相対性理論

「特殊相対性理論」(1905年)   「一般相対性理論」(1916年) 

 

空間と時間

 

 古典力学においては、空間と時間は互いに全く独立した絶対的なものと考えられていた。空間は、宇宙に一様に広がった均一のものと考えられていたし、時間は、宇宙のすべての場所、すべての物体に対して同じ速さで進む 一定不変な一様な流れと考えられていた。相対性理論は、このような考えが正しくないことを明らかにした。時間と空間は互いに関係しあっており、運動と空間や時間との間には深い関係性があるのです。

 相対性理論の出現により、物理学の根底となっている時間、空間という概念が再構築され、「時空」と呼ばれる構造の一部分に組み込まれた。それにともなって、従来の物理学は書き替えられたのです。

 ニュートン力学によれば、「絶対時間」と「絶対空間」が存在するとされていた。

 1861年、光は電子波の一種であるとマックスウェルによって説かれ、「光は宇宙を満たすエーテルを伝わる波であり、速度は秒速30万km」とされた。

 

ニュートンのどこでも均一に進む「絶対時間」

  時間は常に一定の速さで流れる

 クリスチャン・ホイヘンスが1656年頃振り子時計を完成させ、その後、より正確な機械式時計が普及するにつれて、「時間は常に一定の速さで流れる」という概念が定着していきます。それを常識として一般に定着させたのが、イギリスの科学者アイザック・ニュートンです。

 1687年に発刊した「自然哲学の数学的諸原理」という本で導入した概念は、宇宙のどこに置かれていても、すべての時計は、無限の過去から無限の未来まで変化せずに同じペースで同じ時間を刻む。そして、空間はどこも均質で、無限に広がっているというものでした。この「絶対時間」と「絶対空間」をもとに打ち立てたのが、いわゆる「ニュートン力学」で、その後の科学者に大きな影響を与えました。

 後に、アインシュタインによって、非常に高速に移動している時のような特殊な環境下では、必ずしもこの考えが成り立たないと否定されてしまいますが、時間の概念を科学的に定着させる上では最も有名な理論で、現代人の時間観には未だこの考え方が支配的です。

 

相対性理論以前の物理学

 ファラデーが電磁気学に関する主要な法則を発見し、1864年にマクスウェルが電磁気学の法則を4つの方程式にまとめたマクスウェル方程式を発表しました。マクスウェルはその方程式から電磁波の存在を予言しました。そして、光が電磁波であることを示しました。このことは物理学の歴史において非常に重要な意味を持ちます。ニュートンの時代、光が粒子なのか波動なのか、論争がありました。ニュートンは光の粒子説を唱え、ホイヘンスは波動説を唱えました。粒子と波動は物理現象として根本的に異なるものです。粒子には実体がありますが、波動は媒体を伝わっていくエネルギーで実体はありません。全く異なる物理現象です。ニュートンの時代以降、ヤングやフレネルの実験により光は波動であることが次々と示されました。光の干渉、回折が発見され、さらにマクスウェルによって光が波動であることが決定的になりました。しかし、ここで大きな問題にぶつかります。光は真空中でも伝播します。光が波動ならば、媒体は何か? そこで考え出されたのがエーテルです。光はエーテルを媒体として伝播していくと長い間考えられていました。エーテル説を初めて唱えたのはニュートンの論敵フック(「フックの法則(バネの法則)」で有名)です。

 1887年、マイケルソン・モーレーによって、エーテル説を確認するための有名な実験が行われました。しかし、エーテルの存在は確認されませんでした。それでも、光が波動であることは疑いようのない事実ですから、当時の物理学者は大いに悩みました。

ローレンツ変換の発見

 特殊相対性理論では、ガリレオ変換に代わるローレンツ変換が出てきます。しかし、このローレンツ変換を初めて導いたのはアインシュタインではありません。物理学者ヘンドリック・ローレンツは、電磁気学の分野を中心として、固体電子論や様々な分野で実績を出しました。1902年、ゼーマン効果の電磁気理論でノーベル賞を受賞しています。ローレンツは、マイケルソン・モーレーの実験の実験事実とエーテルの存在が矛盾しないように、約10年という年月をかけて懸命な努力をしました。そうして生まれたものが「ローレンツ収縮」と「ローレンツ変換」です。電磁波が波動である限り、どうしてもエーテルの存在を捨てることができなかったのです。ローレンツは、マイケルソン・モーレーの実験で、エーテルが確認できなかった理由として、エーテルの中を運動する物体(測定装置)が収縮したためであると説明しました。これが「ローレンツ収縮」です。物体の長さが短くなること自体、経験的に受入れがたいことなのですが、ローレンツはエーテルによる力によって物体が収縮したのだと考えていたようです。ローレンツ収縮から生み出されたのが「ローレンツ変換」です(1904)。しかし、ローレンツ変換にはどうしても受入れがたい問題がありました。物体と一緒に運動する系の時間が静止系に比べて「時間の進み方が遅くなるという」ことが導かれるのです。

 数式の意味するところが、あまりにも私達の経験とかけ離れているために、ローレンツは自ら発見した時間の変化を「局所時」と呼んで、単なる数学的なテクニックにすぎないと、割り切ってしまったのです。

 同じ頃、ローレンツの論文を知り、同様なことを考えていた数学者がいます。有名な数学者ポアンカレです。ポアンカレは、ローレンツ短縮を力学的なものと考えてはいなかったようです。また、局所時や相対性原理の重要性に気づいており、特殊相対性理論にかなり近いところまで達していた。アインシュタインがいなくても、いずれポアンカレが特殊相対性理論を発表していたかもしれません。

エーテルの存在意義

 ところで、エーテルの存在は、電磁気学だけでなく、ニュートン力学においても重要な意味を持ちます。ニュートンは絶対空間という特別な静止系を仮定しています。ニュートンの運動方程式が成立つような系(静止しているか、等速直線運動している系を慣性系という)においては、果たして慣性系にいる人が静止しているのか、等速で運動しているのかは区別つきません。これを「ガリレイの相対性原理」と言います。しかし、ニュートンの運動法則が適用できないような系、即ち加速度運動している系(非慣性系)もあります。様々な系が存在するのは何故か? そもそも運動しているか、否かをどうやって見極めるのか? 最終的に、ニュートンは運動しているか静止しているか、基準となる絶対静止系である絶対空間を仮定する必要があることに至りました。この絶対空間の存在については、ニュートンの時代以来、ずっと議論が続いていました。

 光が波動である証拠が見つかると、光はエーテルを媒体として伝播すると考える以上、エーテルは宇宙に充満しているはずであり、エーテルこそ絶対空間の候補として考えられていたのです。こうして、光が波動である事実によって絶対空間の存在が必要となったのです。しかし、このことは、ニュートン力学にとっては不都合なことがありました。これまで、光の速度を測定した測定結果とマクスウェルによって示された光の速度は、光の方向に依らず、一定速度を持つことが示されていたからです。しかも、マイケルソン・モーレーの実験でもそのことが確認されたのですから、ニュートンの速度合成則が成立たないことになり、電磁気学はニュートン力学と矛盾することになります。ニュートン力学は、座標変換としてガリレイ変換を前提にしていますが、電磁気学はローレンツ変換に従うのです。

 

閉じた宇宙モデル

 2つの相対性理論を完成させたアインシュタインだが、宇宙をどう考えたのでしょうか。

 まず、アインシュタインは宇宙の果てを考えた。地球と同じように大きな球形をイメージします。その球形は有限の大きさである。そして、どこかから右へ行くとどうなるか? もとのところに戻る。では上に行けば? 北極を回って、南極を回ってもとに戻る。果てはないけど有限な宇宙。これが閉じた宇宙のモデルである。

 しかし、アインシュタインが自身の相対性理論でもう一度計算してみたところ、縮んでしまうことがわかった。重力によって、お互いに引き合ったのである。そこで、宇宙がツブれないように、自身の方程式に反重力つまり斥力を付け加えた。「宇宙項」 Λ ラムダといわれるものである。アインシュタインは、これを「我が生涯最大のあやまり」として、後にこの Λを アインシュタイン方程式からはずした。そこがアインシュタインの時代の限界であった。

 膨張宇宙が理論化されたのは、1927年のハッブルの観測からで、今の宇宙論は全てこの観測のところから書き始めた。

 アインシュタインは、静的宇宙と考えたから宇宙が潰れるという答えがでてしまい、Λ項問題にはまったが、膨張の途中であるなら Λ項がなくても潰れない。膨張宇宙の起源を理論化したのがビッグバン理論。膨張宇宙もビッグバン理論も相対論的宇宙論と言われている。

 

相対性原理と光速度不変の原理

 すべての運動速度は、さまざまな慣性系ごとに相対的に異なる値をとるという意味で「相対速度」という言い方をします。 

 無数・無限にある慣性系たちの中で、絶対基準となる静止した慣性系ってあるのでしょうか?

 このような疑問を解決するために、1887年、米国でアルバート・マイケルソン氏とエドワード・モーリー氏という物理学者によりある実験が行われました(マイケルソン・モーリーの実験)。当時、光は何かの波動であることは知られていましたが、その波動媒質と地球との相対速度を検出するのが実験の目的でした。

 波動の媒質とは、波が伝わるために振動するものをいいます。音なら空気、糸電話ならピンと張った糸、池の波紋なら水面にあたります。

 この実験では、光の波動媒質と地球との相対速度は検出されませんでしたが、次の2つのことが判明しました。

・「相対性原理」

 絶対的基準となる静止した慣性系を定義することはできず、すべての慣性系は相対的なものである。そしてどの慣性系においても同じ物理法則が成り立つ。

・「光速度不変の原理」

 どのすべての慣性系で観測しても、真空中の光速度 C は同じ。

 これら2つの原理は相対性理論の大前提になっています。

 

「光」に関する奇妙な現象

この世で最も速いものは光である

  「光速は一定であり、この世で最も速いものである

 ただ、この世はほとんどのものが「速度が変化する」のは当たり前のことだったので、どうにかして光の速さが速くなったり遅くなったりしているところを観測できないか、という研究が行われていました。その過程でエーテルなる物質が考案されました。

 結局、10年、20年しても光速が変化する様子は確認できませんでした。

 そのような時登場したのが アインシュタインです。彼は、発想を転換させて、こう考えてみることにしました。

 「もしかして、光は速度が一定なのでは」 これを仮定して、いろんな理論を積み上げていきました。それこそが相対性理論なのです。

 光速がこの世の中で最も速いということは、ロケットがどれほど加速をおこなっても、光の速さまでは加速できないということになります。

 光の速度の近くで どのようなことが起きているかというと、物質がどんどん重くなっていることが知られています。

 

光の速度よりも速く動けるものはない

 光の速度よりも速く動けるものはないということです。光というのは1秒で地球7周半ほど進める速さです。これはものすごい速さですが、無限に速いわけではありません。

 将来、いくらテクノロジーが発達して、ものすごい速さの新幹線やロケットができたとしても、それは光の速さを超えられないのです。

 

光の速度に近い速さで動くものは縮んで見える

 光の速さに近い速度で飛んでいる物質は、周りからみて「縮んで」見えます。

 私たちの日常生活でもこの「空間の伸縮」は起こっているのですが、変化が微妙すぎて目に見えないだけなのです。

 なぜ縮んでいるかというと、「光速が一定」だからです。

 光の速さで動く電車の中で、進んでいる方向に野球ボールを投げたら、光の速度以上になりそうな気がします。それが光の速度以上にならないのは、実はこの「空間が縮んでいる」おかげなのです。

 あるロケットの図をイメージしていただきます。左側ではロケットは止まっているとします。右側ではロケットが光の速度に近いスピードで飛んでいます。光の速さより速く飛ぶことはできません。

 すると、右のロケットは止まっているときよりも縮んで見えます。このロケットは横に動いているので、縮むのは横方向のみです。縦方向には縮んでいるように見えません。目に見えるぐらい縮んで見えるには、光の速度に近い速さで動く必要があります。

 

 

光の速度に近い速さで動くものは時間が遅く流れる

 19世紀末のことです。科学者達はある奇妙な問題に頭を悩ませていました。
それは「光の速度」に関する問題でした。当時、光の速度は秒速30万キロメートルだということが分かっていました。

 科学者達は次のようなことを考えました。

 地球は太陽の周りをまわっているので、宇宙空間をかなりの速度で進んでいる。進んでいく方向を前とすると、前から飛んでくる光と後ろから飛んでくる光とでは、速度が異なって観測されるはずだと。

 例えば、自分が時速100キロで走る自動車に乗っていて、前から時速120キロで走ってくる自動車とすれ違うと、自分から見ると、100キロ+120キロ=220キロ の速度ですれ違ったように見えます。逆に、後ろから時速120キロで追ってくる自動車がいたら、自分から見ると、120キロ-100キロ=20キロ の速度で近づいてくるように見えます。自分が走っていると、同じ120キロの自動車も、前から来る場合は速く、後ろから来る場合はゆっくりと見えるのです。

 科学者達は、飛んでくる方向によって光の速度が異なって観測されるはずだと予想し、実験を行いました。しかし、実験の結果、地球の進む方向から見て、前から飛んでくる光も、後ろから飛んでくる光も、速度はまったく変わりませんでした。

 これはいったいどういうことなのでしょうか? この結果は、地球が宇宙空間で静止しているとでも考えないと説明がつきません。しかし、そんなはずはないのです。

 何か実験に間違いがあるのではないか? しかし、いくら調べても実験に間違いはありませんでした。長年、科学者達はこの問題を解くことができませんでした。

 そして、20世紀初め、アインシュタインがこの問題を解決する新しい理論を発表したのです。それが「相対性理論」だったのです。

 アインシュタインはこう考えました。観測者が止まっていようと、どんな速度で動いていようと、どの方向に進んでいようと、光は同じ速度に見える。これは実験の間違いなどではなく、この宇宙の基本的な原理なのである。それを認めよう。そしてこの原理から全てを考え直そうと。

 アインシュタインは、この原理を「光速度不変の原理」と名付けました。

 しかし、この「光速度不変の原理」は、とんでもなく奇妙な原理なのです。

 秒速30万キロで光が飛んでいるとします。地面の上で止まっている人がその光を見ると、当然、秒速30万キロに見えます。一方、超高速ロケットが秒速20万キロで光を追いかけ飛んでいるとします。このロケットから光を見ると、普通に考えると、30万キロ-20万キロ=10万キロ に見えるはずです。ところが、「光速度不変の原理」では、秒速20万キロで光を追いかけているロケットから見ても、光は秒速30万キロに見えるというのです。
この常識がクセ者だったのです。多くの科学者達は無意識のうちにある常識にとらわれていたのです。その「常識」とはいったいなんでしょうか?

 動いているモノの「速度」とは、それがある距離をどのくらいの「時間」で進んだかによって決まります。

 速度は、 速度 =(進んだ「距離」)÷(進むのにかかった「時間」) によって計算できます。

 「時間」は「速度」を計算する基準となっていて、「時間」と「速度」は密接に関係しているのです。

 「光速度不変の原理」では、観測者がどんな速度で動いていても、観測者から見える光の速度は常に不変とされています。全然つじつまが合わないように思えます。

 そこで、アインシュタインはあるアイデアを思いつきました。

 「速度」を計算する基準となっている「時間」をどうにかすることによって、つじつまを合わせることができるのではないか?

 そのアイデアに基づき、研究を進めていった結果、次のような結論が導かれたのです。
 高速で移動する乗り物の中と止まっている場所とでは、時間の進み方がまったく変わってしまう。乗り物の速度が速くなればなるほど、時間はゆっくりと進むようになる。光の速度に近づくと、時間はほとんど止まってしまう。

 どんな速度で移動する乗り物から見ても、光の速度が変わらないように見えるのは、「速度」の基準となっている「時間」の進み方が変わるからである。光の速度が一定になるように、「時間」の進み方が変化する。

 これは、今までの常識をくつがえす驚くべき考えでした。アインシュタインは、「光速度が不変」という一見矛盾した現象を、速度の基準となる「時間」の進み方が変わると考えることで、その矛盾を解いたのです。

 アインシュタインは、さらに考えを進め、速度によって時間の進み方が変わるだけでなく、物体の長さも変わっていくという結論を導き出しました。速度が速くなると、物体の長さが縮むというのです。

 これらの結論によって、一見奇妙な「光速度不変の原理」を完全に矛盾なく説明できたのです。アインシュタインはこの内容を完璧に数式で理論化しました。それが「相対性理論」なのです。

 もちろん、我々が日常で使う乗り物の速度程度では、ほとんど時間の進み方の変化はありません。しかし、光に近いほどの超高速になると、本当にこのようなことが起きるのです。
 超高速で飛ぶ人工衛星の時計と、地上にある時計の時刻を比べてみます。すると、ごくわずかですが、相対性理論で計算したとおりに時刻がずれるのです。

 一見、常識はずれな内容の「相対性理論」。しかし、今では数々の実験で その正しさが証明されています。

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