アインシュタイン vs ボーア

 アインシュタインは、ボーアと徹底的な論戦を繰り広げました。

 アインシュタインは、実在世界のすべての要素にはそれぞれ1対1で対応するものが理論の中になければ物理学理論としては不完全であると考えた。アインシュタインは絶対空間と絶対時間を否定した。その代わりに光の速度を絶対の基準に置いた。

 現在正統とされている量子力学の解釈は、ニールス・ボーアによる「コペンハーゲン解釈」と呼ばれている。1927年秋、世界の著名な物理学者たちがベルギーのブリュッセルに集まって、第5回ソルヴェー会議が開かれた。ここで、ボーアが量子力学を確立したが、コペンハーゲンという都市の名に由来するものである。  量子力学の正しい解釈とは、「どんなに量子現象が奇怪であっても、余計なことは考えないで、正面から素直に受け止めよう」ということなのである。

 ミクロの世界で起こっていることはこの世の現象ではないから、従来の科学常識で量子現象を推し量ろうとすると、誰でも悩乱してくる。ミクロの世界で起きている魔法とも言える現象を素直に正面から受け止めることが、量子力学を理解する基本である。

 「まず理論ありき」「なぜ起きているのか?」を考える前に、「まず現実に起きている事象を科学として認める」としたわけである。

 ところで、素粒子は粒子であると同時に波動である。そして、粒子の概念と波動の概念の間には根本的な相違がある。粒子は空間の一点に限定されるが、波動はそれができない。波が極めて広い範囲に広がることができるのに対し、粒子は小さな領域に限定される。波動を空間のごく小さな領域に押し込めようとすると、波動を記述するために必要な変数の値が不正確になる。量子はその波動性のために先天的な不確定さを持っており、そのために二元的な精密な測定が原理的に不可能なのである。

 「相補性の原理」と言うが、一方(運動スピード)を知ろうとすると、他方(位置)が不明確になるということで、互いに他方を排除するという意味になる。  個々の素粒子は、観測と観測との中間では波のように行動し、観測されたときは粒子として現われる。われわれが観測できるのは粒子である。量子論は、未測定の素粒子を波動として表現し、測定された素粒子を粒子として表現する。

 光においても、ある状況下では波のように振る舞い、別の状況下では粒子のように振る舞うのである。さらに、光子のもつ粒子と波動の二重性は光子だけの性質ではなく、すべての素粒子が粒子であると同時に波動でもある。量子論は、ある意味では世界を物ではなく波でできているとみなしている。

 こうして、世界は粒子でも波でもない あるものからできており、そのあるものとは、金属板などに当てたときは粒子的な性格をみせ、レンズなどを通したときは波動的な性質を示す。

 空間には揺らぎがあり、物質とエネルギーは対応する。そうすると、素粒子は、それが占めている空間の一点にたまたまエネルギーが凝縮されて、粒子として現われているのだと考えることもできる。これをつきつめていくと、空間にはエネルギーだけがあり、空間のエネルギーの密度の不均一により、他のところよりエネルギー密度が高くなっているところが、粒子として観測されているにすぎない。こうして、物質とは、実体として存在するものではなく、エネルギーが示す一つの現象であるとも考えられるのである。

 宇宙開闢のビッグバン仮説、ブラックホール理論など、現代物理学を支える理論のほとんどは、相対性理論から導き出されました。しかし、今は相対性理論が考えられていたほど完璧ではない事実が、最先端の物理学で実証されつつあります。

 例えば、極小の素粒子の世界では、光の速度を越える現象が度々観測されており、相対性原理は破れています。つまり、相対性原理だけでは、この世界の完全な説明は不可能ですし、間違った前提に基づいて生まれたその後の理論も全て誤りとなる可能性もあるのです。

 アインシュタインは、量子力学にかなり多くの疑問を感じていた。量子力学が不完全だという根拠は、量子の不確定性という性質に向けられていた。

 「神はサイコロ遊びをしない」という彼の言葉とともに、よく知られている量子力学の気まぐれさに対する懸念はその一例である。アインシュタインを死ぬまで悩まし続け、現代の物理学者たちが真剣に意見を戦わせている論点は、「誰も見ていないときの月は存在するのか」ということであった。

 彼が公式に明瞭に異議を唱え、わざわざ論文まで書いた唯一の反論は、量子もつれの奇妙さに関するものであった。3人の著者、アインシュタインとその共同研究者であるポドルスキー、ローゼンの名をとって「EPR論文」といわれるものがそれです。「物理的実在の量子力学的記述は完全と考えられるか?」と題された1935年のこの論文で、彼らは自分たちが提起した問いに確固たる論考をもって「ノー」と答えた。(なお、2011年9月、国際共同実験OPERA「オペラ」の研究グループは、ニュートリノの速度が光速より速いことを実験で見出したと発表しました。)

 量子力学によれば、どんな遠方の宇宙でも、2つの粒子間における情報交換は、瞬間的(超光速)に行われることになる。アインシュタインは、自己の打ち立てた「特殊相対性理論」(光速度不変の原理)から言っても、そのような馬鹿なことが起こるわけがないと考えたわけである。

 アインシュタインは、有名なマイケルソンとモーレーの実験の結果、光の速度を越える存在はないと断定したのですが、この実験結果から違った結論を、その後多くの学者が引き出しているのですが、大々的に取り上げられることはありませんでした。

 マイケルソンとモーレーの実験は、光が波なのか粒子なのかを決定するためのものでした。つまり、光が波であるとするなら、例えば電波や音波に対する空気、海の波に対する海水のような、波を伝える媒質の存在が必要です。光は真空の宇宙空間を突き抜けて来ますから、空気は媒質ではないわけです。

 媒質と考えられていたのは、アリストテレスが提唱した、この宇宙を覆っているとする目に見えない「エーテル」でした。このエーテルの存在を検出できれば、光は波であると決定できるわけです。しかし、実験ではエーテルは検出できませんでした。

 アインシュタインは、この実験結果を踏まえて、光速度不変の原理を立てて、なぜ光が波の性質を示すのかの考察を放棄し、エーテルは存在せず、エネルギーと質量は等価で、空間は実は歪んでいるなどとした相対性理論で、宇宙の全ての物理現象を説明できるとしました。

 マイケルソンとモーレーの実験でエーテルが検出できなかったのは、エーテル概念が間違っていたからだとしています。地球の大気中にエーテルが満ちているのではなく、この宇宙の空間そのものがエーテルなのだとするわけです。

 例えば、テレビやラジオ、携帯電話の電波を送受信する技術は知っていても、発信された電波が一個ずつの粒子なのに、多くの受信装置で同時にキャッチできるのは、考えれば不思議なことです。物理学では光や電波は波でもあり粒子でもあるとしていますが、これはそういう性質をそのまま知識として受け入れているだけで、それは何故なのかという根本的な説明ではありません。

 この現象に説明としては、もし、宇宙空間が何もない真空だったら、波でもあり粒子でもある光が一定速度で直進するとすればよいわけですが、電波も直進するのか疑問ですし、波でもあり粒子でもあるという点が誤魔化されているようで、違和感を覚えます。この点、アインシュタインと同じ頃に活躍した物理学者のニールス・ボーアが創始した量子力学にヒントが得られそうです。ボーアは、原子より小さい素粒子の世界では、相対性原理が通用せず、私たちの常識を覆す現象が多いことに気付きました。この世界は物質ではなく、人間の意識こそが存在を規定しているのと言うのです。観測している素粒子が、いつ、どの位置に存在しているかを決めるのは不可能なのです。これは素粒子が粒子の性質を示すかと思えば、波の性質を見せたりして、実体が捉えにくいのですが、その状態を決定するのは、観測する人間の意識なのです。観測者が素粒子の状態を調べようとすると、素粒子がその意識を察知して、瞬時に状態を変化させるのです。つまり、素粒子に意思があるとしか考えられない振る舞いをするという。また、スクリーンの手前に小さな穴を開けた板を置き、素粒子にその穴を通過させると、一つの素粒子が同時に二つの穴を通過するという奇妙な現象が起こります。

 ボーアは、量子力学を打ち立て、これら素粒子の奇妙な現象をシュレディンガーなどが不確定性理論や波動方程式にまとめて、量子の世界の出来事はこれが原因で結果がこうなるという因果律に囚われず、確率的にしかわからないとしました。しかし、この理論は相対性原理と相容れず、アインシュタインはボーアたちとの論争を死ぬまで続けました。

 量子と総称される素粒子とは、原子核を構成する陽子、中性子、中間子、そして原子核の回りを回る電子を含め、陽子などを構成する更に小さいクォークなどです。極小の世界とは言え、例えば、原子核を東京駅に置いたラグビー・ボールだとしますと、その回りを回る電子はピンポン球の大きさで、小田原辺りを回っているほどに、隙間だらけのミニ宇宙なのです。この隙間の空間に何があるかと言いますと、空気もいろいろな分子からなっていますから、当然空気ではありません。空気も入らないほど小さいわけです。

 いわば真空なのですが、真空とは何もない空間ではなく、いろいろなエネルギーが詰まった空間だということがわかってきています。「無から有は生じない」と言われますが、実は生じているらしいのです。しかし、まだ現代の科学ではそれが検出できません。

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