、その内容を用紙1枚にまとめてみましょう。

 これは事業計画書の要約であり、サマリーと呼ばれます。

 サマリー(要約)は、事業計画書の読み手の立場になると分かるかもしれません。

 事業計画書が何十ページにもわたっている場合、それをすべて読み込むのはとても大変ですし、全体を理解するのに時間がかかってしまいます。よって、最初にサマリーがあれば、その概要を理解したうえで事業計画書を読んでいくので理解も深まります。

 また、投資家や銀行などの融資の判断の場合には、多くの企業の事業計画書を読む必要があるので、詳しく読むかどうかをサマリーを読んで決める場合もあります。

 注意点としては、サマリー自体が長過ぎては「内容を要約する」という目的が達成できませんので、長々と書かずに用紙一枚程度にまとめることです。このときに、事業計画書の中のポイントとなる部分をしっかりと押さえたサマリーにする必要があります。もし分担して事業計画書を作成している場合には、全体を把握している責任者がサマリーを作成するべきでしょう。

 サマリーを入れ込む場所としては、事業計画書の最初の方に綴じることになります。これは読み手が最初の方で読みたいものであるからです。

 なお、サマリーに記載する内容は要約です。事業計画書に書いてきたことをまとめることになります。

 概ね以下の内容になります。

 ・事業についての考え方や経営者の想い

 ・全体戦略、状況の分析、データ

 ・ビジネスモデル、具体的な戦略、戦術

 ・上記を踏まえ数値計画

 サマリーは重要度も高く、事業計画書の総まとめでもあるので、気を抜かずしっかりと作成していきましょう。 

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