障害の種類と障害等級

○目の障害 

障害の程度

障害の状態

1級

〈視力障害〉
両眼の視力の和が0.04以下のもの

2級

〈視力障害〉
両眼の視力の和が0.05以上、0.08以下のもの

〈視野障害〉
・両眼の視野が5度以内のもの

3級

〈視力障害〉
・両眼の矯正視力が0.1以下に減じたもの (障害手当金基準で症状が固定していない場合)

障害手当金

〈視力障害〉
・両眼の矯正視力の和が0.6以下に減じたもの
・一眼の視力が0.1以下に減じたもの
両目のまぶたに著しい欠損を残すもの

〈視野障害〉
・両眼による視野が2分の1以上欠損したもの
・両眼の視野が10度以内のもの

〈調節機能・輻輳機能障害〉

・複視や頭痛などの眼精疲労が有り、通常の読書などが続けられない程度のもの

〈両眼のまぶたの欠損障害〉
・普通にまぶたを閉じた場合に角膜を完全に覆い得ない程度のもの
両目の機能調整及び輻輳機能(ふくそうきのう)に著しい障害を残すもの

 視野障害の視力の測定は、眼鏡又はコンタクトレンズを使用した矯正視力による。矯正が不能な場合は裸眼視力により測定する。

 両眼の視力とは、両左右の視力を別々に測定し測定した数値を合算したものである。

 過去3ヵ月間に複数回の測定を行なっている場合は、原則としてその最良値による。

障害の程度 1級
 「両眼の視力の和が0.04以下のもの」とは、視力表の1番大きな文字がメガネをかけて1メートルの距離からやっと読める程度以下のものをいう。

障害の程度 2級
 「両眼の視力の和が0.05以上、0.08以下のもの」とは、視力表の1番大きな文字がメガネをかけて2メートルの距離からやっと読める程度で、日常生活に非常に不便を感じる程度の状態にあるものをいう。

障害手当金
 「両目のまぶたに著しい欠損を残すもの」とは、普通にまぶたを閉じた場合に角膜を完全に覆い得ない状態のものをいう。
 「両目の機能調整及び輻輳機能(ふくそうきのう)に著しい障害を残すもの」とは、複視、頭痛等の眼精疲労が生じて、読書等が続けられない程度のものをいう。

障害認定日の特例的取扱い

傷病が治った状態

障害認定日

失明

失明した日

眼球部 

患部疾患・打撲により摘出

患部疾患・打撲により、摘出した日(又は廃用した日)

障害手当金 創面治癒日

 視神経萎縮(幼少時から視力低下がみられるもの)など、一部の病気については、障害年金の審査で先天性(生まれつきのもの)とされる可能性があるため、初診日は誕生日とされることがある。しかし、障害年金では、「近視」と「黄斑部変性」「視神経萎縮」などの病気は、原則として因果関係がないものとして扱われるため、初診日は原因となった疾患で初めて医師の診断を受けた日としている。20歳以降になって初めて診療を受けた場合は、その日が初診日となる。手術などで症状があらわれた場合は、手術などで症状が現れた日が初診日となる。 

 糖尿病と糖尿病性網膜症は、相当因果関係「あり」とされる。糖尿病がなかったならば、糖尿病性網膜症が起こらなかったであろうと認められるからである。糖尿病における初めて医師の診断を受けた日が初診日となる。

 眼の障害を有する人の障害認定は、一般的には「差引認定」の取扱いが行われる。

 「視力」と「視野」の両方ともに低下しているケースのように視力障害と視野障害が併存する場合には、「併合認定」の扱いとなる。

  脳腫瘍で目に疾患がある場合は、「肢体の障害用」の診断書と「目の障害用」の診断書が必要となる。

 糖尿病性網膜症を合併したものの程度は、「眼の障害」の基準により認定する。「眼の障害用」と「糖尿病用」の診断書の2種類で併合の認定をする。

 

○黄斑変性症
 黄斑変性症は、「視野」「視力」の両方に障害が現れやすい病気であるから、「視力」「視野」のいずれかの基準を満たすことで、障害年金が受給できると考える。

 黄斑変性症により、眼の中心部から視野が欠損していくことがある。視力と視野の両方が著しく低下してしまっている場合には、併合認定で等級が上がる可能性がある。

 

○眼球萎縮
 眼球萎縮は、視野がすべて喪失または大きく欠損してしまっていることが多い。眼球萎縮により、両眼の調節機能または運動機能に著しく障害が認められる場合、視力・視野低下と合わせて併合認定により等級が変わる可能性がある。

 

○網膜色素変性症
 網膜色素変性症は、進行とともに視野がだんだん狭くなってくることが特徴で、網膜の病変が網膜の中心部にまで徐々に広がっていくにつれて視野も狭まっていく。視力と視野の両方が著しく低下してしまっている場合には、併合認定で等級が上がる可能性がある。

 

○網膜剥離
 網膜剥離が進行し眼の中心部まで見えなくなってしまう状態になると、網膜を元の位置に戻しても視野が改善しないことがある。視力と視野の両方が著しく低下してしまっている場合には、併合認定で等級が上がる可能性がある。

 

○糖尿病性網膜症
 糖尿病網膜症とは、糖尿病におる糖の代謝異常により眼球の細い血管内で血糖が高い状態が続くことで徐々に血管が損傷を受け、血管がつまったり、変形したり、出血を起こしたりするようになった状態である。糖尿病を発症してから、数年から数十年後にこの病気を発症します。

 糖尿病性網膜症は、無自覚のまま視野の欠損が進行している場合がある。視力と視野の両方が著しく低下してしまっている場合には、併合認定で等級が上がる可能性がある。

 

○聴覚の障害

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

・両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの

2級

・両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
・両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のもの

3級

・両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの (以下のどちらかを満たすとき)
① 両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上のもの  
② 両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上で、かつ、最良語音明療度が50%以下のもの

障害手当金

・一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの
① 一耳の平均純音聴力レベル値が80デジベル以上のもの

 聴覚の障害による障害の程度は、補聴器等のない状態での測定をもとにする。

 聴力レベルは原則として両耳でも障害認定基準表のデシベル以上であること。  (数値の和ではない)

 片方の耳のみ聴力レベルが該当しても障害年金は対象外とされる。 

 障害等級2級でいう『90デシベル』は、健常な人が非常にやかましいと感じるレベルであり、騒々しい工場内やカラオケボックスの中、ブルドーザーの音くらいの音量に匹敵する。

 結核の化学療法による副作用としての聴覚障害は、相当因果関係「あり」とされている。結核の化学療法をした日を初診日とする。

 聴覚の障害(特に内耳の傷病による障害)と平衡機能障害とは、併存することがある。この場合には併合認定の取扱いを行う。併合されるのは下肢に器質的異常がない場合に限る。

 

○鼻腔の障害

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

2級

3級

障害手当金

鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの

 容貌の醜悪は認定対象外とされる。

 嗅覚脱失は、認定の対象とならない。臭覚は、人の五感のなかで退化の程度が比較的大きいことから、この感覚が消滅したとしても、日常活動能力や労働能力にはさしたる影響はないという判断がされている。
 ただし、神経性の嗅覚脱失の場合、脳底部の脳腫瘍が嗅神経を圧迫している結果ということもある。

 外傷性鼻科疾患にて、事故や病気など様々な原因により、鼻の大部分を摘出・欠損してしまい、鼻からの呼吸が困難になってしまった場合等に障害手当金(一時金)が受けられる可能性がある。

 

○平衡機能の障害

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

2級

平衡機能に著しい障害を有するもの

3級

中程度の平衡機能の障害のために、労働能力が明らかに半減しているもの

障害手当金

めまいの自覚症状が強く、他覚所見として眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められ、かつ、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの

 末梢迷路性平衡失調、後迷路性及び小脳性平衡失調、外傷又は薬物による平衡失調、中枢性平衡失調  など

障害の程度 2級
 「平衡機能に著しい障害を有するもの」とは、四肢体幹に器質的異常がない場合に、閉眼で起立・立位保持が不能若しくは開眼で直線を歩行中に10メートル以内に転倒あるいは著しくよろめいて、歩行を中断せざるを得ないものをいう。

障害の程度 3級
 「中程度の平衡機能の障害のために、労働能力が明らかに半減しているもの」とは、閉眼で起立・立位保持が不安定で、開眼で直線を10メートル歩いたとき、多少転倒しそうになったりよろめいたりするが、どうにか歩き通す程度のものをいう。

 平衡機能の障害には、その原因が内耳性のもの(三半規管の障害など)のほか、脳性のもの(脊髄小脳変性 など)も含まれる。

 聴覚の障害(特に内耳の傷病による障害)と平衡機能障害とは併存することがある。この場合は併合認定の取扱いを行う。併合されるのは下肢に器質的異常がない場合に限る。

 肢体の障害と平衡機能障害が併合されることがある。下肢に器質的異常がない場合に限る。

 

○メニエール病
 メニエール病の原因は「内リンパ水腫(内耳のリンパが増え、水ぶくれの状態)」である。

 メニエール症候群から始まった場合には、その激しいめまいゆえに、耳鼻咽喉科ではなく、脳神経外科などを受診することがある。この場合、脳神経外科を受診した日が「初診日」となる。

 めまいの自覚症状が強く、他覚所見として眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められ、かつ、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の場合は併合認定される。

 メニエール病での手続きのポイントは、診断書や「病歴・就労状況等申立書」などの資料から、「よくなる見込みがない」「労働に制限がある」「日常生活において、一部家族の援助が必要なこと」などが読み取れるかにかかっている。


○そしゃく・嚥下機能の障害

障害の程度

1級

 -

2級

・そしゃく・嚥下の機能を欠くもの

流動食以外は摂取できないもの、経口的に食物を摂取することができないもの、及び、経口的に食物を摂取することが極めて困難なもの(食餌が口からこぼれ出るため常に手、器物等でそれを防がなければならないもの、または、1日の大半を食事に費やさなければならない程度のもの)をいう。

3級

・そしゃくの機能に相当程度の障害を残すもの

経口摂取のみでは十分な栄養摂取ができないために、経管栄養の併用が必要あるいは摂取方法に著しい制限があるものをいう。(ゾンデ栄養の併用が必要なもの、または全粥または軟菜以外は摂取できない程度のもの)

障害手当金

・そしゃく・嚥下の機能に障害を残すもの

ある程度の常食は摂取できるが、そしゃく・嚥下が十分できないため、食事が制限される程度のものをいう。

障害の程度 2級
 例えば、食餌が口からこぼれ出るため常に手、器物等でそれを防がなければならないもの、または、1日の大半を食事に費やさなければならない程度のもの

 歯が喪失したことを原因とした咀嚼障害や、発音障害などの障害が残る場合があり、上下顎(あご)欠損により「音声又は言語機能に著しい障害を有するもの」の場合には、障害等級2級に該当するケースがある。

障害の程度 3級
 例えば、ゾンデ栄養の併用が必要なもの、または、全粥または軟菜以外は摂取できない程度のもの

 歯の障害による場合は、補綴(ほてつ)等の治療を行った結果により認定を行う。

 食道の狭窄、下、航空、咽頭の異常等によって生じる嚥下の障害については、咀嚼機能の障害に準じて、(すなわち、)摂取し得る食物の内容によって認定を行う。

 食道静脈瘤は、胃・食道静脈瘤内視鏡所見記載基準および治療の頻度、治療効果を参考とし、肝機能障害と併せて総合的に認定する。

 「そしゃく機能」の障害と「嚥下機能」の障害が重複している場合でも、併合認定の取り扱いはしない。

 他の障害との併存の場合については併合認定される可能性は高い。たとえば、そしゃく・嚥下機能の障害と言語障害の一部は、口内癌などで生じ並存することが多い。そしゃく・嚥下機能の障害に加えて言語機能の障害も認められる場合は、併合認定により障害等級が上がる可能性がある。


○音声又は言語機能の障害

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

2級

音声又は言語機能に著しい障害を有するもの

・発音に関わる機能を喪失するか、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方がほとんどできないため、日常会話が誰とも成立しないもの

喉頭全摘出手術を施した結果、発音に関わる機能を喪失したもの

3級

言語の機能に相当程度の障害を残すもの

・話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に多くの制限があるため、日常会話が、互いに内容を推論したり、たずねたり、見当をつけることなどで部分的に成り立つもの

障害手当金

言語の機能に障害を残すもの

・話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に一定の制限があるものの、日常会話が、互いに確認することなどで、ある程度成り立つもの

 音声または言語機能の障害は、主として、歯、顎、口腔(舌、口唇(こうしん)、口蓋(こうがい)等)、咽頭、喉頭、気管等発声器官の障害により生じる構音障害又は音声障害を指す。

 脳性(失語症等)、耳性、先天性疾患によるものも含まれる。

障害認定日の特例的取扱い

傷病が治った状態

障害認定日

障害等級の目安

喉頭全摘出

喉頭全摘出手術が行なわれた日

手術を施した結果、言語機能を喪失したものについては2級

喉頭部 
患部疾患・打撲により摘出

患部疾患・打撲により、摘出した日(又は廃用した日)
障害手当金 創面治癒日

 

 言語機能の障害は、発音不能な言語と会話状況の判定により障害状態を判断する。

 発音不能な語音は、次の4種について確認するほか、語音発語明瞭度検査等が行われた場合はその結果を確認する。    

 4種の語音とは
 ⅰ 口唇音    (ま行音、ぱ行音、ば行音等) 
 ⅱ 歯音、歯茎音 (さ行、た行、ら行等)
 ⅲ 歯茎硬口蓋音 (しゃ、ちゃ、じゃ等)
 ⅳ 軟口蓋音   (か行音、が行音等)
のことで、このうち1種できない状態であれば障害年金受給の可能性がある。

 

○肢体の障害  

障害認定日の特例的取扱い

傷病が治った状態

障害認定日

障害等級の目安

切断又は離断

切断又は離断した日 障害手当金 創面治癒日

1肢の切断で2級
2肢の切断で1級
1下肢体のショパール間接以上で欠くと2級
リスフラン間接以上で欠くと3級

五指及び五趾が運動機能の用を廃した

廃用した日(全く運動機能がなくなってしまった日)

 

脳血管等による運動機能障害

運動機能障害での症状固定日 (片麻痺等の運動機能障害が発生してから6ヵ月経過後)*1

 

人工関節・人工骨頭を挿入置換

人工関節または人工骨頭が挿入・置換された日

上肢または下肢の3大関節に人工骨頭または人工関節をそう入置換したものは原則3級

*1 脳血管障害の場合は、医学的に脳6ヵ月以内に症状の固定がないとされている。神経系の障害により次のいずれかの呈している場合は、初診日から起算して1年6月を経過しなくても、障害認定審査医の実地調査等により発症後6ヵ月以上経過した日において認定することとされている。6ヵ月を経過した時点で不可逆性が確認できる場合に限り症状固定とする。
(1) 脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から6月経過した日以後に、医学的観点から、それ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるとき
(2) 現在の医学では根本的治療方法がない疾病であり、今後の回復は期待できず、初診日から6月経過した日以後において気管切開下での人工呼吸器(レスピレーター)使用、胃ろう等の恒久的な措置が行われており、日常の用を弁ずることができない状態であると認められるとき

 

○上肢の障害

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

・両上肢の用を全く廃したもの
・両上肢のすべての指を基部から欠き、有効長が0のもの ・両上肢のすべての指の用を全く廃したもの

2級

・両上肢の親指および人指し指又は中指を基部から欠き、有効長が 0 のもの
・両上肢の親指および人指し指又は中指の用を全く廃したもの
・一上肢の用を全く廃したもの
・一上肢のすべての指を基部から欠き、有効長が 0 のもの
・一上肢のすべての指の用を全く廃したもの
・両上肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が、可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

3級

・一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの(関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの、又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、起床より就寝まで固定装具を必要とする程度の動揺関節))
・長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
・一上肢の親指および人指し指を近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)以上で欠くもの又は親指もしくは人指し指を併せ、一上肢の3指を近位指節間関節(親指にあっては指節間関節(親指にあっては指節間関節)以上で欠くもの
・親指及び人指し指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの
・一上肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、一上肢の3大関節中1関節が不良姿位で強直しているもの)又は両上肢に機能障害を残すもの(例えば、両上肢の3大関節中にそれぞれ1関節の筋力が半減しているもの)
・一上肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭または人工関節を挿入置換したもの   両上肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭または人工関節を挿入置換したもの

障害手当金

・一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの(関節の他動可動域が健側の他動可動域の3分の2以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼))
・長管状骨に著しい転位変形を残すもの 
・一上肢の2指以上を近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)以上で欠くもの
・一上肢の人指し指を近位指節間関節以上で欠くもの
・一上肢の3指以上の用を廃したもの
・人指し指を併せ一上肢の2指の用を廃したもの
・一上肢の親指の用を廃したもの
・一上肢の3大関節中1関節の筋力が半減しているもの

 診断書裏面 ⑲欄「日常生活動作」については、補装具(杖 など)を使用しない状態で判定する。

人工骨頭または人工関節を挿入置換・・・
 3級に認定
・一上肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭または人工関節を挿入置換したもの ・両上肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭または人工関節を挿入置換したもの

 人工骨頭または人工関節を挿入置換しても、一上肢については「一上肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両上肢については「両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、2級以上に認定する。

 加療による胸郭変形は、それ自体は認定の対象とならない。肩関節の運動障害を伴う場合には、「上肢の障害」として、その程度に応じて併合認定の取扱いを行われる。

 

○下肢の障害

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

・両下肢の用を全く廃したもの
・両下肢を足関節以上で欠くもの

2級

・両下肢の10趾を中足趾節関節以上で欠くもの
・一下肢の用を全く廃したもの
・一下肢を足関節以上で欠くもの
・両上肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
・両上肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が、可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
人工頭骨または人工関節の機能を不可逆的に著しく損なったとき

3級

・一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの(関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの、又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、起床より就寝まで固定装具を必要とする程度の動揺関節))
・長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
・一下肢をリスフラン関節以上で失ったもの
・両下肢の10趾の用を廃したもの
・一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、一下肢の3大関節中1関節が不良肢位で強直しているもの)又は両下肢に機能障害を残すもの(例えば、両下肢の3大関節中それぞれ1関節の筋力が半減しているもの)
・一下肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭または人工関節を挿入置換したものや、両下肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭または人工関節を挿入置換したもの

障害手当金

・一下肢の三大関節のうち、一関節に著しい機能障害を残すもの(関節の他動可動域が健側の他動可動域の3分の2以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼))
・一下肢を3cm以上短縮したもの
・長管状骨に著しい転位変形を残すもの
・一下肢の第1趾または他の4趾 を中足趾節関節以上で欠くもの
・一下肢の5趾の用を廃したもの
・一下肢に機能障害を残すもの(例えば、一下肢の3大関節中1関節の筋力が半減しているもの)

 診断書裏面 ⑲欄「日常生活動作」については、補装具(車椅子 など)を使用しない状態で判定する。

人工骨頭または人工関節を挿入置換・・・
 3級に認定 とは
・一下肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭または人工関節を挿入置換したもの
・両下肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭または人工関節を挿入置換したもの

 一下肢の3大関節のうち1関節以上に人工骨頭または人工関節を挿入置換手術を両下肢それぞれに行った場合で、以下の①~③の全ての要件を満たす場合、2級以上に認定する。
立ち上がる、歩く、片足で立つ、階段を登る・降りるなどの日常生活動作が、実用性に乏しいほど制限されていること
 例えば、日常生活動作の多くが一人で全くできないか、または必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、非常に困難であること
下肢障害の主な原因および程度評価の根拠が、自覚症状としての疼痛のみによるものではなく、医学的、客観的にその障害を生ずるに妥当なものであること
下肢の障害の状態が、行動量、気候、季節などの外因的要因により一時的に大きく変動するものではなく、永続性を有すること

 

○体幹・脊柱の機能の障害

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

・体幹の機能に座っていることができない程度、または立ち上がることができない程度の障害を有するもの

2級

・体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの

3級

・脊柱の機能に著しい障害を残すもの

障害手当金

・脊柱の機能に障害を残すもの
・長管状骨に著しい転位変形を残すもの

・体幹の機能障害・・・
 高度体幹麻痺を後遺した脊髄性小児麻痺脳性麻痺等によって生じる。

・脊柱の機能障害・・・
 脊柱の脱臼骨折または脊椎炎等によって生じる荷重機能障害運動機能障害がある。

 認定には、身体指示に関連する荷重機能障害が重視される。
 (ズボンの着脱や靴下を履いたり、座る、お辞儀する、立ち上がるなどの日常生活動作ができるかが重要な判断材料)

 障害の認定に当たっては、単に脊柱の運動障害のみでなく、随伴する神経系統の障害を含め総合的に認定する。

 

○肢体の機能の障害

障害の程度

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

障害手当金

 肢体の障害が両上肢、一上肢、両下肢、一下肢、体幹および脊柱の範囲内に限られている場合には、それぞれの認定基準と認定要領によって認定するが、肢体の機能の障害が上肢および下肢の広範囲にわたる場合で、上肢と下肢の障害の状態が相違する場合には、障害の重い肢で障害の程度を判断し認定する。

 肢体の障害は、基本的に「関節可動域」と「筋力の低下」により判断されるが、これだけでは正確な状態が把握できないため、「日常生活の動作の状態」も重要視して総合的に認定される。上肢と下肢をそれぞれ認定して併合することはない

 障害年金の審査においては、労働や日常生活において、手足の動作がどれくらい制限されるかがポイントとなる。

 上下肢に重い障害がある場合は、診断書の「日常生活における動作の障害の程度」を重要視して審査がされ、一肢の障害だけが目立って重い場合は「可動域制限」や「筋力低下」を重要視して審査されるのである。

 日常生活における動作は、おおむね次のようなものである。  
  ・つまむ  
  ・握る  
  ・タオルを絞る  
  ・ひもを結ぶ  
  ・さじで食事をする  
  ・顔を洗う  
  ・用便の処置をする  
  ・かぶりの上衣の着脱  
  ・ボタンのついた上衣の着脱  
  ・ズボンの着脱  靴下を履く  
  ・片足で立つ  
  ・坐る  
  ・歩く(屋外、屋内)
  ・立ち上がる  
  ・階段を上がる、下りる  
  ・深くおじぎをする
 このような動作が、補助具(車椅子、杖 など)を使用せずにどの程度できるのか、どの程度の支障があるのかが判断の材料となる。

 頭痛、めまい、耳鳴り、手足のしびれ等の自覚症状があり、1年以上前に一過性脳虚血発作のあったもの、眼底に著明な動脈硬化の所見を認めるものは3級と認定する。

診断書傷病名 『右被殻(ひかく)出血』  ⑥既往症欄 『左被殻出血』
 同じ神経系統の障害であり、その発症の状況、治療の経過等を総合的に判断したうえで、相当因果関係等について認定することとなっている。

内部障害と外傷の関係について
 前発障害と後発障害との間に相当因果関係があれば、一連の疾病として扱われるが、内部障害と外傷との間には相当因果関係を認めない

 

○脳梗塞(脳軟化症)
 脳梗塞となったのは、高血圧(前発)が原因の一つだと思われることがあるが、脳梗塞を起こした後に血圧が高いと言うのは、血液の流れが悪くなった部分の血液の流れを、血圧を上げることによって良くしようと言う、自己防御反応とも言える状態なのです。障害年金の認定においては、高血圧と脳梗塞には相当因果関係はないものとされるので、脳梗塞を発症して病院に緊急搬送された場合には、その日が障害年金の請求上での初診日とされる。

 脳梗塞の後遺症として多いのが、身体の片側だけの麻痺、言語障害、記憶の障害などがあります。後遺症が複数の障害に渡っている場合は、それぞれの診断書の取得が必要となる。

 脳梗塞などになった場合の後遺症として、記憶や認知機能などの高次脳機能障害が残る場合がある。この時は精神の障害の診断書も必要になる。

 

○脳出血
 高血圧が原因で起こる脳出血が最も多く、全体の70%を占める。しかし、高血圧と脳出血は相当因果関係「なし」である。原因が高血圧とされていても、初診日は高血圧と診断された日ではなく、脳出血または脳梗塞により受診した日とされる。

 

○脳卒中
 脳卒中は、現在、正式には「脳血管障害」と言う名で呼ばれる病気である。〉
 突然血管が詰まって、急激に悪い症状であるものを一般的には「脳卒中」という。

脳卒中の分類
 ・血管が破れて出血するもの・・・脳出血  くも膜下出血  
 ・血管がつまるもの・・・脳梗塞  脳血栓

 倒れて救急車で運ばれ救命処置を受けたという場合、おおよそ数週間の入院の後、リハビリテーション専門の病院へ転院されることが多い。この場合「初診の病院」は救命処置を受けた病院とされる。

 脳血管障害により高次脳機能障害と手足の麻痺が後遺症として残った場合は、それらの障害の全てを評価して障害認定される。高次脳機能障害の症状に対して精神の診断書手足の麻痺に対して肢体の診断書を準備すること。手足の麻痺を「肢体の障害」の認定基準により認定し、精神の障害と併合認定される可能性がある。

 脳血管障害の再発は、基本的に別疾患として取り扱う。

 心疾患(心房細動など)が原因または誘因で発生した脳血管障害と、心疾患は「相当因果関係あり」。心疾患(心房細動など)の受診を初診日とする。

 

○重症筋無力症
 重症筋無力症の障害年金では、次のような状態が診断書や申立書などにしっかりと記載されていることが重要となる。記載された内容が実際の状況と整合性がとれているかをしっかり確認すること。 〉
・良くなる見込みがないこと(今後良くなる見込みがない)  
嚥下障害などがあること重症筋無力症により、喉の筋力低下が起こり、嚥下障害やゃべりにくいなどの症状がある)
・日常生活において、家族の援助が必要なこと(手足の筋力の低下による歩行や立つことが困難な状態であり、車いすでの生活のため、家族の援助が必要である)

 

○大腿骨頭壊死
 大腿骨頭壊死では、アルコールの大量摂取や外傷性、その他原因不明の場合は、股関節あたりに痛みを感じて初めて医師の診察を受けた日が初診日となることが多い。

 (エリテマトーデスの治療過程において)ステロイド投与の副作用により大腿骨骨頭部無腐蝕性壊死に至ったとき、「相当因果関係あり」として、ステロイド投与に至った基礎疾患(膠原病関節リウマチ等)を初診日とする

 

○脳性麻痺
 脳性麻痺(小児麻痺)とは、出生前や出生時、あるいは出生後間もない時期に脳に受けた外傷がもとで生じる、筋の運動制御不能、痙縮、麻痺、その他の神経障害といった一連の症状のことをいう。

 脳性麻痺は障害年金の制度では、先天性の病気であると判断される。

 

○ポストポリオ症候群
 ポストポリオは、ポリオの既往歴をもつ成人に見られる運動、呼吸等の種々の機能障害の総称である。  (ポリオは「小児麻痺」のこと)

 「ポストポリオ」を発症したときは、初診日は幼児期にポリオを発症したときでなく、ポストポリオについて初めて医師の診療を受けた日とする。  大人になってからのポストポリオを初診日とするための条件は、以下の4つである。  (1) 新たに加わった筋力低下、異常な筋の易疲労性の原因が他の疾患でないことが確認できる診断書であること
(2) ポリオの既往歴があり、弛緩性運動麻痺の残存が確認できる診断書、「病歴・就労状況等申立書」であること  
(3) ポリオ回復後、ポストポリオを発症するまでに概ね10年の症状安定期が確認できる「病歴・就労状況等申立書」であること
(4) 上の(1)の主たる原因が、他の疾患でないこと

 幼児期に罹患したポリオによる障害の程度が、既に障害等級2級以上に該当している場合は、その小児ポリオによる障害の程度を差し引いて、成年到達後のポストポリオによる障害の程度が認定(差引認定)される。

 

○変形性股関節症
 先天性股関節脱臼は先天性疾患であるが、自覚症状などがなく、20歳以降になって初めて診療を受けた場合はその日が初診日となる。手術などで症状があらわれた場合は、手術などで症状が現れた日を初診日とする。

 

○神経系統の障害

障害の程度

1級

神経系統に日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

神経系統に日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

3級

神経系統に労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

障害手当金

神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 末梢神経には、「知覚神経」「運動神経」の2種類がある。「知覚神経」に障害が起こると、その神経が支配している部分に痛覚、鈍麻、焼失が発生し、「運動神経」に発生すると、運動麻痺が発生し深部反射が消失する。「知覚神経」が侵されると疼痛などが発生し、「運動神経」が侵されると、その支配部に麻痺が発生し、あるいは運動が制限される。したがって、「運動神経」の障害では、その支配部位によって上下肢等の障害として請求しますので、神経障害として請求するのは、「知覚神経」の障害ということになる。

 「自立神経失調症」は認定対象とはならない。

 神経の痛みそのものでは、原則該当する等級はない。

 パニック障害強迫性障害、PTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)、身体表現性障害、適応障害、抑うつ状態、不安障害解離性障害、転換性障害、摂食障害、睡眠障害など(IDC-10コード F40~F48)は、単独で原則として障害年金の対象とならない神経症である。
 ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症または気分(感情)障害に準じて取り扱う。例えば、「パニック障害+うつ病」など精神病を併発した場合、傷病名は神経症であるものの症状が重篤で精神病と同様日常生活や社会生活を送る上で支障があるならば、認定される可能性がある。

 当初、適応障害不安障害パニック障害、パニック発作などを含む)と診断され、その後に「うつ病」と診断された場合は、相当因果関係「あり」と考える。

 神経系統の障害は、基本は「肢体の障害」の認定基準に基づいて認定する。発現部位に基づく障害の状況により、該当する診断書を複数用意する必要がある。例えば、脳の器質障害については、肢体の障害精神障害両方を総合的に評価して障害認定される。

 疼痛は、原則として認定の対象とならない。しかし、四肢その他の神経の損傷によって生じる灼熱痛、脳神経及び脊髄神経の外傷その他の原因による神経痛、 根性疼痛、悪性新生物に随伴する疼痛等の場合は、疼痛発作の頻度、強さ、持続時間、疼痛の原因となる他覚的所見等により、次のように取り扱われる。
ア 軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは、3級と認定する。  イ 一般的な労働能力は残存しているが、疼痛により時には労働に従事することができなくなり、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるものは、障害手当金に該当するものと認定する。

 

精神の障害

障害の程度

1級

精神の障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

精神の障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

3級

精神に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

障害手当金

精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

○統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

・統合失調症・・・
 高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他もう想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の介護が必要なもの

・気分(感情)障害・・・
 高度の気分、意欲行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の介護が必要なもの

2級

・統合失調症・・・
 残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他もう想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの

・気分(感情)障害・・・
 気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、またはひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

・統合失調症・・・
 残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他もう想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの

・気分(感情)障害・・・
 気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり、または繰り返し、労働が制限を受けるもの

障害手当金

 

○統合失調症
 統合失調症は、幻覚や妄想という症状が特徴的な精神疾患である。それに伴って、人々と交流しながら家庭や社会で生活を営む機能が障害を受け(生活の障害)、「感覚・思考・行動が病気のために歪んでいる」ことを自分で振り返って考えることが難しくなりやすい(病識の障害)という特徴を併せもっている。

 精神病の場合においては、一般的に最初から精神科に受診される方は少なく、当初自立神経失調症や不眠症などの内科疾患として受診され、治療を受けている場合が多い。初診日について、最初に受診した精神科以外の病院で精神疾患と診断されなくても、その病気の症状改善のために治療や薬の処方が行われた場合や、「精神科を受診するように」と指示をしたり、精神科のある病院への紹介状をいただいた場合は、その精神科を紹介した病院を受診した日が初診日とされる。精神科への紹介がない場合は、精神科を初めて受診した日が初診日と認定されることがある。

 統合失調症等とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

 

○双極性障害(躁うつ病)
 うつ病が「うつ」の症状のみ現れるのに対し、双極性障害(躁うつ病)は「躁」と「うつ」の症状を繰り返す病気をいう。

 双極性障害は、以前は「躁うつ病」と呼ばれていた。

 双極性障害は、「躁」の症状に応じて、大きく「双極Ⅰ型」「双極Ⅱ型」に分けられる。

双極Ⅰ型障害  
 重い躁状態とうつ状態を繰り返す
 「躁状態(躁病エピソード)」がはっきりしていて症状が重いのが特徴。典型的な躁状態とうつ状態があらわれ、以前「躁うつ病」と呼ばれていた症状は、ほぼこのⅠ型に当てはまる。  躁状態のときは、本人は病気と思っていません。他人への攻撃性が増して、そのためにトラブルで仕事を失ったり、離婚など、深刻な損失をこうむるケースがある。

 双極性障害Ⅰ型については、躁状態にあるときに、人間関係でトラブルを起こしたり、無計画に大きな買い物をしたり、ギャンブルなどで散財したり、大きな借金をしてしまうことがある。したがって、双極性障害Ⅰ型については、うつ状態 のみならず、躁状態 も障害年金の認定上、評価対象になる。

双極Ⅱ型障害
 Ⅰ型の「躁状態(躁病エピソード)」が重症であるのに対し、「軽躁状態(軽躁病エピソード)」とうつ状態を繰り返すタイプが双極Ⅱ型障害とされている。

 躁うつ病(双極性障害)は、躁 と うつ の周期を繰り返すが、障害年金の制度では、躁の症状についてよりも、うつ の状態が認定のポイントとなる。障害年金の認定基準が、食事、買物、清潔保持、仕事、社会活動といった日常生活能力の制限を評価することとなっているからである。

 障害年金の認定上、双極性障害のⅡ型については 躁 の症状は比較的軽いので、評価されにくい。

 

○境界性人格障害
 誰もが様々な性格をもっていますが、中にはその一部分が極端に偏ったようになり、社会生活を送る上で自分も他人も苦しませてしまうようになる人がいる。こうした人々のことを「人格障害」と呼ぶ。

 気分の波が激しく感情が極めて不安定で、良い・悪いなどを両極端に判定したり、強いイライラ感が抑えきれなくなったりする症状をもつ人は「境界性人格障害」に分類される。

 「境界性」という言葉は、「神経症」と「統合失調症」という2つの心の病気の境界にある症状を示すことに由来する。例えば、「強いイライラ感」は神経症的な症状で、「現実が冷静に認識できない」という症状は統合失調症的ものである。

 人格障害は、原則として認定の対象とはならないが、例外的に「境界性人格障害」については、その症状が精神病との中間的な性格を持つため、症状が重篤な場合は対象とされる。被害関係妄想・幻聴を生じるなどの精神病(統合失調症)の病態を示す場合などである。
 

症状性を含む器質性精神障害

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

・高度の認知症、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の介護が必要なもの

2級

・認知症、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

・認知症、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの〉
・認知症のため、労働が著しい制限を受けるもの

障害手当金

・認知障害のため、労働が制限を受けるもの

 脳そのものの器質的病変により、または脳以外の身体疾患のために、脳が二次的に障害を受けて何らかの精神障害を起こすことがある。これを器質性精神障害という。

 先天性のものでなく、高次脳機能障害アルツハイマー型認知症などの後発性のものである。

 アルコール、薬物等の精神作用物質の使用により生じる精神障害について認定するものであって、精神病性障害を示さない急性中毒及び明らかな身体依存の見られないものは、認定の対象とはならない。
 法で濫用が禁止された薬物を故意に使用した結果生じた精神障害は、認定の対象とはならない。

 器質性精神障害の後に、統合失調症気分(感情)障害てんかんまたは発達障害と診断された場合には、これら後発傷病の原因が器質性精神障害によるとされたとき、または、器質性精神障害の病態として後発傷病の病態を示しているとされたときには、同一傷病となる。
 ただし、前発傷病の初診から後発傷病の診断までの期間が長く、診断書作成医が別傷病と判断し病名が併記された場合には、認定上も別傷病と認定される可能性がある。

 症状性を含む器質性精神障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、たとえば身体障害(肢体の障害)精神障害の両方を総合的に評価して障害認定がされる。

 精神疾患は、症状が変動(=増悪、軽快)し、症状が固定することはないと審査する側は判断します。したがって、精神疾患で障害手当金の支給を受けることはほぼ不可能である。例外は、症状性を含む器質性精神障害だけである。

 

○高次脳機能障害
 高次脳機能障害とは、病気や事故等の様々の原因で受けた脳損傷に起因する認知障害全般を指し、日常生活又は社会生活に制約があるものが認定の対象となる。

 その障害の主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある。

 高次脳機能障害は、さまざまな傷病から引き起こされる。

主に以下の原因によるものと考えられる。

頭部外傷

硬膜外血腫  硬膜下血腫  脳挫傷  びまん性軸索損傷

脳血管障害

脳内出血  脳梗塞  くも膜下出血  もやもや病

感染症

脳炎  エイズ脳症

自己免疫疾患

全身性エリテマトーデス  神経ベーチット病

中毒疾患

アルコール中毒  一酸化炭素中毒

その他

多発性硬化症  脳腫瘍

 高次脳機能障害の症状では、障害年金の認定上「記憶力の低下」が一つの大きな評価ポイントとされる。  
 例えば、
 ・病院までの道順を忘れてしまう  
 ・薬を都度用意してあげないと飲み忘れてしまう   
 ・財布をどこに置いたか忘れてしまい、家族が隠したと疑う
 ・行き慣れた場所にも行けないことがある  
 ・友人や知人の顔や名前が覚えられない
 ・ちょっとしたことでイライラし激怒する
 ・仕事でミスを繰り返し退職に至った

 高次脳機能障害の「記憶力の低下」などの症状により、適切な食事、身辺の清潔保持、金銭管理と買い物、通院と服薬、他人との意思伝達及び対人関係、身辺の安全保持及び危機対応、社会性といった日常生活がどれだけ制限されているかで等級が決まる。

1級に認定される事例
 記憶障害、注意障害、遂行機能障害が強く残存しており、脱抑制、易怒性の亢進も認められ、日常生活全般において、常に周囲の頻繁な声かけ、誘導、見守り、介助が必要な状態

日常生活能力の判定
 助言や指導をしてもできない若しくは行わない

日常生活能力の程度
 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である

2級に認定される事例
 記憶障害、注意障害、遂行機能障害などがあり、重度の自発性低下と遂行機能障害により日常生活において自発的な活動がほとんどできない状態

日常生活能力の判定
 助言や指導があればできる 又は 助言や指導を してもできない若しくは行わない

日常生活能力の程度
 精神障害を認め,日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である

3級と認定される事例
 記憶障害、注意障害、遂行機能障害などがあり、日常生活活動能力は低下しており、かろうじて自立した生活ができているが適便援助が必要となっている

また、軽易な労務にしか服する ことができず、労働に支障をきたしている

日常生活能力の判定
 時には助言や指導を必要とする 又は 助言や指導があればできる

日常生活能力の程度
 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である

 脳出血くも膜下出血脳梗塞などの脳血管疾患により、高次脳機能障害の症状が出るようになった場合は、脳血管疾患により初めて病院を受診した日が初診日となる。

 交通事故などの事故により、脳が傷つけられたり、圧迫されたりして脳挫傷脳内出血を起こしたようなケースでは、事故により病院に救急搬送された日が初診日となる。

 (ヘルペス脳炎やウイルス脳炎、低酸素脳症が原因で脳が損傷し、高次脳機能障害に至ったようなケースは、初診日の特定が難しい。)

 高次脳機能障害により失語障害が生じる場合は、失語障害を「音声又は言語機能の障害」の認定要領により認定し、精神の障害と併合認定が考えられる。「精神の障害用」の診断書のほかに「言語機能の障害用」の診断書の用意が必要になる。

 脳血管障害により高次脳機能障害と手足の麻痺が後遺症として残った場合は、それらの障害の全てを評価して障害認定をする。高次脳機能障害の症状に対して精神の診断書手足の麻痺に対して肢体の診断書を準備すること。手足の麻痺を「肢体の障害」の認定基準により認定し、精神の障害と併合認定される可能性がある。

 

○てんかん

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

・十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが月に1回以上あり、かつ、常時の介護が必要なもの

2級

・十分な治療にかかわらず、十分な治療にか十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上、もしくは、C又はDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

・十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回未満、もしくは、C又はDが月に1回未満あり、かつ、労働が制限を受けるもの

障害手当金

 発作のタイプは以下の通り
 A: 意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
 B: 意識障害の有無を問わず、転倒する発作
 C: 意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
 D: 意識障害はないが、随意運動が失われる発作

 てんかんとは、種々の成因によってもたらされる慢性の脳疾患であって、大脳ニューロンの過剰な発射に由来する反復性の発作(てんかん発作)を特徴とし、それにさまざまな臨床症状及び検査所見がともなう。

 障害年金の対象になるものは「難治性てんかん」「てんかん性精神病」である。

難治性てんかん・・・  
 発作の抑制が薬物療法ではできないもの  薬を飲んでも発作が生じてしまうことから労働や日常生活が制限されている人に対し、てんかん発作の頻度に応じて、1級~3級の障害年金が支給される。

てんかん性精神病・・・  
 てんかん発作は発作間欠期(症状が出たり消えたりしている場合、症状が治まっている期間)においても、てんかんに起因する精神神経症状(被害妄想や抑うつ気分といった統合失調症や気分障害にみられる症状)や認知障害などが出現することがある。

 発作は治まったが、その後被害妄想や抑うつ気分といった症状が出現するものであることから、被害妄想や抑うつ気分といった精神症状による労働や日常生活の制限の程度に応じて、1級~3級の障害年金が支給される。

 抗てんかん薬の服用や外科的治療によって抑制される場合にあっては、原則として認定の対象にならない。

 現在はてんかんが治まっていたとしても、てんかん発作で初めて医師の診断を受けた日が初診日となる。

 薬などの治療を行っているにも関わらず、意識障害を伴って状況にそぐわない行為を示す発作や、転倒するほどの発作を年に2回は起こし、日常生活に著しい制限を受けるものに関しては、障害年金2級以上の可能性がある。

 突然意識を失っても、転倒することはない発作や、意識はあっても思い通りに身体が動かなくなってしまうような発作が月に1回以上あり、かつ、日常生活に著しい制限がある場合は、障害年金3級と認定される可能性がある。

 様々なタイプのてんかん発作が出現し、発作間欠期に精神神経症状や認知障害を有する場合には、治療及び病状の経過、日常生活状況等によっては上位等級に認定する。

 てんかん とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

 

○知的障害

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

・知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意志の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの

2級

・知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに一部援助が必要であって、かつ、会話による意志の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの

3級

・知的障害があり、労働が著しい制限をうけるもの

障害手当金

 知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいう。  その知的な障害のほとんどが発達期(18歳未満)で生じるとされている。

 知的障害には、「精神遅滞」と「高次機能障害等二次的障害」の2種がある。

・「精神遅滞」・・・ 先天性又は出生後の早い時期に知的発達が阻害され、知能が低い状態に止まっているもの

・「高次機能障害等二次的障害」・・・
 いったん正常に発達した知能が、後天的な脳の器質障害によって低下したもの

知的障害の度合い  
 知的障害は度合いによって、重度・中度・軽度に分けられる。

  知能指数(IQ) = 精神年齢(発達年齢) ÷ 生活年齢(実年齢) × 100

知的障害の程度

IQ

精神年齢

療育手帳の基準

最重度

20未満

 

A1

重度

20~34

3歳~6歳未満

A2

中度

35~49

5歳~8歳未満

B1

軽度

50~69

7歳~10歳未満

B2

 知能指数が70~85%の場合はボーダーラインであり、知的障害と認定されない場合が多い。

自閉症と知的障害・・・
 自閉症と知的障害には、似たような症状があり、自閉症にも知的障害のケースがある。  自閉症の症状があり、知的障害の症状も顕著な場合、知的障害者として認定されるケースが多い。  知的障害をともなう自閉症でも、軽度の知的障害が目立たない場合には、知的障害として認定されない。

学習障害と知的障害・・・  
 知能指数(IQ)が70以上で学習障害の症状がある場合には学習障害と診断され、70以下の場合には知的障害と診断される。  知的障害は学習面も含めた全面的な知能の発達に遅れがあり、学習障害は特定の学習に困難を生じる。

知的障害者認定・・・
 知的障害者として認定されると、療育手帳が交付される。療育手帳には、知的障害の程度によってA・Bのどちらかが記載される。最重度・重度の場合はA、中度・軽度の場合はBと記載される。

 医学的には先天性の病気と判断されて、18歳までに発病するものとされているため初診日要件がない。知的障害をはじめとする先天性障害の場合は、例外として生まれた日をもって初診日とされる。療育手帳の提示があれば初診日の証明は必要ない。地域の精神職業センターなどで職業の適性検査を受けていたということがある。この場合、精神職業センターなどで証明となる資料を整備いただくと望ましい。

 20歳を過ぎて以降、『精神遅滞』という診断を受けた場合でも、20歳を障害認定日として「20歳前の障害基礎年金」を請求できる。

 知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。

 知的障害の中で軽度の精神遅滞(IQ50~70)であっても、日常生活に多くの援助が必要な場合は、障害年金の対象ということになる。日常生活能力の低下等で社会生活をすることの困難さが、障害等級に該当する程度なのかが重要である。

 障害等級に対応する日常生活上の支障の程度は、うつ病統合失調症とほぼ同じであるが、会話による意志疎通能力が1級、2級の認定の判断ポイントと考えられる。

 一般に「労働能力がある」という場合は、健常者の方などと同一の労働環境下、同様の仕事をしている場合をいう。働いているといっても、周りの方の援助や配慮があってなんとか働けている状態なら、障害年金の受給の可能性はある。職場において、仕事が限定されている、残業(超過勤務)は免除されている、同僚の手を借りながら(同僚に助けてもらいながら)仕事をしている場合など、特別な配慮がなされている場合は「労働能力がある」とはいえない。障害者雇用促進法の保護の下や社会復帰施設、就労支援施設、小規模作業所での簡易な軽労働の場合も、「労働能力がある」とはいえない。

 知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。精神の場合には別傷病であっても、病態を分けることができないことが多いので、併合ではなく総合認定で行われる可能性が高い。

「病歴・就労状況等申立書」にて・・・ 精神遅滞の場合は先天性のものとなるので、出生時から申請時までの日常生活や病状に関する申立てをすることになる。幼少期、小学生、中学生、20歳までというように転機ごとに区切って記入すること。

 軽度の精神遅滞の方の場合、小中学校は支援学級ではなく、普通学級に通っていたということがある。この場合、
 ・学校や周囲の支援はどの程度あったのか
 ・勉強の遅れはどの程度あったのか
 ・毎日休まずに出席できていたのか
など、支援の必要の程度や学校での生活状況などは申し立てるようにすること。
 

○発達障害

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

・発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、またかつ、著しい異常行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの

2級

・発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、異常行動がみられるために、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの

3級

・発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、また、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの

障害手当金

 発達障害とは、自閉症アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものである。

 発達障害は以下に分類される。

①広汎性発達障害  
 コミュニケーション能力や社会性に関連する脳の領域に関係する発達障害の総称。自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害を含む。  診断を明確に区別する難しさから、重い自閉症から知的に遅れのないアスペルガー症候群までを一つの連続体と捉えた自閉症スペクトラム(ASD : Autism Spectrum Disorder)(ASD)という考え方が一般的。

②注意欠陥多動性障害(ADHD : Attention Deficit Hyperactivity Disorder)

③学習障害(LD : Learning Disability)

④トゥレット症候群(TS:Tourette’s Syndrome)
 多種類の運動チック(突然に起こる素早い運動の繰り返し)と1つ以上の音声チック(運動チックと同様の特徴を持つ発声)が1年以上にわたり続く重症なチック障害です。

吃音(Stuttering)

 知的障害を伴わないアスペルガー症候群や広汎性発達障害についても、医学的には先天性であるとされている。幼少期に両親が子供を医師に受診させていた場合には、その時が初診日となり、20歳前による障害基礎年金として請求できる。

幼少期から発達障害の特徴である症状が出ていたとしても、そのときには受診せず、20歳以降になって初めて医師の診察を受けた場合は、その20歳以降に「医師の診察を受けた日」が初診日となる。20歳前障害による障害基礎年金ではなく、通常の障害年金を請求することになる。

 発達障害は、「コミュニケーション能力」や「適応能力」などで診断する。

 知能指数が高くても、社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために、日常生活や労働に著しい制限を受けることに着目して認定を行う。

 一般に「労働能力がある」という場合は、健常者の方などと同一の労働環境下、同様の仕事をしている場合をいう。働いているといっても、周りの方の援助や配慮があってなんとか働けている状態なら、障害年金の受給の可能性はある。職場において、仕事が限定されている、残業(超過勤務)は免除されている、同僚の手を借りながら(同僚に助けてもらいながら)仕事をしている場合など、特別な配慮がなされている場合は「労働能力がある」とはいえない。障害者雇用促進法の保護の下や社会復帰施設、就労支援施設、小規模作業所での簡易な軽労働の場合も、「労働能力がある」とはいえない。

 発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。精神の場合には別傷病であっても、病態を分けることができないことが多いので、併合ではなく総合認定で行われる可能性が高い。

 

○精神疾患が2つ以上ある場合
 精神科領域の受診がある場合には、傷病名の変更があっても、社会的治癒と判断された場合を除き、最初の受診日を初診日とするのが原則と考えられる。

 以下の場合は別傷病と認定される可能性がある。
 ・てんかん統合失調症等  
 ・てんかん と 気分(感情)障害  
 ・てんかん と 発達障害  
 ・てんかん と 知的障害

 精神の場合には別傷病であっても、病態を分けることができないことが多い。総合認定で行われる可能性が高い。

 

○知的障害や発達障害と認定対象とされる精神疾患を併発した場合の初診日の取り扱い

 発達障害と別の精神疾患が併発しているケースがある。以下のように扱われる。

・知的障害が3級程度であった人が社会生活に適応できず、発達障害の症状が顕著になった場合は「同一疾病」とする。 初診日は誕生日。

・知的障害を伴わない者や3級不該当程度の知的障害のある人については、発達障害の症状により「別疾病」として扱う。初めて診療を受けた日を初診日とする。初診日証明が必要になる。

・発達障害や知的障害である者に後から統合失調症が発症することは、極めて少ない。原則「別疾病」とする。

・発達障害と診断された方が、うつ病などの他の精神疾患を併発した場合は、同一疾病と考えられる。発達障害で初めて受診した日が初診日と扱われる。

・うつ病などの精神疾患診断されていた方が、後から発達障害だと分かった場合は、うつ病等の精神疾患で初めて医師の診察を受けた日が初診日と扱われる。(診断名の変更)

・知的障害である者が、後からうつ病となった場合には、先天性の障害とされ、初診日を「誕生日」とする。

前発疾病

後発疾病

判定

統合失調症

発達障害

同一疾病として扱う。(診断名の変更となるが、新たな疾病が発症したものでない。) 統合失調症のほうが初診日

うつ病

発達障害

同一疾病として扱う。(診断名の変更となるが、新たな疾病が発症したものでない。) うつ病のほうが初診日

知的障害

統合失調症

別疾病として扱う。 初診日は別々

(知的障害が原因で統合失調症を発症したと診断された場合は、知的障害のほうが初診日とされる。)

知的障害

うつ病

同一疾病として扱う。 (知的障害が基因で発症したものとして) 誕生日が知的障害としての初診日

知的障害

神経症で精神病様態

基本的に別疾病として扱う。 初診日は別々 知的障害が原因で統合失調症を発症したと診断した場合は、誕生日が知的障害としての初診日とされる。

知的障害

その他精神疾患

原則別疾病として扱う。

軽度の知的障害(3級程度)

発達障害

同一疾病として扱う。 誕生日が知的障害としての初診日

3級不該当程度の知的障害

発達障害

別疾病として扱う。 初めて診療を受けた日を初診日(20歳過ぎということがある。)

発達障害

統合失調症

別疾病として扱う。 初診日は別々

(知的障害が原因で統合失調症を発症したと診断された場合は、発達障害のほうが初診日とされる。)

発達障害

うつ病

同一疾病として扱う。(発達障害が起因で発症したものとして) 発達障害のほうが初診日

発達障害

神経症で精神病様態

同一疾病として扱う。(発達障害が起因で発症したものとして) 発達障害のほうが初診日

発達障害

その他精神疾患

原則別疾病として扱う。

 

○精神障害の認定等級の目安
 障害年金の診断書の記載項目にある日常生活能力の程度」の結果と「日常生活能力の判定」の平均を出し、両者を以下のマトリックス表に照らし合わせて等級の目安を出します。

程度

判定

(5)

(4)

(3)

(2)

(1)

3.5以上

1級

1級

又は2級

     

3.0以上 3.5未満

1級

又は2級

2級

2級

   

2.5以上 3.0未満

 

2級

2級

又は3級

   

2.0以上 2.5未満

 

2級

2級

又は3級

3級

又は非該当

 

1.5以上 2.0未満

     

3級

又は非該当

 

1.5未満

 

     

非該当

非該当

日常生活能力の程度(5段階評価)
(5) 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の介助が必要である
 ・家庭内生活においても、食事や身のまわりのことを自発的にすることができない〉
 ・在宅の場合に通院等の外出には、付き添いが必要   など
(4) 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である
 ・著しく適正を欠く行動が見受けられる
 ・自発的な発言が少ない、あっても発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする〉
 ・金銭管理ができない   など
(3) 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である
 ・習慣化した外出はできるが、家事をこなすために助言や指導を必要とする
 ・社会的な対人交流は乏しく、自発的な行動に困難がある
 ・金銭管理が困難   など
(2) 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である
 ・日常的な家事をこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難を生じることがある
 ・社会行動や自発的な行動が適切に出来ないこともある
 ・金銭管理はおおむねできる  など
(1)精神障害を認めるが、社会生活は普通にできる

日常生活能力の判定(程度の軽いほうから1~4の数値に置き換え、その平均を算出
 4 助言や指導をしてもできない
 3 助言や指導があればできる
 2 おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
 1 できる

 日常生活能力を見る場合、アパートなどでの一人暮らしでの平均的な日常生活能力が想定されているということです。
 肢体障害の場合における日常生活動作の自立の程度を問う場合は、例えば「目の前に食べ物があれば一人で箸とかスプーンを使って食べることができるかどうか」ということ。 知的障害者の場合の障害程度の評価は、日常生活動作のレベルで自立できているかどうかではなく、判断力や計画性が問われているのです。
 「援助」がなければできない場合は、「ひとりでできる」という評価にはなりません。

(適用の対象となる主な傷病)
・精神障害
 統合失調症  うつ病  双極性障害  脳動脈硬化症に伴う精神病  アルコール精神病
・発達障害
 アスペルガ―症候群  自閉症  高機能自閉症  自閉症スペクトラム  PDD(広汎性発達障害)  ADHD(注意欠陥多動性障害)多動性障害  LD(学習障害)
・知的障害

 

○呼吸器疾患による障害

 

障害の程度

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

・慢性肺疾患(肺気腫など)によって非代償性肺性心を発症しているもの

障害手当金

 

 

○肺結核

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

・認定の時期前6ヵ月以内に常時排菌があり、胸部X線所見が日本結核病学会病型分類のⅠ型(広汎空洞型)またはⅡ型(非広汎空洞型)、Ⅲ型(不安定非空洞型)で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの

2級

・認定の時期前6ヵ月以内に排菌がなく、日本結核病学会病型分類のⅠ型(広汎空洞型)もしくはⅡ型(非広汎空洞型)またはⅢ型(不安定非空洞型)で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

・認定の時期前6ヵ月以内に排菌があり、日本結核病学会病型分類のⅢ型(不安定非空洞型)で病巣の拡がりが1(小)または2(中)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

3級

・認定の時期前6ヵ月以内に排菌がなく、日本結核病学会病型分類のⅠ型(広汎空洞型)もしくはⅡ型(広汎空洞型)またはⅢ型(不安定非空洞型)で、積極的な抗結核薬による化学療法を施行しているもので、かつ、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とするもの

・認定の時期前6ヵ月以内に排菌があり、日本結核病学会病型分類のⅣ型であるもので、かつ、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とするもの

障害手当金

 肺結核の障害年金は、認定6ヵ月までの排菌の有無と、胸部レントゲン検査所見が、日本結核病学会分類のどの重症類型に該当するのか、また、日常生活や就労への制限がどれくらいあるのか等を含めて総合的に判断される。

 結核の化学療法による副作用としての聴覚障害は、相当因果関係「あり」とされる。

 

○じん肺

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

・胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの

2級

・胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

3級

・胸部X線所見がじん肺法の分類の第3型のもので、かつ、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とするもの

障害手当金

 じん肺(珪肺症、石綿肺)とは、石綿(アスベスト)を吸い込み、長い期間をかけて胸膜を中心とした病変を生じさせるものである。

 じん肺症(じん肺結核を含む)と診断された場合、初診日じん肺症と診断された日である。

 

○呼吸不全

 慢性気管支喘息、肺気腫などがこれに相当する。

障害の程度

1級

・下のA表およびB表の検査成績が高度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

・下のA表およびB表の検査成績が中等度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のエまたはウに該当するもの

3級

・下のA表およびB表の検査成績が軽度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウまたはイに該当するもの

・常時(24時間)の在宅酸素療法を施工中のもので、かつ、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のもの

障害手当金

 -

 A表 動脈血ガス分析値

区分

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

動脈血O2 分圧

Torr

70~61

60~56

55以下

動脈血CO2 分圧

Torr

46~50

51~59

60以上

 病状判定に際しては、動脈血02分圧値を重視する。

B表 予測肺活量1秒率

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

予測肺活量 1秒率

40~31

30~21

20以下

一般状態区分表

区分

一 般 状 態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの  (たとえば軽い家事、事務など)

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 定義上、動脈血中の酸素分圧が60mmHg未満になることを呼吸不全と言う。二酸化炭素の増加を伴わない場合を「I型呼吸不全」、伴うものを「Ⅱ型呼吸不全」と呼ぶ。このような呼吸不全が1ヵ月以上続く状態を「慢性呼吸不全」と言う。

 肺疾患に罹患し手術を受け、その後呼吸不全に至ったとき、呼吸不全の発症までの期間が長いものでも、相互因果関係「あり」とされ、肺疾患に罹患し手術を受けた日が初診日となる。

 

○在宅酸素療法
 在宅酸素療法を施工中のものについては、原則として次のように取り扱う。
 常時(24時間)の在宅酸素療法を施工中のもので、かつ、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは3級と認定する。
 病状が悪く日常生活が大きく制限される場合は、2級以上に認定されることがある。
 障害の程度を認定する時期は、在宅酸素療法を開始した日(初診日から起算して1年6月以内の日に限る)とする。

 審査で重要視されるのは在宅酸素施行の有無ではない。実際の検査成績、日常生活に受ける制限、咳や痰などの自覚症状、他覚所見など、あらゆる観点から障害の状態を見て判定される。在宅酸素を施行していなくても、一定の障害がある場合は3級に認定され、病状が重ければ2級や1級が認定されるケースがある。

 肺血栓塞栓症、肺動脈性肺高血圧症は、心疾患による障害として認定する。

 

心疾患による障害

 障害年金制度でいう心疾患とは、心臓だけではなく、血管を含む循環器疾患を指すものである。

障害の程度

1級

・下のA表およびB表の検査成績が高度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

・下のA表およびB表の検査成績が中等度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のエまたはウに該当するもの

3級

・下のA表およびB表の検査成績が軽度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウまたはイに該当するもの

・常時(24時間)の在宅酸素療法を施工中のもので、かつ、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のもの

障害手当金

 -

 心疾患の検査での異常検査所見

区分

異 常 検 査 所 見

安静時の心電図において、O.2mV以上のSTの低下もしくは0.5mV以上の深い陰性T波(aVR誘導を除く)の所見のあるもの

負荷心電図(6Mets未満相当)等で明らかな心筋虚血所見があるもの

胸部X線上で心胸郭係数60%以上又は明らかな肺静脈性うっ血所見や間質性肺水腫のあるもの

心エコー図で中等度以上の左室肥大と心拡大、弁膜症、収縮能の低下、拡張能の制限、先天性異常のあるもの

心電図で、重症な頻脈性又は徐脈性不整脈所見のあるもの

左室駆出率(EF)40%以下のもの

BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が200pg/ml相当を超えるもの

重症冠動脈狭窄病変で左主幹部に50%以上の狭窄、あるいは、3本の主要冠動脈に75%以上の狭窄を認めるもの

すでに冠動脈血行再建が完了している場合を除く。

心電図で陳旧性心筋梗塞所見があり、かつ、今日まで狭心症状を有するもの

        身体活動能力

区分

身体活動能力

6Mets以上

4Mets以上6Mets未満

3Mets以上4Mets未満

2Mets以上3Mets未満

2Mets未満

Mets :  代謝当量をいう。
 座位姿勢時に必要な酸素摂取量(3.5ml/kg体重/分)を1Metsとし、日常生活の活動がどの程度心臓に負担がかかるのかを判断するための、身体活動や運動強度の指標のことをいう。(平地歩行 3Mets  入浴 4~5Mets  階段昇り 6Mets)

 心疾患では、
 ①心筋の障害(拡張型・肥大型心筋症 など)
 ②弁の障害(僧帽弁、三尖弁、大動脈弁の閉鎖不全 など)
 ③洞結節の障害(アダムス・ストークス症候群、WPW症候群、不整脈など拍動パルスの障害)
 ④冠動脈の障害(心筋梗塞、狭心症)
の4つの疾患に大別される。

障害認定日の特例的取扱い

傷病が治った状態

障害認定日

障害等級の目安

人口弁、心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)の装着手術を受けたとき

装着手術を受けた日

原則3級

 

心臓移植、人工心臓、補助人工心臓を移植または装着したとき

移植または装着した日

1級

術後の経過で等級の見直しがある

CRT(心臓再同期医療機器)及びCRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)を装着したとき

装着日

重症心不全の場合は2級

術後の経過で等級の見直しがある。

胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤により人工血管を挿入置換したとき

人工血管を挿入置換したとき

3級

一般状態区分表の「イ」または「ウ」に該当

 

○弁疾患

 僧帽弁、三尖弁、大動脈弁の閉鎖不全  など

障害の程度

1級

・病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

・人工弁を装着術後、6ヵ月以上経過しているが、なお病状をあらわす臨床所見が5つ以上、かつ、異常検査所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

・異常検査所見のA、B、C、D、Eのうち2つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

・人工弁を装着したもの
・異常検査所見のA、B、C、D、Eのうち1つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

障害手当金

 

○心臓ペースメーカー、又はICD(植込み型除細動器)又は人工弁を装着
 障害年金では、大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁の4つの弁のうち、一つでも人工弁に置き換えれば3級となる。複数の人工弁置換術を受けている者にあっても、原則3級相当となる。4つの弁をすべて人工弁にしても経過が良好な場合は3級である。

 人工弁を装着したにも関わらず、術後の経過や原疾患の性質などによっては障害年金2級以上に該当する場合がある。人工弁を装着術後、6ヵ月以上経過しているが、なお病状をあらわす臨床所見が5つ以上、かつ、異常検査所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するものは障害等級2級である。
(身体障害者手帳においては、ペースメーカー、人工弁装着は1級認定)

 術後に障害等級に認定するが、1~2年程度経過観察したうえで症状が安定しているときは、臨床症状、検査成績、一般状態区分表を勘案し、障害等級を再認定することとしている。

 人工弁を装着していなくても、状態が悪ければ2級や1級となりえる。

 

○心筋疾患

障害の程度

1級

・病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

・異常検査所見のFに加えて、病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

・異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち2つ以上の所見及び心不全の症状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

・EF値が50%以下を示し、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

・異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち1つ以上の所見及び心不全の病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

障害手当金

 -

 

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

・病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

・異常検査所見のFに加えて、病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

・異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち2つ以上の所見及び心不全の症状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

・EF値が50%以下を示し、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

・異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち1つ以上の所見及び心不全の病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

障害手当金

 

○虚血性心疾患
 心筋梗塞、狭心症  など

障害の程度

1級

・病状(障害)が重篤で安静時においても、常時心不全あるいは狭心症状を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

・異常検査所見が2つ以上、かつ、軽労作で心不全あるいは狭心症などの症状をあらわし、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

・異常検査所見が1つ以上、かつ、心不全あるいは狭心症などの症状が1つ以上あるもので、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

障害手当金

 -

 

○心筋梗塞
 手術などの治療を行ったのにも関わらず、経過が思わしくなく退院後も安静が必要な場合、動悸や息切れ、胸痛などの症状のため安静にしていなければならないという状態であれば、障害年金の対象となる可能性がる。

 心機能が低下することにより日常的にめまいや息切れを起こしている場合は、労働の内容にも著しい制限が必要になるため、障害年金の支給対象になる可能性がある。

 

○難治性不整脈

障害の程度

1級

・病状(障害)が重篤で安静時においても、常時心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

・異常検査所見のEがあり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

・異常検査所見のA、B、C、D、F、Gのうち2つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

・ペースメーカ一、ICDを装着したもの

・異常検査所見のA、B、C、D、F、Gのうち1つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

障害手当金

 -

 難治性不整脈とは、放置すると心不全や突然死を引き起こす危険性の高い不整脈で、適切な治療を受けているにも拘わらず、それが改善しないものをいう。

 

○心房細動
 心房細動は、一般に加齢とともに漸増する不整脈であり、それのみでは認定の対象とはならない。心不全を合併したり、ペースメーカーの装着を要する場合には認定の対象となる。

 心房細動など心疾患(心房細動など)が原因または誘因で発生した脳血管障害は「相当因果関係あり」として、心疾患(心房細動など)の受診を初診日とする。

 

○大動脈疾患

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

2級

3級

・胸部大動脈解離(Stanford分類A型・B型)や胸部大動脈瘤により、人工血管を挿入し、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

・胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤に、難治性の高血圧を合併したもの

障害手当金

 大動脈疾患では特殊な例を除いて心不全を呈することはなく、完全治癒を望める疾患ではないため、1・2級の該当はない。

 大動脈解離(大動脈瘤含む)における障害年金の認定は、人工血管挿入に加えて労働に制限がある場合について、障害年金の3級が認定される。

 「大動脈解離心不全」、「大動脈解離+心筋梗塞」のように他の病気などがある場合には、生活が大きく制限されるので、2級、1級が認定される可能性がある。

 大動脈瘤とは、大動脈の一部がのう状又は紡錘状に拡張した状態で、先天性大動脈疾患や動脈硬化(アテローム硬化)、膠原病などが原因となる。これのみでは認定の対象とはならないが、原疾患の活動性や手術による合併症が見られる場合には、総合的に認定する。

 

○先天性心疾患

障害の程度

1級

・病状(障害)が重篤で安静時においても、常時心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

・異常検査所見が2つ以上及び病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

・Eisenmenger化(手術不可能な逆流状況が発生)を起こしているもので、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

・異常検査所見のC、D、Eのうち1つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

・肺体血流比1. 5以上の左右短絡、平均肺動脈収縮期圧50mmHg以上のもので、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

障害手当金

 -

 心臓中隔欠損症のような先天性疾患にて手術などで症状があらわれた場合、手術などで症状が現れた日を初診日とする。

 

○心臓移植や人工心臓等を装着

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

・心臓移植

・人工心臓を移植

2級

・CRT(心臓再同期医療機器)を装着

・CRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)を装着

3級

障害手当金

 心臓移植は心臓移植以外の従来の治療法では救命ないし、延命することを期待できない重症の心機能障害をもつ心臓の病気に対して行なわれている。

 広範な心筋梗塞、重症の心筋症(主に拡張型心筋症)高度の心筋障害を伴う心臓弁膜症などがある。

 臓器移植を受けたものに係る障害の認定は、「その他障害」の認定要領により認定される。臓器移植を受けた人のその後の障害認定は、術後の症状、治療経過及び検査成績等を十分に考慮して総合的に認定する。

 心臓移植や人工心臓等を装着した場合の障害等級は、次のとおりとする。
 ・心臓移植 1級
 ・人工心臓 1級
 ・CRT(心臓再同期医療機器)及びCRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)   2級

 術後は1~2年程度経過観察したうえで症状が安定しているときは、臨床症状、検査成績、一般状態区分表を勘案し、障害等級を再認定することとしている。

 

○拡張型心筋症
 拡張型心筋症では、症状が慢性的に進行するが、心機能が低下して安静にしていても呼吸困難を呈すようになる。その場合は常に呼吸の管理やケアが必要になり、障害年金の対象となる。

 

○狭心症
 手術などの治療を行ったのにも関わらず、経過が思わしくなく退院後も安静が必要な場合、動悸や息切れ、胸痛などの症状のため安静にしていなければならないという状態であれば、障害年金の対象となる可能性がある。

 心機能が低下することにより日常的にめまいや息切れを起こしている場合は、労働の内容にも著しい制限が必要になるため、障害年金の支給対象になる可能性がある。

 

○高血圧症

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

悪性高血圧症

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

・1年以内の一過性脳虚血発作、動脈硬化の所見、さらに出血、白斑を伴う高血圧性網膜症を有するもの

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

・頭痛、めまい、耳鳴り、手足のしびれ等の自覚症状があり、1年以上前に一過性脳虚血発作のあったもの、眼底に著明な動脈硬化の所見を認めるもの

大動脈解離や大動脈瘤を合併した高血圧

障害手当金

 高血圧症とは、降圧剤服用下で収縮期血圧(最大血圧が140mmHg以上)拡張期性高血圧(最小血圧が90mmHg以上)のものをいう。

高血圧性脳出血の初診日について
 初診日は高血圧と診断された日ではない。原因が高血圧とされていても、脳出血または脳梗塞により受診した日を初診日とする。

 高血圧 と 脳出血    相当因果関係「なし」
 高血圧 と 脳梗塞    相当因果関係「なし」
 高血圧 と 洞機能不全  相当因果関係「なし」

障害の程度 2級
・1年以内の一過性脳虚血発作、動脈硬化の所見、さらに出血、白斑を伴う高血圧性網膜症を有するもの

障害の程度 3級
・頭痛、めまい、耳鳴り、手足のしびれ等の自覚症状があり、1年以上前に一過性脳虚血発作のあったもの、眼底に著明な動脈硬化の所見を認めるもの
大動脈解離や大動脈瘤を合併した高血圧

 症状、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

 高血圧を基礎疾患として心疾患、腎疾患、脳障害など合併して発症した方については、それぞれの障害の障害認定基準により認定される。

 高血圧症により脳の障害を合併したものによる障害の程度は、「肢体の障害」の認定要領により認定する。

 高血圧症により心疾患を合併したものによる障害の程度は、「心疾患による障害」の認定要領により認定する。

 高血圧症により腎疾患を合併したものによる障害の程度は、「腎疾患による障害」の認定要領により認定する。

 

○悪性高血圧
 障害年金制度では、単に高血圧症というだけでは対象にならない。「悪性高血圧症」としての要件を満たす場合や、高血圧症障害の合併症である脳の障害、心疾患障害、腎疾患障害の有無とその程度を総合的に評価して障害認定される。

 悪性高血圧症は1級と認定する。
 この場合において「悪性高血圧症」とは、次の条件を満たす場合をいう。
 ⅰ 高い拡張期性高血圧(最小血圧が120mmHg以上)  
 ⅱ 眼底所見で、Keith-Wahener分類Ⅲ群以上のもの  
 ⅲ 腎機能障害が急激に進行し、放置すれば腎不全にいたるもの  
 ⅳ 全身症状の急激な悪化を示し、血圧、腎障害の増悪とともに、脳症状や心不全を多く伴うもの

 「悪性高血圧」のように慢性腎不全相当因果関係があると判断される場合は、悪性高血圧として初めて医師の診断を受けた日が初診日となりえる。

 

腎疾患による障害

障害の程度

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

・慢性腎不全の検査成績が高度以上を1つ以上示すもので、かつ一般状態区分表のオに該当するもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

慢性腎不全の検査成績が中等度または高度の異常を1つ以上示すもので、かつ一般状態区分表のエ又はウに該当するもの

人工透析療法施行中のもの

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

慢性腎不全の検査に示す検査成績が軽度、中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

・ネフローゼ症候群での検査に示す検査成績がアが異常を示し、かつイ又はウのいずれかが異常を示すもので、かつ一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

障害手当金

 -

  慢性腎不全の検査項目および異常値

区分

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

内因性クレアチニンクリアランス値

ml/分

20以上 30未満

10以上

20未満

10未満

血清クレアチニン濃度

mg/dl

3以上 5未満

5以上 8未満

8以上

(注) eGFR(推算糸球体濾過量)が記載されていれば、血清クレアチニンの異常に替えて、eGFR(単位はml/分/1.73㎡)が10以上20未満のときは軽度異常、10未満のときは中等度異常と取り扱うことも可能とされます。

   ネフローゼ症候群の検査項目および異常値

区分

検査項目

単位

異常

尿蛋白量(1日尿蛋白量又は 尿蛋白/尿クレアチニン比)

g/日
又は
g/gCr

3.5g以上を持続する

血清アルブミン
(BCG法)

g/dl

3.0g以下

血清総蛋白

g/dl

6.0g以下

 

  一般状態区分表

区分

一 般 状 態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの (たとえば軽い家事、事務など)

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 腎疾患で最も多いものは、糖尿病性腎症慢性腎炎ネフローゼ症候群を含む)、腎硬化症である。

 慢性腎不全の場合は、原因となった元の病気で初めて医師の診断を受けた日が初診日となる。血液異常や遺伝子異常により慢性腎不全になったケースでも、血液異常で初めて医師の診断を受けた日や、遺伝子異常で初めて医師の診断を受けた日が初診日となる。必ずしも内科を受診した日が初診日となるわけではない。

 健康診断で、尿蛋白が出たり、血糖値やクレアチニンの数値が異常を示して、再検査の指示「要治療」と診断されたとき、異常が認められた場合という。健康診断を受けた日が初診日となる。

 尿蛋白が少し出ただけで健康診断を受けた日が初診日となることはない。

 健康診断等で再検査指示があったが、特に体が疲れやすいこともないため受診をしないで数年後に体調不良で受診した場合は、数年後の受診日が初診日になる。

 腎疾患に罹患し、その後、慢性腎不全を生じて人工透析を開始したものはその期間が長いものでも、腎疾患と人工透析には「相当因果関係」があるものとされているため、腎疾患とされた日を初診日とする。

 障害年金の制度上、多発性嚢胞腎についての初診日は、多発性嚢胞腎として自覚症状で受診した日、または、それを判明のきっかけとなった血尿などの傷病で初めて医師の診断を受けた日となる。

 糖尿病が原因で長い期間を経てから人工透析が必要になることも珍しくはない。この場合も、糖尿病と人工透析は因果関係があるとして扱われる。その結果、これらの腎炎の症状や糖尿病で最初に医師に診察を受けた日を初診日として扱われる。

 

○慢性腎不全
 慢性腎不全とは、慢性腎疾患によって腎機能障害が持続的に徐々に進行し、生体が正常に維持できなくなった状態をいう。すべての腎疾患は、長期に経過すれば腎不全に陥る可能性をもっており、最も多いのは、慢性腎炎腎硬化症嚢胞腎腎盂腎炎である。

 慢性腎臓病は、3ヵ月以上持続する蛋白尿・血尿などの尿異常、腎形態異常または腎機能が約60%未満にまで低下した状態のことをいう。  腎機能が正常の60%未満に低下すると、前述のような症状が出始め、進行性の腎機能低下があると考えられます。そして、腎機能が正常の15%以下となり、透析や移植が必要か、必要に差し迫った状態を末期腎不全という。

 典型的な症状や検査所見の異常

腎機能 (目安)

症状

検査所見

必要な処置

90%以上

ほとんど無し

蛋白尿・血尿・高血圧

定期的検査

60~90%

一度は腎臓専門医受診

30~60%

むくみ

上記 + クレアチニン上昇

腎臓専門医によるフォロー 腎不全進行抑制の治療

15~30%

上記 + 易疲労感

上記 + 貧血・カルシウム低下

透析・移植の知識取得 腎不全合併症の治療

15%未満 (末期腎不全)

上記 + 吐気・食欲低下 息切れ

上記 + カルシウム/リン上昇 アシドーシス・心不全

透析・移植の準備 10%以下の腎機能では 透析開始・移植施行

 糖尿病と糖尿病性腎症  相互因果関係「あり」

 糖尿病性腎症を合併したものの程度は、「腎疾患による障害」の基準により認定する。

 合併症としての慢性腎不全(糖尿病性腎症)については、基本となる傷病の初診日を初診日とすることとしている。

 

透析療法
 腎臓の働きが10%以下になると、血液のろ過が充分に行えず、水分や老廃物のコントロールができなくなってしまう。そのような場合に、人工的に血液の浄化を行うのが「透析療法」である。

 透析療法には、
 ① 人工的に行うオンラインHDF療法
 ② 血液透析療法
 ③ 自分のお腹の腹膜を使って行う腹膜透析療法
の3種類がある。

 障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3ヵ月を経過した日となる。
 人工透析開始後3ヵ月を経過した日が初診日から起算して1年6ヵ月以内である場合は、人工透析開始後3ヵ月を経過した日が障害認定日となり、その時から請求が可能となる。人工透析を開始したのが初診日から起算して1年6ヵ月を過ぎている場合は、初診日から起算して1年6ヵ月後を障害認定日とする。人工透析を開始して3ヵ月が経過しなくても、人工透析を開始したときより請求ができる。

 人工透析療法施行中のものは2級と認定する。
 主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、具体的な日常生活状況等によっては1級に認定される。

 人工透析療法が施行されていなくても、慢性腎不全およびネフローゼ症候群における要件を満たせば障害2級以上に認定される。

障害の程度 1級
・慢性腎不全の検査成績が高度以上を1つ以上示すもので、かつ一般状態区分表のオに該当するもの
  内因性クレアチニンクリアランス値10未満(mg/分)・血清クレアチニン濃度8以上(mg/dl)
 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの (オ)

障害の程度 2級
・慢性腎不全の検査成績が中等度または高度の異常を1つ以上示すもので、かつ一般状態区分表のエ又はウに該当するもの
  内因性クレアチニンクリアランス値20未満(mg/分)・血清クレアチニン濃度5以上 (mg/dl)

 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの (エ)
 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの (ウ)

障害の程度 3級
・慢性腎不全の検査に示す検査成績が軽度、中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ一般状態区分表のイ又はウに該当するもの
  慢性腎不全検査成績で、内因性クレアチニンクリアランス値30未満(mg/分)・血清クレアチニン濃度3以上(mg/dl)

・ネフローゼ症候群での検査に示す検査成績がアが異常を示し、かつイ又はウのいずれかが異常を示すもので、かつ一般状態区分表のイ又はウに該当するもの
  尿蛋白量が3.5(g/日)以上を持続し、かつ、血清アルブミンが3.0g以下 か 血清総蛋白が6.0g以下

 

 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの (ウ)
 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの (たとえば軽い家事、事務など) (イ)

 

腎臓移植
 腎臓移植には、家族・配偶者・身内から体内に2つある腎臓のうち1つ提供を受ける「生体腎移植」と、脳死や心臓死になられた方から腎臓の提供を受ける「献腎移植」の2種類がある。

 腎臓移植を受けたものに係る障害の認定は、「その他障害」の認定要領により認定するとされている。

 免疫抑制剤を使用していることだけで3級相当とはしない。著しい労働制限を受けるような状態にでなければ3級も非該当となる。

 障害年金を支給されている者が腎臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。その後再認定することとしている。

 

○代謝疾患による障害

障害の程度

1級

長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

・一般状態が一般状態区分表のオに該当するもの

2級

長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

・一般状態が一般状態区分表のエまたはウに該当するもの

3級

労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

・インスリンを使用してもなお、血糖のコントロールの不良なもの(HbAlc8.0%以上および空腹血糖値140mg/dl以上)
・糖尿病性神経障害が長時間持続するもの

障害手当金

 -

  一般状態区分表

区分

一 般 状 態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの  
 (たとえば軽い家事、事務など)

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 糖尿病とは、その原因のいかんを問わず、インスリンの作用不足に基づく糖質、タンパク質の代謝異常によるものであり、その中心をなすものは高血糖である。

 糖尿病には2種類の方があり、体質によって糖尿病になるⅠ型糖尿病と生活習慣病と言われるⅡ型糖尿病に分かれる。ほとんどの糖尿病患者はⅡ型糖尿病に分類される。

 再検査で受診・入院したが、退院後は直ちに体に不調がないため受診を中断していて、数年後に体調不良で受診したとしても、健康診断の日が初診日になる。再検査指示があったが、特に体が疲れやすいこともないため受診をしないで数年後に体調不良で受診した場合は、数年後の受診日が初診日とされる。

 糖尿病と糖尿病性壊疽(糖尿病性神経障害糖尿病性動脈閉塞症)
 相当因果関係「あり」とされる。

 糖尿病 と 洞機能不全  相当因果関係「なし」
 糖尿病 と 脳出血    相当因果関係「なし」
 糖尿病 と 脳梗塞    相当因果関係「なし」

 この代謝疾患は事実上糖尿病を意味するが、「痛風」などもこれに含まれる。

 単なる疲れ、感覚異常は認定の対象とならない。

 血糖が治療、服薬、日常生活規制(食事制限、運動など)によってコントロールされている場合には、認定の対象とならない。
 単にインスリンを投与しているというだけでは認定の対象とならない。インスリンを使用しても血糖コントロールが不良であるという場合に3級と認定される。
 (HbA1cが8.0%以上で空腹時血糖値が140mg/dl以上の場合にコントロール不良

 

糖尿病の合併症
 糖尿病に肥満、高血圧、脂質異常症や喫煙の動脈硬化のリスクが加わると、心筋梗塞脳梗塞などの動脈硬化を原因とする病気を発症しやすくなる。

 「糖尿病」は様々な合併症の原因となるため、多くは合併症に対する認定である。したがって、  
 ・合併症を併発しているか否か、またその病状はどうであるか  
 ・血糖コントロールの状態、治療と病状の経過
 ・日常生活の状態  
を考慮して総合的に認定される。

 合併症で糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症などが発症し、障害年金を受給することがある。

 糖尿病から「糖尿病性網膜症」糖尿病性腎症」「糖尿病性神経障害」が起こった場合は、それぞれの病気の認定の基準によって障害の等級が定められる。

 糖尿病と糖尿病性網膜症 は 相当因果関係「あり」とされる。糖尿病がなかったならば、糖尿病性網膜症が起こらなかったであろうと認められるからである。  糖尿病における初めて医師の診断を受けた日が初診日となる。

 糖尿病性網膜症を合併したものの程度は、眼の障害の基準により認定する。眼の障害用診断書が必要になる。

 

糖尿病性神経障害
 激痛、著明な知見の障害、重度の自律神経症状等があるものは、「神経系統の障害」の認定要領により認定する。

 糖尿病性神経障害が長時間持続するものは3級と認定する。

 

糖尿病性動脈閉塞症
 運動障害を生じているものは、「肢体の障害」の認定要領により認定する。糖尿病性動脈閉塞症を合併している場合は、肢体の障害の診断書が必要になる。

 

糖尿病と他の内科疾患との総合認定・・・  
 内科的疾患が2つ以上ある場合は、併合認定でなく総合的に認定し併せて1級、2級又は3級となることがある(総合認定)。

 総合認定は認定基準が不明で、単純に3級が2つあれば2級になるとは限らない。

 

肝疾患による障害

障害の程度

1級

長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

・検査成績および臨床所見のうち高度異常を3つ以上示すもの、または、高度異常を2つ及び中程度の異常を2つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

・検査成績および臨床所見のうち中程度または高度の異常を3つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

・検査成績および臨床所見のうち中程度または高度の異常を2つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

障害手当金

 -

  肝疾患での重症度判定の検査項目および異常値

検査項目

基準値

中等度異常

高度異常

総ビリルビン  mg/dl

0.3~0.2

2以上3未満

3以上

血清アルブミン  g/dl

4.2~5.1

2.8以上3.5未満

2.8未満

血小板数  万/μg

13~35

5以上10未満

5未満

プロトロンビン時間

70~130%

40以上50未満

40未満

10~14秒

4以上6未満の延長

6以上の延長

アルカリフォスファー

0.8~2.3

3.5以上10未満

10以上

コリンエステラーゼ

診療施設基準値に対して明らかに病的な異常値のもの

2.8未満

腹水

中等度

高度

脳症

Ⅰ度

Ⅱ度

 表1 昏睡度分類

昏睡度

精 神 症 状

参考事項

・睡眠-覚醒リズムに逆転
・多辛気分ときに抑うつ状態
・だらしなく、気にとめない態度

・あとで振り返ってみて判定できる

・指南力(時、場所)障害、物を取り違える
・異常行動(お金をまく 化粧品をゴミ箱に捨てるなど)
・ときに傾眠状態(普通のよびかけで開眼し、会話ができる)
・無礼な言動があったりするが、他人の指示には従う態度をみせる

・興奮状態がない
・尿便失禁がない
・羽ばたき振戦あり

 

 

 

・しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴い、反抗的態度をみせる
・嗜睡状態(ほとんど眠っている)
・外的刺激で開眼しうるが、他人の指示には従わない、または従えない(簡単な命令には応じえる)

・羽ばたき振戦あり(患者の協力が得られる場合)
・指南力は高度に障害

・昏睡(完全な意識の消失)
・痛み刺激に反応する。

・刺激に対して払いのける動作、顔をしかめるなどがみられる。

・深昏睡
・痛み刺激に反応しない。

 

 肝疾患の認定対象は、慢性びまん性の肝疾患の結果生じた肝硬変症、およびそれに付随する病態(食道静脈瘤肝癌を含む)である。

 手術時の輸血により肝炎を併発したものは相当因果関係「あり」として、手術時の輸血をした日を初診日とする。

 C型肝炎の人がインターフェロンの治療をして、それが原因で脳の機能不全となり精神疾患になった場合、C型肝炎を基礎疾患として初診日とする。

 慢性肝炎は原則として認定対象とはされない。

 食道静脈瘤は、胃・食道静脈瘤内視鏡所見記載基準および治療の頻度、治療効果を参考とし、肝機能障害と併せて総合的に認定する。

 

○肝硬変
 肝硬変とは、B型やC型肝炎ウイルス感染、アルコール、非アルコール性脂肪性肝炎などによって肝臓に傷が生じるが、その傷を修復するときにできる「線維(コラーゲン)」というタンパク質が増加して肝臓全体に拡がった状態のことをいう。

 アルコール性肝硬変は癌になることがないといわれ、肝硬変であっても障害認定されないことがある。アルコール性肝硬変について、継続して必要な治療を行っていること及び検査日より前に180日以上アルコールを摂取していないことについて、確認のできた者に限り認定を行うものとする。

 肝炎と肝硬変は相当因果関係「あり」とされる。

 肝硬変により全身の倦怠感や疲労感、吐き気、腹痛などの症状があらわれ、入退院を繰り返したり、長期的な安静が必要な場合は、障害等級2級と認定される可能性がある。

 肝硬変による症状により、日常生活や労働が制限される場合は、障害等級3級と認定される可能性がある。

 

○その他の疾患による障害

障害の程度

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

3級

身体の機能に労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

障害手当金

 その他の疾患は、「眼の障害」から「悪性新生物」等において取り扱われていない疾患を指すものである。

 腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症、人工肛門・新膀胱、遷延性植物状態、いわゆる難病及び臓器移植などが分類される。

 明確な基準があるものは、人工肛門、人工膀胱である。

 

○悪性新生物(癌) による障害

 神経節腫(神経節細胞腫)  乏突起神経膠腫(乏突起膠腫)性索間質性腫瘍  

骨肉腫  神経節芽腫  血球貪食性リンパ組織球症  Tリンパ芽球性リンパ腫  若年性骨髄単球性白血病  急性前骨髄球性白血病  悪性腫瘍

障害の程度

1級

2級

3級

障害手当金

障害の状態

 

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

 

 

・著しい衰弱又は障害のため、一般状態区分表のオに該当するもの

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

・衰弱又は障害のため、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

 

 

・著しい全身倦怠のため、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

一般状態区分表

区分

一 般 状 態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 
 (たとえば軽い家事、事務など)

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 細胞が何らかの原因で変異して増殖を続け、周囲の正常な組織を破壊する腫瘍で、癌や肉腫などがこれに入る。

 癌による障害年金の認定では、抗ガン剤などの治療の副作用などによって生じる障害も障害年金の対象になる。

 癌(悪性新生物)による障害年金の認定基準は次の3つに区分される。
ア 悪性新生物そのものによる局所の障害    
  骨肉種による大腿骨頭の障害、肝癌、肺癌  など  (原発巣、転移巣を含む)
イ 悪性新生物による全身の衰弱または機能の障害 
 臓器の癌の転移巣が拡大した段階、悪性繊維性組織球種、脊髄腫瘍  など
   (原発巣、転移巣を含む)
ウ 悪性新生物に対する治療の結果としての全身衰弱または機能障害    
 抗癌剤、放射線照射などによるもの

 癌の認定は、末期がんでなければ認定されないことが多い。

 障害年金の審査では、癌によって日常生活がどれだけ制限されているかが認定のポイントとなる。
 ・入院を繰り返している
 ・自宅での安静を指示されている  
 ・余命宣告されている
 ・癌が複数の器官に転移している
というときも、障害年金の2級以上が認定されることがある。

1級

入院中でベッドから起き上がることもままならない状態

2級

抗がん剤の服用等の治療による全身衰弱や身体機能障害で日常生活が自力ではできない、外出も自力では困難な状態

3級

通常勤務が不可能な方が想定できるが、ガン闘病中の方で会社を退職せざるを得なかった方でも、治療の効果等から自覚症状や検査数値等が病状の深刻さと比例しないことが多く、単に就労していないかのような状態と判断されることが多い。

 病状は重篤でなくても抗がん剤治療の最中で、発熱、疲労感、易感染症がみられる場合は3級に認定されるケースが多い。

  障害認定基準では、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものとしている。

 原発性の癌(元々の癌)場合は、他の部位の癌との相当因果関係は認められない。
 転移性の癌の場合は、他の部位の癌との相当因果関係が認められる可能性が大きい。

 診断書は「血液・造血器 その他の障害用」の診断書を使用するのが一般的。

 悪性新生物そのものによるか、または悪性新生物に対する治療の結果として障害を有した場合は、各々の障害ごとの認定要領によるとされている。その他の障害用ではなく、「肢体の障害用」「腎疾患・肝疾患・糖尿病用の障害用」など各々の障害の部位毎の診断書を提出すること。
 ・骨肉腫は肢体の障害として
 ・肺癌は呼吸器疾患の障害として
 ・肝癌は肝疾患の障害として

 

○食道静脈瘤
 食道静脈瘤は、胃・食道静脈瘤内視鏡所見記載基準および治療の頻度、治療効果を参考とし、肝機能障害と併せて、総合的に認定する。

 

○食道がん
 食道がんとは、喉仏の下から胃の上部までの食道に発生する癌の総称である。
 普段、食べたものや飲んだものがここを通過することから比較的その働きがイメージしやすい臓器ではありますが、食道の周りにはリンパ管や血管が張り巡っており、気管、頚椎、頚動静脈、胸椎、肺、大動脈など重要な臓器が多く隣接しているため、大変転移しやすい癌でもある。

 がんによる痛みなどにより、一日のほとんどを寝たきりですごしたり、身の周りのことができずに介助を必要としたりする状態であれば、障害年金の対象となる可能性がある。

 抗がん剤などの治療により、全身が著しく衰弱してしまっている場合、障害年金の対象となる可能性がある。

 

○悪性黒色腫(メラノーマ)
 悪性黒色腫とは、皮膚や皮下組織、口の中や眼窩内に発生する悪性腫瘍である。皮膚や組織に対しての慢性的な紫外線曝露や繰り返し何らかの刺激を受けたことによって発生の可能性が高まるのではないかと考えられている。

 悪性黒色腫が発生した部分のみにとどまらず、離れた組織に転移してしまっている場合、予後不良と診断されてしまった場合は障害年金の受給対象となる可能性がある。

 抗がん剤などの治療によって全身の衰弱が著しく、日常生活に他人の介助が必要である場合は障害年金の受給対象となる可能性がある。

 

○子宮頸がん
 子宮頸がんとは、子宮の入り口にあたる子宮頸部という部分にがんができる病気をいう。

 がんによる痛みなどにより、一日のほとんどを寝たきりですごしたり、身の周りのことができずに介助を必要としたりする状態であれば、障害年金の対象となる可能性がある。

 抗がん剤などの治療により、全身が著しく衰弱してしまっている場合、障害年金の対象となる可能性がある。

 

○乳がん
 乳がんとは、乳線などの乳房の組織の細胞ががん化し、増殖する病気である。

 がんによる痛みなどにより、一日のほとんどを寝たきりですごしたり、身の周りのことができずに介助を必要としたりする状態であれば、障害年金の対象となる可能性がある。

 がんが乳房だけでなく、別の場所に転移している場合は受給対象となる可能性が高い。

 抗がん剤などの治療により、全身が著しく衰弱してしまっている場合、障害年金の対象となる可能性がある。

 

○直腸がん
 直腸がんとは、大腸のうちの直腸(直腸S状結腸部、上部直腸、下部直腸)の組織内にがんができる病気である。

 直腸は便をためる機能があり、骨盤の内側にあるため、手術の際に膀胱や性器に影響があったり、肛門機能を担っている肛門括約筋を温存することができない場合があります。進行するにつれてリンパ節や肝臓、肺などの臓器に転移します。

 直腸がんやその治療によって日常生活に支障がある場合や、永久ストーマを造設した場合に、障害年金の対象となる可能性がある。

 がんの悪化により全身状態が悪く、身のまわりのことが他人の援助なしにはできない、また、長期的な安静を必要とする場合は、障害年金が受給できる可能性がある。

 がんやその治療によって日常生活や労働に制限がある場合は、障害年金の対象となる可能性がある。

 治療の際、やむなく肛門機能を廃し、人工肛門に置き換える場合がある。その場合、永久造設のストーマであれば3級の障害年金を受給することができる。また、新膀胱も造設した場合は、2級以上となる可能性がある。

 

○膀胱がん
 膀胱がんとは、膀胱にできる腫瘍のことで、この膀胱にできる腫瘍のほとんどは悪性であり、女性に比べて男性の発症が多い傾向にある。

 傷病によって、新膀胱を造設した場合、障害等級3級に認定される。

 がんの悪化により全身状態が悪く、身のまわりのことが他人の援助なしにはできない、また、長期的な安静を必要とする場合は、障害年金が受給できる可能性がある。

 

○血液・造血器の障害

 顔面蒼白、易疲労感、動悸、息切れ、頭痛、めまい、知覚異常、出血傾向、骨痛、関節痛等の自覚症状、発熱、黄疸、心雑音、舌の異常、感染、出血斑、リンパ節腫大、血栓等の他覚所見

障害の程度

1級

長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

3級

身体の機能に労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

障害手当金

 血液一般検査での検査項目および異常値

区分

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

抹消血液

ヘモグロビン濃度

g/dl

9~10

7~9

7未満

赤血球数

万/μl

300~350

200~300

200未満

白血球数

個/μl

2000~4000

1000~2000

1000未満

顆粒球数

個/μl

1000~2000

500~1000

500未満

リンパ球数

個/μl

600~1000

300~600

未満

血小板数

万/μl

5~10

2~5

2未満

骨髄

有核細胞

万/μl

5~10

2~5

2未満

巨核球数

/μl

30~50

15~30

15未満

リンパ球

20~40

40~60

60以上

出血時間(Duke法)

6~8

8~10

10以上

APTT(基準値)

基準値の1.5倍~2倍

基準値の2倍~3倍

基準値の3倍以上

一般状態区分表

区分

一 般 状 態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの  

(たとえば軽い家事、事務など)

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 

○難治性貧血群

 再生不良性貧血、溶血性貧血 など

障害の程度

1級

・再生不良性貧血・・・下のA表Ⅰ欄の臨床所見で1つ以上の所見があり、かつB表Ⅰ欄の1~4までのうち、3つ以上に該当するもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

・溶血性貧血・・・下のA表Ⅰ欄の臨床所見で1つ以上の所見があり、B表Ⅰ欄の1に該当するもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

・再生不良性貧血・・・下のA表Ⅱ欄の臨床所見で1つ以上の所見があり、かつB表Ⅱ欄の1~4までのうち、3つ以上に該当するもので、かつ一般状態区分表のエまたはウに該当するもの

・溶血性貧血・・・下のA表Ⅱ欄の臨床所見で1つ以上の所見があり、かつB表Ⅱ欄の1に該当するもので、かつ、一般状態区分表のエまたはウに該当するもの

3級

・再生不良性貧血・・・下のA表Ⅲ欄の臨床所見で1つ以上の所見があり、かつB表Ⅲ欄の1~4までのうち、3つ以上に該当するもので、かつ一般状態区分表のウまたはイに該当するもの

・溶血性貧血・・・下のA表Ⅲ覧の臨床所見で1つ以上の所見があり、かつB表Ⅲ欄の1に該当するもので、かつ、一般状態区分表のウまたはイに該当するもの

障害手当金

 -

 A表

区分

臨 床 所 見

1 治療により貧血改善はやや認められるが、なお高度の貧血、出血傾向、易感染性を示すもの
2 輸血をひんぱんに必要とするもの

1 治療により貧血改善はやや認められるが、なお中度の貧血、出血傾向、易感染性を示すもの
2 輸血を時々必要とするもの

1 治療により貧血改善は少し認められるが、なお軽度の貧血、出血傾向、易感染性を示すもの
2 輸血を必要に応じて行うもの

B表

区分

検 査 所 見

1 末梢血液中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの   (1) ヘモグロビン濃度が7.0g/dl未満のもの  
(2) 赤血球数が200万/μl未満のもの
2 末梢血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1) 白血球数が1000/μl未満のもの
(2) 顆粒球数が500/μl未満のもの
3 末梢血液中の血小板数が2万/μl未満のもの
4 骨髄像で、次のいずれかに該当するもの   
(1) 有核細胞が2万/μl未満のもの  
(2) 巨核球数が15/μl未満のもの   
(3) リンパ球が60%以上のもの   
(4) 赤芽球が5%未満のもの

1 末梢血液中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの   (1) ヘモグロビン濃度が7.0g/dl以上9.0g/dl未満のもの   (2) 赤血球数が200万/μl以上300万/μl未満のもの
2 末梢血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの   (1) 白血球数が1000/μl以上2000/μl未満のもの  
(2) 顆粒球数が500/μl以上1000/μl未満のもの
3 末梢血液中の血小板数が2万/μl以上5万/μl未満のもの 4 骨髄像で、次のいずれかに該当するもの
(1) 有核細胞が2万/μl以上5万/μl未満のもの  
(2) 巨核球数が15/μl以上30/μl未満のもの  
(3) リンパ球が40%以上60%未満のもの  
(4) 赤芽球が5%以上10%未満のもの

1 末梢血液中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの   (1) ヘモグロビン濃度が9.0g/dl以上10.0g/dl未満のもの   (2) 赤血球数が300万/μl以上350万/μl未満のもの
2 末梢血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの   (1) 白血球数が2000/μl以上4000/μl未満のもの  
(2) 顆粒球数が1000/μl以上2000/μl未満のもの
3 末梢血液中の血小板数が5万/μl以上10万/μl未満のもの
4 骨髄像で、次のいずれかに該当するもの  
(1) 有核細胞が5万/μl以上10万/μl未満のもの
(2) 巨核球数が30/μl以上50/μl未満のもの  
(3) リンパ球が20%以上40%未満のもの   
(4) 赤芽球が10%以上15%未満のもの

 発熱など他の病気で受診した際に血液異常が発覚し、検査を経て再生不良性貧血と診断された場合、基本的には最初の発熱で受診した日が初診日となる。

 

○出血傾向群

 血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症  など

障害の程度

1級

・A表Ⅰ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅰ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

・A表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のエまたはウに該当するもの

3級

・A表Ⅲ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅲ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のウまたはイに該当するもの

障害手当金

 -

  A表

区分

臨 床 所 見

1 高度の出血傾向又は関節症状のあるもの
2 凝固因子製剤をひんぱんに輸注しているもの

1 中等度の出血傾向又は関節症状のあるもの
2 凝固因子製剤を時々輸注しているもの

1 中等度の出血傾向又は関節症状のあるもの
2 凝固因子製剤を時々輸注しているもの

  B表

区分

検 査 所 見

1 出血時間(デューク法)が10分以上のもの
2 APTTが基準値の3倍上のもの
3 血小板数が2万/μl未満のもの

1 出血時間(デューク法)が5分以上10分未満のもの
2 APTTが基準値の2倍以上3倍未満のもの
3 血小板数が2万/μl以上5万/未満のもの

1 出血時間(デューク法)が5分以上10分未満のもの
2 APTTが基準値の2倍以上3倍未満のもの
3 血小板数が2万/μl以上5万/未満のもの

一般状態区分表

区分

一 般 状 態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 
  (たとえば軽い家事、事務など)

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 抗凝固薬使用による出血傾向については、重度のものを除き認定の対象とはしない。

 

 ○造血器腫瘍群
 白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫  など

障害の程度

1級

・A表Ⅰ欄の臨床所見で1つ以上の所見があり、かつB表Ⅰ欄のうち、1つ以上の所見があるもので、かつ一般状態区分表のオに該当するもの

2級

・A表Ⅱ欄の臨床所見で1つ以上の所見があり、かつB表Ⅱ欄のうち、1つ以上の所見があるもので、かつ一般状態区分表のエまたはウに該当するもの

3級

・A表Ⅲ欄の臨床所見があり、かつB表Ⅲ欄の所見があるもので、かつ一般状態区分表のウまたはイに該当するもの

障害手当金

 A表

区分

臨 床 所 見

1 発熱、骨・関節痛、るい痩、貧血、出血傾向、リンパ節腫脹、易感染性、肝脾腫などの著しいもの
2 輸血をひんぱんに必要とするもの
3 急性転化の症状を示すもの

1 発熱、骨・関節痛、るい痩、貧血、出血傾向、リンパ節腫脹、易感染性、肝脾腫などのあるもの
2 輸血を時々必要とするもの
3 容易に治療に反応せず、憎悪をきたしやすいもの

1 治療に反応するが、肝脾腫を示しやすいもの

  B表

区分

検 査 所 見

1 病的細胞が出現しているもの
2 末梢血液中の赤血球数が200万/μl未満のもの
3 末梢血液中の血小板数が2万/μl未満のもの
4 末梢血液中の正常顆粒球数が500/μl未満のもの
5 末梢血液中の正常リンパ球数が300/μl未満のもの
6 C反応性タンパク(CRP)の陽性のもの
7 乳酸脱水酵素(LDH)の上昇を示すもの

1 白血球数が正常化し難いもの
2 末梢血液中の赤血球数が200万/μl以上300万/μl未満のもの
3 末梢血液中の血小板数が2万/μl以上5万/μl未満のもの
4 末梢血液中の正常顆粒球数が500/μl以上1000/μl未満のもの
5 末梢血液中の正常リンパ球数が300/μl以上600/μl未満のもの

1 白血球が増加しているもの

一般状態区分表

区分

一 般 状 態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの  
 (たとえば軽い家事、事務など)

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 

○HIV感染症の障害認定基準

障害の程度

1級

・回復困難なヒト免疫不全ウイルス感染症及びその合併症の結果、生活が室内に制限されるか日常生活に全面的な介助を要するもの

・一般状態区分表のオに該当するもの

2級

・エイズの指標疾患や免疫不全に起因する疾患又は症状が発生するか、その既往が存在する結果、治療又は再発防止療法が必要で、日常生活が著しく制限されるもの

・一般状態区分表のウまたはエに該当するもの

3級

・エイズ指標疾患の有無にかかわらず、口腔カンジダ症等の免疫機能低下に関連した症状が持続するか繰り返す結果、治療又は再発防止療法が必要で、労働が制限されるもの

・一般状態区分表のイまたはウに該当するもの

障害手当金

 -

  一般状態区分表

区分

一 般 状 態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの  
 (たとえば軽い家事、事務など)

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 

○肛門、直腸、泌尿器の傷病

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

2級

・人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設または尿路変更術を施したもの
・人工肛門を増設し、かつ、完全排尿障害状態にあるもの  (完全排尿障害状態とはカテーテル留置または自己導尿の常時施行を必要とする状態をいう。)

3級

・人工肛門を造設したもの
・新膀胱を造設したもの、若しくは尿路変更術を施したもの

障害手当金

 大腸や肛門の病気を治療するために、大腸から肛門まで全部、あるいは直腸から肛門までを切除しなければならない場合があります。その際、腹壁に孔(あな)を開け、切除する場所の手前の腸管を孔から引きだし、そこから便を体外へ排泄できるようにしたのが人工肛門である。

 人工肛門は人工的に造られた肛門のことをいう。

人工膀胱は、負傷や膀胱癌の治療のために膀胱を摘出した際に膀胱に代わって作られる代用膀胱のことである。

障害認定日の特例的取扱い

傷病が治った状態

障害認定日

障害等級の目安

・人工肛門を造設

・尿路変更術施したもの

・新膀胱の造設

造設や手術を受けた日から起算して6月を経過した日

いずれか1つで3級

 2級
・人工肛門を造設し、かつ新膀胱または尿路変更術を施したもの
・人工肛門を増設し、かつ完全排尿障害状態にあるもの(完全排尿障害状態とはカテーテル留置または自己導尿の常時施行を必要とする状態をいう)

 人工肛門、人工膀胱、尿路変更、それぞれ単独のものは3級とする。

 障害の程度を認定する時期は、次により取り扱われる。
 人工肛門を造設し又は尿路変更術を施した場合は、それらを行った日から起算して6月を経過した日とする。
 人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設した場合は、人工肛門を造設した日から起算して6月を経過した日又は新膀胱を造設した日のいずれか遅い日とする。
 人工肛門を造設し、かつ、尿路変更術を施した場合は、それらを行った日のいずれか遅い日から起算して6月を経過した日とする。
 人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害状態にある場合は、人工肛門を造設した日又は完全排尿障害状態に至った日のいずれか遅い日から起算して6月を経過した日とする。
 (これらは、1年6ヵ月を経過した後に請求する場合は、初診日から1年6ヵ月が経ったその日が障害認定日となる。)

 全身状態、術後の経過及び予後、原疾患の性質、進行状況等によっては、総合的に判断して2級以上に認定されることがある。

 人工臓器の造設などを行なった場合は、「その他障害用の診断書」(様式第120号の7)を使用する。

 

○臓器移植

 腎臓移植を受けたものに係る障害の認定は、「その他障害」の認定要領により認定する。

 障害等級に該当している人(人工透析施行の方の場合 2級)が、臓器移植を受けた場合、少なくとも1年間は従前の等級(2級)での障害年金が受給できる。

 障害厚生年金で障害等級が3級の場合は、臓器が生着し安定的に機能するまでの間、2年間の経過観察を行うこととされている。再認定時に2年の予後観察期間を経過している場合は、3級非該当とする程度の状態であるか否かを判断する。(障害年金が支給停止になる場合がある。)

 障害基礎年金について、3級該当で支給停止されている者については、従前通り停止とする。

 

○遷延性植物状態
 遷延性植物状態とは、外傷や脳内での出血などによる脳の損傷により、重度の昏睡状態に陥ってしまった状態のことで、いわゆる植物状態とよばれるものである。  
 日本脳神経外科学会による定義(1976年)によると、  
 1. 自力移動が不可能である  
 2. 自力摂食が不可能である
 3. 糞・尿失禁がある
 4. 声を出しても意味のある発語が全く不可能である  
 5. 簡単な命令には辛うじて応じることも出来るが、ほとんど意思疎通は不可能である  
 6. 眼球は動いていても認識することは出来ない
以上6項目が、治療にもかかわらず3ヵ月以上続いた場合を「遷延性意識障害」という。

 遷延性植物状態に陥った場合、日常生活の用を弁ずることができない状態であると認められるため、1級と認定される。

 障害の程度を認定する時期は、その障害の状態に至った日から起算して3月を経過した日以後に、医学的観点から、機能回復がほとんど望めないと認められるときとする。

 (1年6ヵ月を経過した後に請求する場合は、初診日から1年6ヵ月が経ったその日が障害認定日となる。)