目標管理制度を正しく運用する

1 従業員の「自主性」を重んじる

 目標管理制度は、ドラッカー氏も「自主性こそ重要」と説いていました。自ら目標を決め、自律的に努力しながら達成へ向けて取り組むことで、より大きな成長が期待できます。そのため、従業員にノルマや成果を押しつけるのではなく、本人が「こうありたい」と思う姿を実現できるような目標を自分で設定することが大切です。

2 できるだけ具体的な目標を立てる

 目標管理制度では、評価者である管理職の客観的な評価が求められます。そのため、達成すべき目標がより具体的な方が判断も下しやすいでしょう。例えば、「受注件数10件/月」「社内賞を四半期ごとに一度受賞する」など、定量的に示されている方がベターです。従業員自身も達成に向けて努力しやすくなります。

3 高すぎず、低すぎない目標を立てる

 目標管理制度の懸念点として、報酬を上げるために、あえて「達成できて当たり前」な目標を設定する人もいます。ただ、低すぎる目標では、目標管理制度の本来の目的である「従業員の成長」につながりません。そのため、「頑張れば届くレベル」「高すぎず低すぎないレベル」の目標であれば、本人がより強く成長を感じられるでしょう。

4 組織目標と個人目標を結び付けること

 日本労働経済雑誌の調査によると、目標管理制度で従業員のモチベーションを高めるには、「組織目標との関連性」が一つの条件になります。そのため、組織目標を見据えたうえで個人目標を立てることが大切です。そのほうが、従業員としても「自分は組織の中で重要な存在である」と認識でき、達成感を味わいやすいでしょう。

5 成果だけでなくプロセスも評価する

 評価を受けた従業員のなかには、自分がなぜ「A」ではなく「B」の評価なのかと悩む人もいます。目標管理制度は、どうしても客観的な点数だけがあとに残るため、やや冷たい印象を受ける従業員もいるのです。そのため、評価に至った理由も上司が丁寧に説明するようにしましょう。また、フィードバックの際も、「業績的には届かなかったけど、架電数を増やそうとした努力はすごく評価している」といったように、プロセスも褒めてあげることや、従業員がまた次に頑張ろうと思えるように上司が親身にフィードバックすることが大切です。

 

目標管理導入による効果

 目標管理を導入し、機能した場合には、以下の効果を組織にもたらすことができます。

モチベーションの向上

 目標管理を導入すると、従業員はモチベーションが向上し、前向きに熱意を持って仕事に取り組めるようになります。モチベーションの向上によって、個人の発揮するパフォーマンスは高くなるため、結果的に組織全体の生産性を向上させることにもつながります。

 また、仕事に前向きに取り組むことのできる組織を作り上げることができれば、従業員は組織へと定着し、離職率も減らすことができます。

 目標管理がモチベーション向上につながる根拠について、目標管理の提唱者ドラッカーは、アメリカの心理学者であるマズローの「欲求5段階説」とアメリカの臨床心理学者ハーズバーグの「二要因理論」を用いて説明しています。

マズローの「欲求5段階説」

 マズローの「欲求5段階説」とは、心理学者アブラハム・マズローが「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」とし、人間の欲求を階層的に5段階に理論化したものです。以下がズローの欲求5段階説の図です。

マズローの「欲求5段階説」

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