素粒子

物体の運動を表すニュートン力学

 私たちが普段目にする物体の運動は、ニュートン力学ですべて説明がつきます。「地球とリンゴの間に働く力(万有引力、重力)は、太陽や地球、月など、遠く離れた天体同士にも働いている」と考えたニュートンは、それまで謎だった天体の動きを次々と解明したのです。

 古典物理学の本格的な始まりは、1665年にニュートンが リンゴが木から落ちるのを見て万有引力の法則をひらめいたことでした。リンゴと地球の間に働く引力が、太陽と地球の間など、天体にも働いているという発見です。

 その後、私たちの目に見えている物質は、非常に小さな原子が集まってできており、その原子は原子核と電子でできていることが分かってきました。この原子核をもっと細かく見ていくと、陽子、中性子、それをさらに分解していくと クォーク になります。クォークや電子などが、物質の最小単位である「素粒子」だと言われています。

 この素粒子は、物質として現れたり、重さを持たないエネルギーになるなど、私たちの目に見える物質では考えられないような性質を持っています。

 

新粒子の発見

 自然界にはたくさんの粒子が存在する。やがて陽電子が発見され、中間子が登場し、ニュートリノが現れてくるにつれ、自然界の構造の妙があやしくなってきた。それに追いうちをかけるように、続々と新しい粒子が発見されてきた。現在までに発見された素粒子は、200種類以上にものぼる。万物のもとになる究極的な構成要素と期待されてつけられた「素粒子」という言葉も、「原子」と同様、現在では当初の意義を失った。

 原子の構成要素が分かると、次の問題は、「原子核には、プラスの電荷をもつ陽子が集まっているのに、なぜ反発しあってばらばらにならないか」ということであった。この答えを1934年に見出したのが湯川秀樹であった。ベータ崩壊の際にはニュートリノという粒子も同時に生まれており、陽子と中性子は電子とニュートリノを放出したり吸収したりすることで、お互いに移り変わっているのである。陽子と中性子の間で、電子とニュートリノのやりとりをしているとき、陽子と中性子は互いにそばにいる必要があり、それは「陽子と中性子の間に力が働いて、近くにいる」と考えた。しかし、電子とニュートリノのやりとりだけでは、陽子と中性子の間に働く力は小さすぎるとわかった。そこで、まったく新しい粒子の存在を仮定し、その粒子が陽子と中性子の間だけでなく、陽子同士や中性子同士の間でもやりとりがされていると考えた。この粒子を中間子と名づけた。当初、この中間子理論は受け入れられなかった。しかし、アンダーソンが、1937年に宇宙線の中から中間子とほぼ同じ質量をもつ粒子を見つけた。宇宙線とは、宇宙空間を飛び回っている大きなエネルギーをもった粒子で、原子の原子核がその正体である。この粒子が地球の大気と衝突すると、多数の粒子や電磁波が地表に降り注ぐ。その中から、アンダーソンは「霧箱」という装置を使って中間子と思われるものを発見した。しかし、この粒子を詳しく調べると、中間子とは異なっていた。そのため、この粒子はミューオンと呼ばれた。中間子は1947年にパウエルによって宇宙線の中から発見された。中間子以外にも存在が予言されている粒子があった。それがベータ崩壊から予言されたニュートリノであった。ベータ崩壊においてエネルギーと運動量が保存がされていないことから、パウリは、ベータ崩壊をする際に電荷を持たない未知の粒子が飛び出すと考えた。そして、この粒子は質量がゼロである、あるいは観測できないくらい小さいとし、ニュートリノと名づけた。また、ニュートリノは、他の粒子や物質と出会っても反応せずに素通りするので、その検出・発見は不可能であると考えられた。

素粒子の性質

素粒子の質量

                  単位 百万電子ボルト(MeV)

粒子の名前

質量

 

ク ォ | ク

アップ

ダウン

ストレンジ

チャーム

ボトム

トップ

120

1200

4200 174000

 

レ プ ト ン

電子ニュートリノ ミューニュートリノ

タウニュートリノ

電子

ミュー タウ

~0

~0

~0

0.5

106 1777

 標準理論では、ビッグバン直後には、全ての素粒子が、何の抵抗を受けることもなく真空中を自由に運動できていたと考えます。つまり、全ての素粒子に質量がなかった時代です。しかし、ビッグバンから、10-13秒過ぎたころに、真空の相転移が起こり、真空がヒッグス粒子の場で満たされてしまったと考えられます。

 中間子やミューオンの発見やニュートリノの予言を通して、物理学者たちは原子核内では2種類の力が働くと考えるようになった。一つは「強い力」で、原子核内で陽子や中性子を固く結びつける力であり、10-22秒~10‐23秒という短い時間で作用する。もう一つは「弱い力」で、ベータ崩壊時に働き、15分程度の長い時間で作用する。この2つの力に、重力と電磁力を加えたものを「4つの力」と呼び、自然界のあらゆる力はどれかに分類されるとされた。

 

素粒子に働く4つの力

 自然界には四つの基本的な力(相互作用)がある。それは、重力(万有引力)、電磁力(電気力と磁気力)、強い相互作用の力、弱い相互作用の力の4つである。

重力

 ニュートンが発見した、重さのあるものすべてに働く力。ただし、重さが小さい素粒子の世界では、他の3つの力に比べてとても小さい。

電磁気力

 電灯を明るくしたり、磁石が鉄を引き付ける力。私たちの生活に密接に関係している。

強い力

 クォークや陽子、中性子を結び付ける力。原子核の中など短い距離でしか働かないが、4つの力の中で一番強い。

弱い力

 素粒子の種類を変える力。核分裂反応のときに働くもので、原子力発電などで利用されている。

素粒子に働く4つの力 詳しく

力の「大統一」

 20世紀の素粒子物理学の研究により、物質は6種類の「クォーク」と6種類の「レプトン」と呼ぶ最小単位の粒子からできていることがわかりました。また、それらの間に働くのは、「電磁気力」「強い力」「弱い力」「重力」の4種類の力であることが分かりました。しかし、物理学者たちは4つでもまだ多いと考えています。これは、アインシュタインも晩年の30年間この研究に挑戦し続けたという、素粒子物理学の大きな課題です。  1967年、ワインバーグとサラムが、「電磁気力」と「弱い力」を統一することに成功しました。宇宙誕生直後のようにエネルギーの高い状態では、2つの力の強さも及ぶ範囲も同じだったことが明らかになりました。次に素粒子物理学がターゲットにしているのは、この「電弱力」と「強い力」を統一する「大統一理論」です。  この理論を構築するためには、先端加速器による実験が欠かせません。

 

物質で満たされている世界

 現在の宇宙は物質(陽子・中性子・電子)でできており、その反物質(反陽子・反中性子・陽電子)はごくわずかにしか存在しないことがわかっています。現在のような物質過剰の宇宙になるには、宇宙の歴史の初期において、100億個に対して1個の割合で物質が反物質より過剰に生成されるというアンバランスが生じたはずです。そのためには、物質と反物質との間の対称性(CP対称性)が破れていることが必要です。  まだクォークが3種しか知られていなかった1973年に、小林誠・益川敏英の両博士は、CP対称性の破れが起きるためには、少なくとも6種のクォークが必要であるという理論を提唱しました。近年、KEKB加速器のBelle実験と米スタンフォード線形加速器センター(現SLAC国立加速器研究所)PEP2加速器のBabar実験が、CP対称性の破れを検証し、両博士は2008年のノーベル物理学賞を受賞しました。しかし、物質過剰宇宙の謎を解くためには、より高いエネルギーでのCP対称性の破れと、物質過剰を引き起こす素粒子反応の解明が必要です。大型ハドロンコライダー(LHC)、国際リニアコライダー(ILC)での実験が待たれています。

 

加速器の進歩

 ミューオンや中間子の他にも、素粒子が存在するかもしれない。しかし、宇宙線を観測したのでは時間がかかりすぎる。そこで、考え出されたのが、人工的に素粒子を作り出す「加速器」である。加速器の原理は、電子や陽子など電荷をもった粒子に電圧をかけて加速して、大きな速度で他の粒子に衝突させることで、様々な素粒子を生み出すと言うものである。現在までに加速器は進歩し、素粒子物理を発展させた。

 原子や電子など小さな世界では、私たちの普段の感覚とは違うことが起きています。それを表しているのが量子力学です。「光や電子は、粒でもあり、波でもある」というのが、この世界の常識です。

 素粒子を見つける実験には、「加速器」という装置が使われます。筒の中で陽子などを飛ばして加速し、光の速さに近づけて正面衝突させると、陽子がバラバラになって素粒子ができるのです。

 陽子と陽子を正面衝突させて、飛び散った粒をすべて観測します。すると、もともと知られている クォーク のほかに、未知の素粒子があることが分かりました。その1つが ヒッグス粒子 です。

 小さな陽子とはいえ、光速近くまで加速するのは大変です。そこで、科学者たちは、2008年に1周がJR山手線ほどもある大型ハドロン衝突型加速器(LHC)という実験装置を、スイスのジュネーブ郊外に完成させました。

 スイスのジュネーブ郊外、地下100メートルには、素粒子を加速して衝突させる「加速器」があります。円周状のトンネルの長さは、およそ27キロメートルあり、山手線の34キロメートルに迫る大きさです。これだけ大きなものを作って、はじめて ヒッグス粒子 が発見されたのです。

 重力子は重力を伝える素粒子のことで、存在が予言されていますが、まだ見つかっていません。加速器で粒子同士をぶつけた後で、もし重力子が見つかり、それが減っていることが分かれば、重力子が他のブレーンにワープしていることが分かります。

 

物質は波であり、粒子である  「粒子と波の二重性」

 物を見るためには光を当てなければならない。そして、物の位置と速度を正確に測るためには、光が当たっても相手の状況に変化のないことが必要である。日常われわれの見ている物質の場合には、観測による影響はほとんど無視することができるので、この条件が満たされていると考えてよい。ところが、素粒子くらいの小さなものになると、その辺の事情が変わってくる。物体の位置の測定精度は光の波長に依存するので、正確に測定するためには波長の短い光を使う必要がある。波長(λ)の短い光とは、振動数(f)の大きい光として、エネルギー(E=hf)の大きい光であり、運動量(P=h/λ)の大きい光子である。光を当てるというのは光子をぶつけることでもあり、光子は運動量をもっているから、ぶつけられた瞬間に相手の速度が変化してしまう。原子より小さい世界では、観測は必然的に一つの粒子とほかの粒子との相互作用を意味し、その相互作用が両方の粒子の運動をかき乱す。そこで、できるだけエネルギーの小さい光子、つまり、波長の長い光を使うことにする。そうすると、今度は回析という波の現象が著しくなって、粒子の正確な位置が測れなくなってしまう。このような性質は、単なる測定上の問題ではない。たとえば原子核の周りを回る個々の電子は、一定の位置と運動量をもって定められた軌道の上を走っているのではない、ということを意味している。  

 素粒子は粒子であると同時に波動である。そして、粒子の概念と波動の概念の間には根本的な相違がある。粒子は空間の一点に限定されるが、波動はそれができない。波が極めて広い範囲に広がることができるのに対し、粒子は小さな領域に限定される。波動を空間のごく小さな領域に押し込めようとすると、波動を記述するために必要な変数の値が不正確になる。量子はその波動性のために先天的な不確定さを持っており、そのために二元的な精密な測定が原理的に不可能なのである。  個々の素粒子は、観測と観測との中間では波のように行動し、観測されたときは粒子として現われる。われわれが観測できるのは、量子波ではなくて粒子である。量子論は、未測定の素粒子を波動として表現し、測定された素粒子を粒子として表現する。量子波動は確率の波であり、ある事象が観測される確率を表す。素粒子のある瞬間に占める位置を一つの点として表現するのではなく、その点を囲んだ一定の拡がりの空間を、測定の際にその粒子の現われる可能性の空間として表現する。同様に、粒子の運動量も座標空間の一点としてではなく、一定の拡がりをもった確率によって表現する。量子の波形には、ある位置と運動量をもつ粒子的現象を観測する確率が、暗号化された形で含まれているのである。物理学者は波動方程式を解いて、一つの属性が測定の際に実現される確率を計算する。波動関数の絶対値の2乗は、粒子がある位置に存在する確率を現す。波動関数は統計的な意味を持つものであり、量子論は統計的な予測しかしない。物理学は、素粒子の位置も運動量も確率的にしか表現できないのである。それは、現在の知識や測定技術が不完全なものであるからではなく、自然の姿が本来的にそのようなものだからである

 ところで、素粒子は極めて短い 量子ひも からできているという理論が立てられている。この超ひも理論(超弦理論)によれば、素粒子は、本質的に一次元の物体、すなわち、回転し、振動する「超ひも」に還元される。超ひもの振動から、クォークやレプトン、ゲージ粒子などが生み出される。極めて小さなこの一次元物体は、物質の起源であるのみならず、ひも自体がこれ以上単純化しようのない形で基本的な空間とつながっている。時空自体もあるレベルでは、超ひもからできている。超ひも理論は、時間、空間、物質、力という、物理学の本質すべてを記述している。この理論は、宇宙や物質、自然界の力、そして時間、空間の根源までを統一的に説明しようという試みなのである。  

 こうして、人間が経験的にとらえている時間、空間、物質、力などの素朴な概念が統一的に結びつけられて、物資概念の新しい意味が形成されようとしているのである。

量子力学 に続く ☜ クリック

科学と霊界へ

「仏法真理」へ戻る