超ひも(弦)理論
ひも理論(弦理論)
物質は粒子でできているのではない。宇宙は目に見えない ひも が奏でる色々な音(波動)から出来ている。これを「ひも理論(弦理論))と言う。
素粒子は自然界の基本粒子ですが、普通、空間を動いている「点」だと思われています。それを一次元的に広がった「ひも(弦)」で置き換えようと言う考え方が「ひも理論」です。
ひも の大きさは 10-35m といわれ、原子 の大きさの 10-10m と比べて とてつもなく小さいものです。
その ひも は、通常点粒子に見えます。ところが、ミクロな世界に行くと素粒子がひもに見えてきて、そこでは色々な法則が知られている形からずれてくるのです。
特にミクロな世界での重力の理論には、適切な理論がなかった。アインシュタインの一般相対性理論は、星の運動や銀河系の構造などマクロな世界の重力の理論なのです。しかし、宇宙の歴史を遡ると、宇宙がどんどん潰れて行って、最後は非常に小さな空間に宇宙の全質量が押し込められたような状況になります。そういうミクロな世界に物凄い重力があるような状況を物理の理論で調べられるようになりたいという希望がありました。
ミクロな世界を扱うには、量子化した理論を作らなくてはなりません。ところが、一般相対論は量子化してみると矛盾がいっぱい出てきます。不確定性原理というのがありますが、一般相対論に適用すると、時間や空間がふらふらとして確定しなくなります。これがミクロの世界では酷くなり、最後はふらふらが無限大になって手に負えなくなります。
素粒子を「ひも(弦)」と考えることで、それまでの理論では説明できなかった難題が解決しました。例えば、粒として素粒子の持つエネルギーを計算すると、実際には有限の値を持っているのに、無限大という結果が出てしまっていた問題をクリアしました。
素粒子において、基本的な力として、重力・電磁気力・強い力(陽子と中性子を原子核に閉じこめる力)・弱い力(放射性崩壊を起こす力)があります。すべての相互作用はこの四つの力の組み合わせなのです。宇宙誕生時には4つの力が同じで一つであったという「大統一理論」でした。この4つの力は宇宙の始まりのときには4つ子の兄弟のように、同じようなものだったと考えられている。素粒子が存在しても、その間に力が働かなければ素粒子同士が結び付かず、物質は存在できません。宇宙が始まってから時間が経つとともに重力が分かれ、その後、強い力、弱い力、電磁気力の順に分かれ、そのたびに物質が形作られていったとされている。電磁気力、強い力、弱い力の3つは同じ原理(量子力学)で理解できますが、残りの1つの重力は、異なる原理の力のように見えます。
「ひも理論」では、物質と力の素粒子は「ひも」の振動の現れであり、振動のパターンによって、その種類が違ってくると考えています。この「ひも」は私たちの住む4次元時空ではなく、もっと次元数の多い時空にしか存在できない。4次元時空を超えて存在する次元を「余剰次元」と呼ぶ。重力を担う素粒子のみが、この余剰次元と私たちの4次元空間とを行き来できる可能性があります。
超ひも(弦)理論
「ひも理論」は、もともとハドロンを記述するために作られたのだが、失敗した。しかし、その欠点を補って、長所を残したのが「超ひも理論」です。これによって、微小領域での一般相対論(重力)と量子論(不確定性)との矛盾を解決できるわけです。
「超弦理論」は、「ひも理論」と「力」と「物質」を統一する「超対称性理論」が合体してできあがりました。
超弦理論の5つのバージョン
超弦理論が1980年代に物理学界で話題になると研究が急速に進み、超弦理論は5つの異なるバージョンに発展した。「I型」「ⅡA型」「ⅡB型」「ヘテロSO(32)」「ヘテロE8×E8」と呼ばれる。これらの5つのバージョンを統合するのがM理論である。M理論は特にⅡA型超弦理論の強結合極限として定義され、さらにこれらすべての超弦理論が双対性によって互いに繋がっていることが示唆されたため、超弦理論よりも根源的な理論と考えられている。ここでの双対性とは、弦の強結合領域と弱結合領域を関係付けるS双対性(strong-weak)、空間の極大領域と極小領域を関係付けるT双対性(target-space)、S,T双対性を結びつけたU双対性(unified)である。特に、T双対性は極大領域における弦の振動モードと極小領域における弦の巻きつきモードを対応付けるものであり、小さい領域に巻きつくという弦特有の(点粒子には無い)性質が反映されたものになっている。
この5つの超弦理論は理論の整合性のため10次元時空が必要である。空間の3次元に時間を加えた4次元が、我々の認識する次元数である。我々が認識できない残りの6次元は、量子レベルでコンパクト化され、小さなエネルギーでは観測できないとされる。
ロンドン大学クイーン・メアリー校の天文学者バーナード・カー教授が、「我々の意識と通じる別の次元が存在する」と主張している。
アインシュタインは相対性理論において「4次元」を想定した。そして、現代の物理学の最先端をいく「超弦理論」では、この世界には、縦・横・高さ・時間の4つの次元のほかに6つの次元があるとして、宇宙は10次元でできていると考えます。(1984年 超弦理論の登場)
生まれたばかりの宇宙は10次元で、全ての力と素粒子は1種類の振動する ひも であり、宇宙誕生後このうちの6つの次元が超極微細に縮み、残りの3次元が空間、1次元が時間を形成した。その後、超統一力から重力が分化、残った大統一力から強い力が分化、電弱統一力から電磁気力と弱い力が分化したとされている。
カラビ・ヤウ空間
我々が認識できるのは 3次元の空間と時間の次元だけである。超弦理論ではこの世界は空間の9次元と時間の1次元、計10次元の時空で構成されているとされる。このうち、我々が認識できるのは3次元の空間と時間の1次元だけである。残りの6次元(余剰次元)はどうなっているのかといえば、小さく折りたたまれて「コンパクト化」されていると考えられている。それがどのような形をしているのかというと、「カラビ・ヤウ多様体」という非常に複雑な形状をしているとされている。
カラビ・ヤウ多様体は、代数幾何などの数学の諸分野や数理物理で注目を浴びている特別なタイプの多様体。特に超弦理論では、残りの6次元(余剰次元)がカラビ・ヤウ多様体の形をしていると予想されている。この余剰次元の考え方が、ミラー対称性の考えを導くことになった。カラビ・ヤウ空間は非常に小さく、人間にはとても知覚できない。4次元から10次元までの余剰次元は、プランクの長さ(10-35m)程度に縮んでいるとされ、また、非常に複雑で難解な空間で、多くの謎に満ちている。しかし、この空間のおかげで、10次元の超弦理論を用いて我々の3次元空間を説明できるようになりました。
1984年、グリーンとジョン・シュワルツによって、10次元の超重力理論および超弦理論でアノマリーのない理論が存在することが示されると、超弦理論は脚光を浴びるようになった。 特に、E8×E8 のゲージ場を含むヘテロティック超弦理論において、理論の定義される10次元のうち余分な6次元をカラビ・ヤウ多様体でコンパクト化した理論は、低エネルギーで超対称性を持つ理論が導かれ、重力を含む統一理論の候補として盛んに研究された。
大きなスケールでは量子力学は無視できて、重力が支配するので、一般相対論だけで片が付くし、小さなスケールでは重力は他の力に比べて無視できるので量子力学だけで議論できる。しかし、更に小さな領域になると、重力は発散して非常に大きくなるので、両方を考慮しなくてはならない。しかし、この2つは空間についての考え方が根本的に異なるから、相容れないのである。重力がうまく計算できるためには滑らかな空間軸があって、その空間の歪みを計算できなくてはならないのに、量子力学的にはそもそも空間座標そのものに不確定性が必要となるから重力の計算が発散する。ひも は質点ではなく、有限のサイズを持ち、しかも振動しているから、重力が発散しないのである。超ひも理論では、時空が10次元であれば、全てが破綻することなく説明できるのである。余剰次元にカラビーヤウ多様体を想定することで、超対称性を保証している。
ところで、「超ひも」の「超」が意味しているのは「超対称性」であって、ここでも普通の対称性よりも強い概念が導入されて道具立てが拡張されているのである。対称性は、現代物理学では欠かすことのできないきわめて重要な概念である。二つのものの間に違いがなく、 同じ法則が成り立つことが対称性である。そして、これは力の統一理論の要とも言うべき概念である。というのは、低い温度では違いのあった別々の力が高い温度で統一されるということは、対称性が回復するということにほかならないからである。
超ひも理論は現在もっとも有望な理論と考えられているが、弱点は現実的に測定できないエネルギー領域を記述している点である。
固有振動モードは無限にあるわけであって、それぞれが粒子に対応するのである。したがって、非常に多くの超ひも理論の可能性があるのだが、どれが正しいのかを決定する手段がない。(初期量子論で、原子に閉じ込められた電子について、その軌道内で波動を考えてその固有振動に相当するエネルギーに離散化される、とボーアが考えたのだが、ひも理論も同じ発想である。)
ところで、「超弦理論」では、力の統一をするためには10次元の「時空」が必要だと主張します。ところが、ひも理論はその後「M理論」に発展します。宇宙は10次元でもあり、11次元でもあるとされました。「低エネルギーでは10次元超ひも理論と11次元超重力理論は実質的に同じ、双対性がある」と言う。重力も含めた11次元の超対象理論、すなわち、超ひも理論と11次元の超重力のどちらも含有するという 11次元理論であるということなのです。
メンブレン理論では、宇宙誕生時の素粒子の姿を ひも状ではなく、2次元の膜が縮まり、管状になったひもの姿として提示している。(1995年 M理論の登場)
このことから、生まれたばかりの宇宙は11次元の宇宙であるとされている。
この理論によって、超統一理論が導き出される可能性も見いだされた。物理学会でもっとも注目されている理論である。
この世界では、カルツァ-クラインの高次元理論から導き出される、素粒子が6次元の内部空間を持ち、余分な次元が超極微細に縮んで素粒子の内部空間になったという説は否定される。
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